はじめに
あるところに、予算1500円で関数電卓を探していた人(自分)がいました。何も考えずに家電量販店の電卓コーナーに行くと、何故か目にSHARPのEL-509T(-WX)が入りました、お値段は2170円。所持金は2304円。買いました(((
ということでまた関数電卓を買いました。気軽に使う分にはCASIO fx-JP900CWは厄介な面があるのです。無論、CASIOくんの方が性能は良いのですが、操作性が良くなくて、SHARPくんは操作性が良さそうだったので買いました。
SHARP EL-509Tとは
こちらの製品は、SHARPから発売されている関数電卓(EL-500Tシリーズ/4機種が存在)としては下から2番目の機種で、教科書表示電卓としては最廉価グレードに位置する製品です。だからと言ってCASIOで言い換えるとfx-375ES Aではなく、fx-JP500(この製品は旧製品群の方です)の方が機能的には近かったりします。それ以外はほとんどfx-375ES Aです。
CASIOは誰でも見ただけで使える関数電卓を目指している一方でSHARPは良くも悪くも関数電卓らしい関数電卓を製造している印象です。
購入
本来、SHARPのEL-501Tを買うはずだったのですが、品切れしていて、購入候補がCASIO fx-290AとSHARP EL-509Tになり、包装の外から使ってみてCASIOのSTO
キーが裏に回っているのが気に食わない(あと画面もやっぱり気に食わない)ので、SHARPの方にしました。
SHARPの方が、全体的にキーアサインが優れています。fx-JP CWシリーズはキーアサインが正直終わっていました。
そしてSHARPは少しくらい裏に回っていても大丈夫です。カスタム機能キー(D1〜D3)でそれを指定すれば良いのです。私は順にALGB(シミュレーション計算)、X、ANSを割り当てています。
機能
一般
もっとも長い時間を過ごす基本的なモードです。複素数などの一部の機能を除きほぼ全ての関数を利用できます。
統計
統計形式を選択し、表形式でデータを入力します。キー操作をして求める値の一覧を表示できます。HOMEキーで1発で戻れます。
数表
最大で2つの関数におけるXに対応するf(X)/g(X)の値を数表形式で表示できます。
複素数
(a+bi)などの形式の複素数計算が可能です。このモードではDMS(度分秒)が虚数iのキーに置き換わるので使用不可能になります。
連立・高次方程式
3元あるいは3次までの方程式を解くことができます。GUI的な操作でないことは若干の不満点です。
基数変換
2nd F
と四則演算キーのいずれかを押してモードに入ります。BINが2進、PENが5進、OCTが8進、HEXが16進です。もちろん逆変換も対応しています。
計算精度
この関数電卓の致命的とも言える欠陥が、計算精度の低さです。弧度法でのtan(355/226)
が-749724.149
と出ます、この計算に至っては10の位から誤差が出ており、三角関数などの浮動小数点演算を扱う計算では問題ありです。
ちなみに微分/積分の計算が未だに古いシステムのままです。時間もかかります。
この計算の答えはπ/2
ですので、1.570796327
と答えを出してくれるはずなのですが… ソフトウェアの作り込みが残念ですね。
画面
画面については良好です。CASIO君は画面のレスポンスが悪い(画面が切り替わり始めてから終わるまでが長い)のですが、SHARP君は割とスッと変わります。使っていてストレスになりません。
コントラストも明らかに優れています。無表示部と表示部の差がハッキリとしています。非常に良いと思います。
実使用
1週間ほど使い込んで感じたことを連ねます。
計算速度
若干ストレスが溜まります。しかしこれはCASIOくんが1.5Vで動作するものとしては爆速すぎるからです。
※GIF動画につきラグ注意!
2200円で買える電卓にしてはちゃんと使える速度です。まぁ、コイツで回数の多い計算をさせてはいけないのは明らかで、別にその時はHP Primeを使いますし大丈夫です。
本体カバーが角張っている
あまり持って使いたいとは思いません。カバーを外せば持ちやすいサイズになります。
滑る
これはCASIOくんにも言えますが、ゴム足がないので机の上で滑ります。私のデスクのようにビニルのシートを引いていれば話は別ですが、持ち運んで使うには厄介です。
精度が低い
前述の通り計算精度が高くないです。これは内部演算の桁数(14桁)に起因していると思いますが、あまり信頼できない値のように思えてしまいます。14桁だからってこんなにズレるもんでしょうか…まぁズレるか。CASIOの23桁はチート級だし。
キーアサインは優秀
この電卓はほとんどの機能がキーボードの表あるいは裏になっていて、階層メニューの中ではありません。呼び出すのが楽なので助かります。
アクリルパネルの安心感は良い
少々荒く扱っても大丈夫なのは、安心感があります。CASIOくんは直で画面と太陽電池なので、割れそうで若干心配でした。そしてその平らなデザインもカッコ良さに貢献してると思います。
総評としては、あまりお勧めできないと言うのが正直な感想です。これを買うなら、fx-JP900(製造完了品)を買った方が幸せになれます。
改造
こちらの電卓は内部のR31のパッドに10kΩの抵抗1つを実装するだけで最上位機種のEL-5160Tに変わります。製品として見ればあまり良い設計とは言えないですが、改造できるのはありがたいです。
なお、工具と技量を持ち合わせていない方は普通に最上位機種を買ってください。そこそこ細かい作業が必要です。
必要な工具
- 先端が細めのハンダゴテ
- ハンダ(0.6mm程度推奨)
- 精密ピンセット
- 10kΩ抵抗(1005サイズ)
抵抗については、私は手持ちがなかったのでリードが生えてるタイプ(挿入実装)の部品を使用しましたが、ケースの加工が必要になるのでお勧めしません。
見栄えが悪いですが、これでOKです。ケースの抵抗があたる部分だけは切りました。
5160Tとなると、通常使用においてはCASIO君とあまり機能は変わらなくなります。
この部分の回路
一応Advent Calendar参加記事なので、一応Qiitaらしいこともしておきたい…のですがもう回路なんて簡単じゃないですか。
まぁこんなもんの回路でしょう。Vccからの供給じゃなかったとしても、他のIOピンからの出力だと簡単に予想できます。
もし私が設計者なら、絶対にEEPROMでも積んでそこにシリアルナンバーやらを保存し、マイコンで読み込むような設計にすると思います。お金をかけない設計にした結果、逆に損する、そんなパターンですね。
ちなみに、R30とR31のマイコンから離れている側のパッドは電気的に接続されているので、万が一パッドが剥げても大丈夫です。
おわりに
割と期待して買ったのですが、まぁ良い買い物とは言えず、「貯めておいて別の買えば良かった」感が否めません。今度fx-JP900を買います(断言)。
しかし、関数電卓の使用経験があれば、非常に扱いやすい電卓です。よく割り勘計算であると便利だとか何とか言いますが、その使い方には十分です(笑)。
そういうの抜きでもまぁそこそこ使えます。お勧めしないからと言って使いにくい訳ではなく、産廃な訳でもありません。ぜひ店頭で触って検討してみてください。