2021年12月2日に開催された「OpenShift Commons Gathering Japan 2021」に参加してきましたので、参加した一部のセッションのレポートを共有します。
はじめに
これまでの業務経歴では、オンプレ環境を扱うことが多く、仮想化したプロジェクトがあったとしても精々VirtualBoxなどのホストOS型やVMware vSphereなどのハイパーバイザー型を扱うこととなり、OpenShiftのような先進的なコンテナ型の仮想化技術とは程遠い業務を行ってきました。
そんな中、このたび参画するプロジェクトでOpenShiftを扱わせていただくことになりました。業務で扱った経験がないため、コンテナ概念のキャッチアップもふんわりした状態ではありますが、OpenShiftに関するイベントが開催されていたため、知識を蓄えるべくイベントに参加しました。
#イベント概要
イベントタイトル: OpenShift Commons Gathering Japan 2021
開催日時: 2021年12月2日(木)
開催形式: オンライン配信
参加費: 無料
主催: レッドハット株式会社
対象者: コンテナ技術(オーケストレーション基盤含む)などを検討するビジネス・ITリーダー、アーキテクト、IT運用管理者、アプリケーション開発者
OpenShift製品・サービスの販売・導入・運用に関わるパートナー
詳細は以下のリンクからご参照ください。
https://www.redhat.com/ja/explore/openshift/commons-gathering-ja
参加セッションの紹介~その1~
セッションタイトル
「コンテナ市場」完全に理解した
登壇者
・岡下 浩明(レッドハット株式会社)
・北山 晋吾(レッドハット株式会社)
セッション概要
登壇者のお二人が対談形式でコンテナ市場のトレンドとOpenShiftの世界観を交えながら以下の内容について紹介。
・既存アプリケーションに関するコンテナ化移行の歩みについて
・今後のユーザーに対する顧客価値の提供について
セッション内容&所感
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どのように集計したのかわからなかったが、グローバル企業の約85%は、クラウドネイティブ・アプリケーション戦略の鍵がKubernetesであると同意しているそう。これはインフラエンジニアだと当然かもしれないが、経営者やアプリケーションエンジニアを主軸に置いている人たちにはまだまだ認知度が低いのではないのだろうか。
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顧客側でもシステムをデプロイする際に、従来型のシステムマネジメントでなく、どこまでKubernetesに仕事を任せることができるかという着眼点を持てば、もっと楽ができるシステムマネジメントのスタイルが確立できようになる。インフラエンジニアサイドからその辺りの提案が出せるようになっていくことが重要。
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Kubernetesの活用傾向が高いグローバル企業として、金融業・小売業・通信業・医療が挙げられる。いずれも顧客サービスとなるため、素早い変化が求められるビジネス形態が該当する。
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開発者と運用者間の依頼は以外と時間を食う。こういった関係性を無くしていくことがポイントとなっている。人でなくシステムに対して依頼していく姿へとこれから変化していく。
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開発体制の役割分担として、「アプリケーション開発担当」と「インフラ運用担当」の大きく2つに分類するのが通例。しかし、ここではその中間に「アプリケーション運用担当者(リリースエンジニアリング)」という役割を追加し、3つに分類。これは比較的新しい考え方だと思う。この3つ目の役割は、アプリケーションやミドルウェアのテストやパッチ当て、デプロイ、リリースなどの運用管理だけを担当する。デプロイなどをOPS(運用部隊)側に割り当てず、DEV(開発部隊)側にこの3つ目の役割を持っていくことで、自己解決型のチームが完成するという。OpenShift自体もそのように設計されている。私見だが開発部隊にいた頃に運用部隊へ作業を依頼した際、嫌そうな顔をされたことを想起した。これからはそういうこともなくなり皆ハッピーになるのかな。
参加セッションの紹介~その2~
セッションタイトル
IBMのOpenShift活用戦略
登壇者
・佐藤 卓由(日本アイ・ビー・エム 株式会社)
セッション概要
テクノロジー・カンパニーとしてのIBMがOpenShiftをどのように戦略の要としているかを紹介。
OpenShiftを軸としたハイブリットクラウドを推進している。
セッション内容&所感
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恥ずかしながら、2019年にRed HatがIBMに買収されていたことを今さら知る。。ただ、IBMはRed Hatとの協力+独立性を維持した状態であることを強調されていたため、これまでのRed Hatの企業ブランドは維持されている様子。
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OpenShiftを活用した銀行アプリの導入事例の中で、アプリのリリース回数が高いほど、App Storeの評価が高まったという話があった。ここから実業家のマーク・ザッカーバーグの言葉「Done is better than perfect.」を想起。完璧を目指した渾身の一撃より、アジャイルな取り組みの方が皆を幸せにするということかな。
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OpenShiftはOSSであるためベンダーロックインの回避にもつながり、AWSやAzureなど多種多様なIaaS環境を活用できる部分が大きなメリット。
参加セッションの紹介~その3~
セッションタイトル
ここで困った! OpenShift~ハマって判るOpenShift運用のポイント
登壇者
・元田 剛史(株式会社野村総合研究所)
セッション概要
2017年からOpenShiftを運用し続けてきたNRIがOpenShift運用で押さえておくべきポイントを紹介
セッション内容&所感
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ポイント1「Etcdはバックアップしよう」
system-reservedという値を勘違いで極端に小さい値を設定したことで、openshiftが起動しなくなった事例を紹介。
再インストールが必要になる羽目になったようだが、Etcdのバックアップさえとっていればこれは回避できる。 -
ポイント2「証明書の有効期限管理に気を付けよう」
APIサーバのサーバ証明書が有効期限切れになったことで、全てのクライアントからアクセスできなくなった事例を紹介。
テスト環境と本番環境の構築月をずらしておけば、本番障害を未然に防げる。 -
ポイント3「監視して、異常値に気を払おう」
openshift4.6以降ではユーザアプリ部分をモニタリングするPrometheus(メトリクスベースのモニタリングシステム)がある。
発生した異常値の原因を突き止めていくことが重要。 -
ポイント4「バージョンアップ戦略を考えよう」
Kubernetesは定期的なバージョンアップが避けられない。直近3世代のバージョンがサポート対象となるため、オンプレミスでKubernetesのクラスタを構築して運用していく際には年に1回程度のバージョンアップが必要となる。openShiftのバージョンアップは、iOSのように数年前の古いバージョンから最新バージョンにダイレクトにアップすることができない。そのため、間接的にアップデートするバージョンを計画しておく必要がある。
参加セッションの紹介~その4~
セッションタイトル
OpenShift NEXT
登壇者
・須江 信洋(レッドハット株式会社)
・北山 晋吾(レッドハット株式会社)
・中山 健次郎(レッドハット株式会社)
セッション概要
最新バージョンであるOpenShift 4.9から注目される機能とサポートアップデートを一挙大公開。
今後OpenShiftがどのようなコンテナ市場を牽引していくのかをご紹介。
セッション内容&所感
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注目機能1「OpenShift Serverless」
オープンソースの Knative プロジェクトをベースとするサービス。 -
注目機能2「OpenShift Builds v2」
簡単な定義でビルドツールの切り替えが可能。ランタイムイメージの個別指定が可能。 -
注目機能3「Single Node OpenShift」
これまではOpenShiftのデプロイに最低3ノードが必要であったが、シングルノードにデプロイが可能となった。
まさに強化されている段階だとは思いますが、
ごめんなさい、これまでのOpenShiftのバージョンも追うことができていないので、注目機能はあんまりピンとこない。。
おわりに
ここ最近ではガバメントクラウドの採択が話題で、どのインフラサービスを扱うかで多くの企業の戦略も変わってきたりするのかなと感じていました。OpenShiftはどこのインフラにも依存しないクラウドサービスであり、ある意味で学習コスパの高いインフラスキルとなるのかなと感じました。
今回初めてこのようなイベントに参加しましたが、イベントの内容や構成がユーモアを交えてとてもよく練られており、レッドハット株式会社ってこんな素敵な企業だったんだなと無知な自分の認識を改め直しました。
OpenShiftを業務で扱ってきた経験がそこそこあると、また違った観点で聴講できたんだろうなーと思いつつも、四の五の言わずにホットな情報に積極的に触れていくことが重要だなとしみじみ思いました。