GYAOの玉利です。
副業で毎週、公共施設の運営立て直しPJにコンサルティング参画しています。弊社で最も優秀なエンジニアの一人、ts氏を巻き込んで全力でオープンイノベーションに取り組んでいます。
スタートから一ヶ月がたち、前の事業者から新しい事業者への移行がうまく行きました。
始める前はもう少し統制が取れていると思っていたので、新所長が一人で頑張って3ヶ月+くらいかなと見積もりしていて、私が入って2ヶ月くらいと計算していました。
ところがスタートしてみたら属人化しておりまったく統制が取れておらず文書化されていないものが多すぎました。6ヶ月ほど前事業者が引き継ぎ期間を取ると言ってくれたのですが、一体どうなるのか思いました。
この難局をどうしようかと思っていたら、ちょうど会社で横の椅子に座ってた凄腕スクラムマスターのts氏が目に入りました。彼を巻き込んで投入するという大技を繰り出し前事業者から一ヶ月で引き継ぎ成功となりました。
業務移管+改善が6倍の速さで進んだ計算です。
この職場の特徴
- 夏休み子供イベント・自然観察イベントや情報誌発行などの、定形ではない準備作業が多い
- 自然ボランティア調査などの事務局機能を持つ
- 害虫対策などの相談も受ける
定形の事務作業が少ないので、ソフトウェア開発などに近い「毎回違うことを行う」職場です。それにしても取りこぼしがいつ発生するか危なっかしい状況の運営状態でした。新所長の日記を時系列に並べていくとかなり興味深いと思います。
Week 0 立て直し開始前
新所長が業務引き継ぎ前に引きつっています。
Week1 スクラム導入前
Problem
- 仕事がほとんど見えていない状態
- 旧所長から新所長への仕事の引き継ぎは、ドキュメント不足で機能しない状況
- 閉館時間をすぎてから思い出して仕事を始めるような残業発生
ITチームはインフラの設定開始(JIRA/Confluence/Slack)
Week2 初回スプリント
Problem
- スプリント計画を行うが、メンバーは半信半疑
- 週の途中で計画入れ忘れの業務がどかっと増える。残業発生
- チケット化ができないメンバーが多数
Good
- Slackを導入したことで、アルバイトさんなどがシフト不在の間の状況がわかると好評
- 業務マニュアル系ドキュメントが次第にできてくる
差し入れのケーキ、前日に買いに行きました。ドライな仕事の仕方なので、ウェットなコミュニケーションで場を和らげるのもコンサルの仕事。
バーンダウンチャートは、全然さがりませんでした。上がってもいないということはチケット化がうまく出来ていなかったからです。
Week3 第二回スプリント
Problem
- チケット化が進んできたが、間違えて登録することが発生したため修正の介入を行う
- 計画入れ忘れ業務が途中で増える
Good
- 残業が減って定時に閉館できる日ができた
- Slackによる情報の風通しの良さが生まれた
- モバイルワークが可能になった
間違い登録プロジェクトの変更などを行ったため、バーンダウンチャートは乱れています。それでも少し下がるようになりました。
Week4 第三回スプリント
メンバーの間に、仕事の可視化が出来たことによる安心感が生まれました。スプリント計画でのチケット化が不十分だったので途中でバーンダウンチャートが増えてしまいましたが、後半は順調に下がるようになりました。
Problem
- チケット化の漏れ・完了レビューが不安
- 相手待ちのチケットが多い
Good
- 工数見積で、不足工数が可視化できたのでアルバイト出勤を事前お願いできた
- ほとんど自力で間違いなくチケット化を行うことができるようになってきた
- 週数回しか来ないアルバイトにも適切な仕事配分ができるようになった
- 計画入れ忘れ業務が増えたが、右肩下がりのバーンダウンチャートとなってきた
- ほぼ定時に近い時間で閉館ができるようになった
スプリント終了時には、我々コンサルチーム側も「もう自分たちが入らなくても立派にチームが機能するよね」という話をしていたのですが、新所長も同じ感想を持っていました。
Week5-6 第四回スプリント
ちょうど4週間が経過、3スプリント回しおわって4スプリント目に入りました。仕事で「不意を打たれる」ことはほとんどなくなり、メンバー全員が集中して効率よく作業をまわしています。
バーンダウンチャートも計画ラインに沿って順調に下がり始めました。
いつでもPJの健康度合いをひと目でわかるように、JIRAにダッシュボードをts氏が用意しました。これはメンバーに好評でした。
まとめ
今回アジャイル・スクラム導入で公共施設の運営立て直しがうまくいった理由を、少し見つめ直してみました。
- 新所長は外資系の通信技術開発の会社でITマネージャーをしていたが、開発プロセスに近いマネジメント手法は未経験。かえって過去の成功体験にとらわれず新手法を受け入れられた
- 彼自身が学習欲の高い人で、自分で独自のアレンジをせずにプロの作った仕組みに素直に乗れるタイプの人だったため、スクラム導入がうまく行き高い効果が出た
- 前任者のマネジメントが機能不全を起こしていたため、メンバーもやり方を完全に切り替えることに抵抗感がなく思い切ったことができた
- プロダクトオーナーになった指定管理者の社長が驚くような効果が開始直後に出たため、さらに良くしていこうという循環が生まれた
- 主要メンバーの「言語化能力」が比較的高く、チケットの終了条件をしっかり設定できた
私自身、ものすごくしんどい作業で毎回帰るたびに天井が回っていたのですが、プロのエンジニアリングマネージャーとして一回り成長したという自信がついた気がします。社内ではいくら上手くやっても、評価の際に納得がいかない理由でマイナス評価がつくのを諦めて受け入れていましたが、これも甘えの一種でした。外部ではプラスもマイナスも自分のやり方・交渉力次第です。客先の幹部MTGの前に2日くらい悩みまくりました。
今回のPJは「引き続き続行+次の現場改善へ継続」という形になったので、今回は一定の評価をいただけたと思っています。ただし効果がでなければすぐに契約打ち切りなので、しんどい仕事は今後も続きそうです。今後も外で得た経験を本業に持ち帰りたいと思っています。
今後は、インフラ部分の改善を行って「更にメンバーの成果が出る仕組み」を目指そうと思います。