この記事について
本項目は翻訳QAにおけるテスト自動化について弊社で取り組んだ事例を紹介します。
海外配信を行っているアプリの品質管理担当者の参考になれば幸いです。
内容としてはGREE Tech Conference 2021で発表したものと同様ですので下記リンクもご参照ください。
動画リンク(youtubeに飛びます)
翻訳QAとは
弊社では誤表記や誤翻訳などにより、アプリをご利用いただいている海外のお客様に混乱をきたさないことを目的として翻訳内容が正しいことを確認する翻訳QAを実施しています。
対象としているアプリは海外で配信されている全タイトルで主に3点の確認観点で実施しています。
- 該当の言語で表示されること
- 内容の意味合いが間違っていないこと
- 元の言語の表記が残っていないこと
上記は最低限の観点でありさらに深く確認する場合は「ネイティブから見て違和感のない表現になっていること」などのいわゆるローカライズ観点が加わります。
自動化に取り組んでいる背景
翻訳QAで自動化に取り組んだ背景として、現行の翻訳QAフローの抱える課題が挙げられます。
現在の翻訳QAでは作業者の目視により確認行っており、作業者自身の経験や能力に依存する体制となっています。
現状はQA経験の長いメンバーをアサインしているため、品質リスクが高い状況ではないですが、先々の安定した運用を想定するといずれ直面する課題でした。
この課題に加えて、目視での作業であるがゆえに作業者自身の工数を過大に必要としてしまう点も課題として存在しています。
本来であれば別の業務に更なる工数をかけたいのですが、現状だと一定の工数をテスト実施業務にあてる必要があるため、テスト工数の削減は急務でした。
そこで、翻訳QA業務にテスト自動化を導入することにより、品質面の安定化および必要な工数の最小化を画策しました。
翻訳QAでのテスト自動化
自動化の着眼点
今回はフォーマットに着目して自動化を推進しました。
弊社における翻訳業務フローは下記のようになっており、完全に一から文章を作成するケースもありますが、お知らせの文章をはじめとして、担当者は文章を作成する際に過去の同フォーマットの文章をベースとして作成することがあります。
現在の翻訳QAでは文章全てを目視で確認していますが、過去フォーマットから作成するということは変更を加えていない箇所があるということです。
そこで過去のフォーマットを用いて、検証対象の文章との差分を自動で抽出するシステムを構築しました。
自動化システムの実装
翻訳QAで実装した自動化システムには2つの要素があります。
1.フォーマットの識別
弊社では翻訳時に用いられるフォーマットが同じ画面においても複数存在しました。
そこでどのフォーマットと照合すべきかを決定するために、検証対象とする文章に該当するフォーマットを識別するシステムを構築しました。
2.変更箇所の抽出&比較
照合するフォーマットを識別した後にそのフォーマット内でどの部分を変更しているかを抽出します。
そして抽出された変更箇所を自動で突き合わせるシステムを構築しました。
このような工程を踏むことで変更された箇所のテストが自動化できると同時に、変更されていない箇所のテストが不要となりテストの効率化につながります。
これらの要素を用いて翻訳QAのテスト自動化システムを実装しました。
自動化の効果と今後の展望
自動化による効果
上記の自動化を実際の業務へ導入することで、変更のない箇所の確認工数が大幅に削減し、加えてデータベースとの照合が容易になったことで一部の翻訳QA業務の工数を50%削減することに成功できています。
また目視ではなくなったため、導入前の状態である「全ての文章を目視で確認」という方法より品質リスクが明らかに下がっており、実際に大きな障害も発生しておりません。
今後の展望
今後の展望として他の検証における自動化の導入が挙げられます。
今回の取り組みはお知らせ関連など、一部の業務のみへの適用でとどまっているため、他の箇所の翻訳QAでも適用できないかは検討していく予定です。
加えて別の観点からの自動化の検討も展望として挙げられます。
今回は同一フォーマットを利用しているという観点からのテスト自動化を推進しましたが、実施時の作業方法に着目した自動化なども検討していきたいと考えております。