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ポストインターネット

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モダンインターネット

現状のインターネットは暗号化された閉域網以上のセキュリティ強度を担保できない。つまり、第八大陸(サイバースペース、デジタル空間)もユートピアではなかった。Web3.01のコンテキストにおいてネットワークの中立性を担保するためには、量子インターネットのような独自のネットワークを構築する必要がある。量子トランスポーテーションを使った量子インターネットが実用化されれば、①量子複製不可能定理によって、盗聴されると量子の状態が変化してしまうため、盗聴されたことがわかり、②「量子もつれ」と呼ばれる状態を活用することで、二つの離れた機器の間での無経路通信が可能なため、経路間でのハッキングが不可能、という最強のインターネットになることは間違いないが、実用化のめどはたっていないので稿を改めるとして、ここではモダンインターネット、つまり現状のインターネットを対象とする。

インターネットとは、IP(Internet Protocol)、つまりTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を用いたネットワーク間のネットワークである。つまり、ポストインターネットとはポストTCP/IPということになる。この意味では、インターネットの通信プロトコルなどの標準化を手掛けるIETF(Internet Engineering Task Force)がRFC 9000として勧告した通信プロトコルQUIC(Quick UDP Internet Connections)2がポストインターネットに該当する。しかし、すでに置き換わりが進んでいるため、ポストインターネットとはいいがたい。

ロケーション指向インターネット v.s. コンテンツ指向インターネット

2007年、Benjamin Bayartはネットワークの中立性に関する問題を提起した3。ネットワークの中立性が担保されなければ、自由にネットワークを利用できなくなる。

モダンインターネットは集中型ネットワークであり、ロケーションを使用してコンテンツのアドレスを指定する。コンテンツにアクセスするために、特定されたロケーションでコンテンツを検索する。このアドレス指定方法は、コンテンツ自体の改ざん、移動、削除などネットワークの中立性が侵害されることを意味する。

例えば、モダンインターネットでコンテンツにアクセスする場合は以下のようなURLを用いてアドレスを指定する。
https://foo.com/bar/image.png

このURLの意味するところは、「foo.comというホストサーバにあるbarというディレクトリの中の image.pngというファイル」ということであり、つまりは取得したいコンテンツが存在する場所(サーバの名前、ディレクトリの名前、ファイル名)を指定している。このようにコンテンツが存在する「場所」を指定してコンテンツにアクセスする方法を「ロケーション指向」と呼ぶ。

一方、コンテンツ自体に識別子を付与してアクセスする方法を「コンテンツ指向」と呼ぶ。コンテンツ指向のひとつであるIPFS (InterPlanetary File System)4では SHAなどの暗号ハッシュ関数を利用してコンテンツのハッシュ値を求め、それをそのコンテンツの識別子として利用する。周知のようにハッシュ関数により得られるハッシュ値は、同じ値であれば必ず同じハッシュ値が得られる。そのためこのハッシュ値をキーにアクセスするIPFSには、ロケーション指向であるHTTPプロトコルでは得られない以下のようなメリットがある。

・耐障害性
コンテンツのハッシュ値を指定するだけで、そのコンテンツが存在する場所を指定しない。そのため、たとえオリジナルのサーバが何らかの原因でダウンしていても、同じハッシュ値(=コンテンツ)を持っているどこか他の場所から同じコンテンツを取得できる。

・負荷分散
コンテンツの場所を指定しないため、同じコンテンツを複数のサーバから取得できる場合、より近いサーバから取得でき、ひとつのサーバに負荷が集中することを防ぐ。

・耐検閲性
ロケーション指向ネットワークでコンテンツのある場所(サーバ)へのアクセスを遮断するだけで検閲が可能である。一方、コンテンツ指向ネットワークでは同じコンテンツを無数のサーバで保持できるので、どこかのサーバのアクセスを遮断しても、別のサーバから同一のコンテンツが取得可能になり、検閲を難しくする。

・耐改ざん性
コンテンツはアクセスしたデータのIDであるハッシュ値と、そのコンテンツから得られるハッシュ値を比較することで容易にコンテンツの正当性を検証できるため、コンテンツを改ざんできない。

コンテンツ指向(ipfs)でコンテンツにアクセスする場合は以下のようになる。
 ipfs://#hashcode/bar/image.png

IPFSを用いることでコンテンツは中央に置かれなくなり(中央という概念がない)、複数サーバにコピーされ配置される非中央集権型ネットワークになり、このネットワーク間ではネットワークの独立性が担保され、たとえば、タイのWikipediaの一部、トルコの10万以上のブロックされたWebサイト、中国のCOVID-19関連の情報など、アクセスできないように制限されることはない。

IPFSは、Chrome5やFirefox6では拡張機能をインストーレーションすることですでに利用できる状態になっている。さらに、Braveというブラウザでは「ローカルIPFSノードを使用する」を選択することで、IPFSノードがインストーレーションされ、自分自身のマシンをノードとすることができる。なお、また、同じコンテンツを複数サーバに分散する実装技術として、ブロックチェーンに代表される分散型台帳技術が用いられる。

ただし、このネットワークに接続するアクセスポイントに関しては、ISP(インターネットサービスプロバイダ)が介在するためネットワークの中立性が保証されるわけではない。そのため、このアクセスポイントに、 The Things Network7のようなオープンなネットワークサービスを利用することで、ネットワークの独立性が担保され、近未来のポストインターネットとして期待できる。

  1. Web3.0という用語は、 Ethereumの共同設立者であるGavin James Woodが、「ブロックチェーンに基づく分散型オンライン・エコシステム」を指して作った造語。ここでの分散(decentralization)は非中央集権、脱中央集権を意味している。
    https://www.wired.com/story/web3-gavin-wood-interview/

  2. RFC 9000
    https://www.rfc-editor.org/info/rfc9000

  3. ネットワークの中立性
    https://www.fdn.fr/actions/confs/internet-libre-ou-minitel-2-0/

  4. IPFS
    https://ipfs.io/

  5. Chrome Extension: IPFS Companion
    https://chrome.google.com/webstore/detail/ipfs-companion/nibjojkomfdiaoajekhjakgkdhaomnch

  6. Firefox: IPFS Companion
    https://addons.mozilla.org/en-US/firefox/addon/ipfs-companion/

  7. The Things Network
    グローバルなLoRaWAN(LoRaを採用した低電力・広域ネットワークプロトコル)を活用したオープンなクラウドIoTネットワークサービス。ただし、LoRaWAN自体がIoTの通信を対象としているため、通信速度は100kbpsと低速である。
    https://www.thethingsnetwork.org/

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