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HIOKI 3244-60をレビュー

Last updated at Posted at 2025-02-14

はじめに

お久しぶりです。現状、2製品のレビューのために2つの言語を軽く習得中で、時間がかかりそうなので繋ぎのレビューとなります。繋ぎなはずなのにかなり気合が入っているのは気のせいです。

また、この記事では私が所有している共立電気計器KEW MATE 2012RAとの比較が多くなります。

HIOKI 3244-60とは

日置電機さんから発売されている、オートレンジのデジタルテスターです。

基本的な機能しか搭載されていませんが、直流電圧/交流電圧/抵抗値/導通の4レンジあれば意外となんとかなります。

定価は税込5940円(税抜5400円)で、ECサイトだともう少し安く購入できる印象です。

開封…の前に。

この製品はカードテスターであるため非常に小型なのですが、箱も超小型です。あの伝説の格安テスターDT-830B(¥500程度)の箱のサイズを余裕で下回ると思います。

このテスターは機能から考えると6000円という価格は微妙にも思えますが、何と言っても日置製テスターは全て
 MADE IN JAPAN
です。6000円だとしても安全で、信頼できるメーカー製で、それで日本製という安心感があれば、まぁ許せるような気もします。共立のカードテスターKEW1019Rは多機能ですが、タイ製です。どちらが安心というものではなくても、自分の国で生産されているというのは嬉しいですね。

そして箱のデザインも洗練されているように感じます。それ故に保証マークが浮いている感は否めませんが…

開封

開けてみるとビックリ、なんと製品はビニールの袋にすら入っていません。究極のSDGsじゃないですか。紙製の化粧箱にそのまま入れられた本体。しかも開けやすい外箱。これはもう最高です。

但し、この梱包スタイル故にAmazonに玄関置き配されたらもう終了です。私はAmazonロッカーを配達先にしているので大丈夫でした。

そして取説は本体ケースの中に入っています。半ピラの説明書とは言え、しっかりとした内容で、説明書を入れてくれること自体ありがたいですね。やはりこの辺りは流石1流メーカーだなと感じます。

スペック

項目 詳細
交流電圧 0.000V ~ 500.0V1
直流電圧 0.0mV ~ 500.0V1
抵抗 0.0Ω ~ 41.99MΩ (短絡0.0Ω)
導通 0.0Ω ~ 400.0Ω (鳴動 R≦50Ω)
画面 3.5桁(4199カウント)2
測定カテゴリー CAT III 300V / CAT II 600V
電源 リチウム1次電池CR2032
測定コード長さ 46cm

しっかりとしたスペックだと思います。電圧入力の定格とカテゴリーの差は少し不思議ですが、まぁ気にしないことでおきましょう。

過電圧保護に関しては、抵抗/導通レンジでAC/DC 500Vrmsまで、電圧レンジに関してはそれに加えて$V * Hz=3*10^6$までの保護があります。過渡過電圧(サージ)は4000Vまでです。

感想

製品全体の画像です。
IMG_0207.png

テストリード

適度に持ちやすい太さでケーブルの触り心地も良好、そして柔らかく、良い印象を受けます。また共立電気計器のKEW MATE 2012RAは持ち手部分がゴムでしたが、こちらは樹脂製なので、しなるような感じもなく、持ちやすく感じます。

テストピン部は長さ15mmで、一般的な18mmと比べると少し短いのは気になりますが、実用上の問題はあまり無かったです。とはいえ、一般的な家庭用コンセントの奥まで刺した時に数mm余るか余らないか程度なので、コンセントの種類によっては厳しいかもしれません。

先端の絶縁キャップは硬い樹脂製で、テストピンを引っ掛けて取り出します(間違っているかも)。テストリードへの固定は少し硬いですが、安全性を考えれば仕方ないでしょう。

本体

筐体

本体は非常にコンパクトで、ケース込みでも小さく、どのようなポケットでも入りそうな感じです。ハードケースも頑丈な印象で、確実に本体とテストリードを保護してくれます。

レンジスイッチ

レンジスイッチは、回す時の感覚が少し弱いというか、緩いような気はします。回し方によってはレンジとレンジの間にスイッチが固定されてしまいそうです。KEW MATE 2012RAはレンジ感覚が狭いですが、カチッカチッと固定されるのでこの辺りは少し減点ポイントでしょうか。

しかし固定点でない時には自動的に直流電圧モードに切り替わります。つまり内部インピーダンスが高く(≧10MΩ)なるので、切り替わったつもりで電圧を測定しても燃えることは無さそうです。レンジ切り替え時にピッと音が鳴るのですが、その鳴らすためのパッドでその制御も兼ねているのでしょうか。

画面

4桁7セグメントの小さな画面は見やすいと感じます。というのも小さくても表示のコントラストが高く、文字も適度に大きいのです。共立のものは少しコントラストが低く、見にくく感じる時がありました。

測定機能

ここでは導通ブザーのみ紹介します。他の機能は下の章をご覧ください。

導通チェック機能は文句なしです。欲を言えばもう少し鳴動の閾値を下げてほしかったですが、文句ではありません。レスポンスが最高です。

電池ボックス

なぜこの章を作ったかはもちろん、素晴らしかったからなのですが、説明していきましょう。

この手の製品にしては妙に電池が外しやすく、入れやすいのです。公称9.5mm、実測9.5mmの薄さのテスターですから、コイン電池(CR2032)はこじって出すものだと少し覚悟していたのですが、薄さ故に出しやすく設計されています。

とりあえず画像を見てください。


IMG_0220.jpeg
1 最初の状態です。初期電池としてPanasonicの工業用CR2032が入っていました。(精密機器なので有名メーカー製の電池使っている点も高評価)

IMG_0221.jpeg
2 抑え金具の付近を指などで押します。この時、指の先の方を使う方が楽だと思います。

IMG_0222.jpeg
3 電池が枠の部分から浮き、少しズレます。

IMG_0223.jpeg
4 そのまま金具がある方向の逆に滑らせて取り出します。


これ、本当に素晴らしいんですよ。ほとんど力をかけずに電池が取り外せます。ドライバーなどでこじらなくても良いんです。

これを実現できるのも、薄さが要因でしょう。薄さ故にケースを閉じている状態では電池が接触不良になるほど浮くことがないので、下に押さえつけるような金具(部品)が要らないんですね。

とは言ってもスッと取り出せるのは非常に楽なので助かります。

不満な点

少し不満があります。
 音がうるさい!
このテスターは逐一ブザーを鳴らしてくれます。そのため過電圧や導通の確認などで気づかないということは無くなるのですが、以下の場合にブザーがなります。

  • 電源ON時
  • 測定対象の変更時
  • レンジ変更時
  • 過電圧時
  • 導通レンジにて閾値を下回った時

これはつまりどういうことかというと、何か状態の変化があれば鳴動ということになり、非常にうるさいです。音量が高く周波数も少し高めなので耳に刺さります。レンジ変更時になるのだけはやめてほしかったかな…

だからと言ってあまりに音が鳴らない共立のものも少し不安にはなりますが。

測定速度

基本的に2.5Sa/Sです(2.5回/秒)。これは平均的・一般的な3Sa/Sと比べると低い値です。しかし流石は日置、オートレンジの小数点の移動(レンジング)がかなり速いです。他社のテスターは大方サンプリング速度と同じ速度で小数点も移動するのですが、日置はそのアルゴリズムが違うようです。

電子工作のようにコストをあまり気にしなくても許される状態なら部品を追加して、ADCの読み取りシステムを変更して…みたいな感じで対応できますが、これは量産製品ですからどのように対応しているのかが気になります。(ちなみに、現在販売されている日置製品の中ではこれでも遅い方です)

小数点の移動が速いのは

  • 直流電圧
  • 抵抗

の2レンジです。交流電圧のレンジングは少し遅めですが、そもそもレンジ数が少ないので気になりません。

特に抵抗レンジが速いのは助かります。このテスターでも以下のレンジが存在します。

レンジ(Ω)
419.9
4.199k
41.99k
419.9k
4.199M
41.99M

この6レンジを最大レンジから最小レンジまで移動する時、サンプル速度と同じだとレンジングだけで2秒、そして測定値の安定までで更に1秒程度は必要です。

共立(3Sa/S)のものと比べて、体感で1秒ほどは短くなっていると思います。これは4秒から3秒に短くなっていて、かなり快適になります。

ちなみにレンジングは短絡時で1.6秒程でした。

測定確度

この製品は所詮カードテスターですので、ハンドヘルドの大きなものと比べるのは流石に平等ではありません。そのため一応同じジャンルのKEW MATE 2012RAと比較していきます。

ちなみに日置の方は自社製チップを用いているようで、共立の方については樹脂で固められていてよく分からなかったような気がします。

直流電圧(USB)

ここでは、USB PDに対応した電源を用いて比較します。安定化電源を出すのが面倒だからです。 まぁ20Vまでは出せるので良しとしてください。

D.C. 3244-60 KEW MATE 2012RA
3.3V (PPS) 3.207V 3.198V
5V 4.89V 4.877V
9V 8.91V 8.90V
12V 11.86V 11.84V
15V 14.88V 14.85V
20V 19.83V 19.83V

全体的に3244-60の方が少し高く測定されているようです。全然問題ないレベルですが。この差の平均は0.014Vでした。このような誤差はどの計測器でも生じるものなので、仕方ないですね。(ハイエンド機を除く)

直流電圧(簡易校正機)

出力誤差±0.1%のプロセスキャリブレーターで測定していきます。出力範囲は0.00V~10.00Vなので、その範囲で試験をします。

基本的には1Vステップで、そしてその間の有名な電圧値(各電池の起電力など)があればその値も測定しています。また1V未満については私が適当に定めた値です。

ちなみに、使用している簡易校正機(プロセスキャリブレータ)はBRIGHTWIN Electronics LB02Gです。0.00~22.00mAの電流も出力可能ですが、本テスターは電流測定非対応なので測定しません(できません)。

また安物の校正機なので、低電圧では全くと言っていいほど精度が出ません。その辺りもご理解ください。精度内に収まっているのは大体2V以上で、それ未満は全然ズレていますが、2機の比較はできると思います。

表の中の太字の部分は出力に近い値を示していることを意味します。

D.C. 3244-60 KEW MATE 2012RA
0.01V 5.0mV 5.1mV
0.05V 45.0mV 44.9mV
0.10V 94.8mV 94.4mV
0.20V 195.5mV 194.4mV
0.50V 0.495V 494.1mV
1.00V 0.996V 0.992V
1.20V 1.196V 1.191V
1.50V 1.497V 1.491V
2.00V 1.997V 1.990V
3.00V 2.999V 2.987V
3.30V 3.299V 3.287V
3.70V 3.700V 3.686V
4.00V 4.000V 3.985V
5.00V 5.00V 4.983V
6.00V 6.00V 5.980V
7.00V 7.00V 7.00V
8.00V 8.00V 8.00V
9.00V 9.01V 9.00V
10.00V 10.01V 10.00V

表が長くなりましたが大体の傾向は把握できましたでしょうか。この測定でも日置の方が高く出ています。しかし、日置の方が全体的に設定値に近い値を示しています。

交流電圧(コンセント)

家庭用コンセントの交流100Vを測定します。家庭用コンセントの電圧値は$(101±6)Vrms$と規定されているのでその範囲に収まっていればOKということにします。交流電圧は高級な測定器で測ってもあまり精度が出ません。

A.C. 3244-60 KEW MATE 2012RA
(101±6)Vrms 101.5V 101.9V

これに関しては、どちらも規定値の範囲内なのでOKです。

抵抗

次に抵抗です。誤差の少ない抵抗器を持っていないので、誤差±5%のカーボン抵抗を使用しています。とはいえ持っていないと、どちらが本来の値に近い値を示しているのかが分からないので、今度誤差の小さな抵抗を買っておこうと思います。

Ohm 3244-60 KEW MATE 2012RA
100Ω 98.9Ω 99.2Ω
51KΩ 50.8KΩ 50.79KΩ
100KΩ 100.6KΩ 100.4KΩ
220KΩ 218.5KΩ 218.1KΩ
470KΩ 0.460MΩ 458.3KΩ
1MΩ 0.990MΩ 0.989MΩ

これに関しても日置の方の測定値が大きく出る傾向のようです。

傾向

全ての測定において日置の方が共立のものより少しずつ測定値が大きいという傾向が見られました。これには以下の2つの原因が考えられます。

  • 日置の電圧オフセットが少し低くなっている
  • 共立の電圧オフセットが少し高くなっている

このように考えればこの誤差の説明が可能です。しかし、測定確度はどちらのテスターも購入日から1年ですから、日置の方が正しいと考えるのが順当です。共立の方は去年(2024年)の1月に購入した物ですから、少しオフセットがずれているのかもしれません。

おわりに

全ての検証を行うのは大変でしたが、参考になりましたでしょうか。もちろん、日置電機さんと共立電気計器さんのどちらも信頼できる計測器メーカーです。

個人的な印象としては日置は堅牢性、共立は多機能・便利という印象があります。特にクランプメーターにその傾向が現れていると思います。

どちらも良い計測器ですが、個人的には日置を選びたいと感じます。日置の方がバリ取りも丁寧で、細かいところに至っては共立よりも作り込まれているからです。

電気工事などに携わる方々は、充電部に触れる時間をなるべく短くしたいと思っているのではないでしょうか。そのような方には日置のテスターがおすすめです。お高いですが、HIOKI DT4223は安心できる測定器だと思います。

レビューにしては長くなりましたが、また次回の記事でお会いしましょう。

あぁ〜この記事書くの疲れたぁ…
共立テスター校正出さなきゃ… でも高い…

  1. 電圧レンジは最大500Vですが、549Vまで表示されます。但しその間を超過するとOF(Over Flow)表示とともにブザーが鳴ります。テスターの最大線間電圧600V(CAT IIで規定されている値)を下回っている状態でも警告されます。 2

  2. 電圧測定時、500Vレンジでは549カウントになります。420V以上では1V単位の測定となります。

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