以下の本を読みましたので感想です。
この本はFindyさんのイベント参加の景品としていただいたものです。いつもありがとうございます。
よくある勘違い
スクラムはストーリーポイントの定義をしていない
アジャイルの見積もりとしてよく使われるものにストーリーポイント(以下SP)があります。
ただ、この本の隅から隅を読んでもどこにもSPについての説明はありません。実際にスクラムガイド2020にも登場しません。
ついでに言うとバックログのベロシティについても出てきません。
SPやベロシティは、アジャイル手法を補助するための独自の考え方として活用されていますが、これらをスクラムそのものと混同しないことが大切です。
ベロシティは数字よりもケイデンスと正確さが重要
ベロシティとは、簡単に言うと「1スプリント内での作業量や作業速度」を表す指標です。一般的に、SPや課題数を基に数値化されます。
しかし、この数値自体は工数見積もりと同じく概算に過ぎず、操作やハックが可能です。例えば、作業の過大見積もりや、簡単なタスクを多く割り当てることで、短期間でベロシティを「向上させたように見せる」こともできます。
そのため、重要なのは ベロシティを「向上」させることではなく、安定的かつ正確に把握し続けること です。特に、以下のポイントが鍵になります:
- 「ケイデンス(Cadence)」として捉える:毎スプリントの作業ペースや精度が一定であること
- 安定性の維持:上下動を極力抑え、中長期的な一貫性を保つ
英語圏では、ベロシティの概念を「ケイデンス」と表現することがあります。これはロードバイクで1分間のクランク回転数を指す言葉に由来しています。また、ランニングでは1分間の走行距離、車なら燃費、ゲームではFPSに例えることができます。
どの指標も「短期的な数値の向上」よりも「中長期的な安定性」が求められる点では共通しています。上り坂でペースが落ちたり、ラグでFPSが下がるように、ベロシティも一時的に変動します。しかし、これを許容しながら安定的な数値を目指す姿勢が重要です。
どの数値も平均的に同じ数値を出せることが安定したと言えるわけですが、それを維持することはどの値も難しいですよね。
ロードバイクやランニング、車も上り坂では必然的にペースや燃費は落ちますし、FPSも回線がラグったら一時的にフレーム落ちが発生します。ベロシティもまた同じです。
ベロシティの活用ポイント
ベロシティは、以下のような形で活用すると、プロジェクト全体の管理やロードマップ策定に役立ちます:
- 進捗の可視化:スプリント終了時点での消化状況(SPの消化数と残数)を確認することで、計画の進行具合を把握
- 計画の調整:ベロシティを基準に、次スプリントの計画を前倒し・遅延させる
- チームの安定性測定:数字そのものではなく、スプリント間での一貫性を評価
このように、ベロシティは「目標値」や「チェックポイント」として活用することで、より有意義な運用が可能になります。
ランニングもロードバイクのツーリングも、ペースやケイデンスを上げることは記録更新に重要ではあるのですが、各チェックポイントにおいて遅いか速いかを判断するための材料として使うことのほうが遥かに多いのではないでしょうか。
ベロシティも多分同じです。
まとめ
SPやベロシティは、スクラムガイドが定義しているものではありませんが、アジャイル手法においては非常に便利なツールです。
ただし、それらを 「生産性向上」や「KPI」として過度に活用するのではなく、 中期的な進捗管理やリリースロードマップ策定の指標 として用いることをおすすめします。
安定したベロシティを持つチームであれば、計画の実行度や次のステップを明確に示すことができます。この点を意識して、ベロシティを賢く活用してみてください。
参考にしたサイト
ベロシティのような数値のハックについては、以下の本が勉強になります。