松坂和夫 解析入門<1>(ISBN: 978-4007304514) の解答です。
問題 1.3
1
問題
28-29ページの命題2を証明せよ。
命題2
(a) $a\ne0$、$ab=ac$ならば$b=c$。
(b) 乗法単位元 $1$ はただ1つである。
(c) $0$ でない元 $a$ の乗法逆元 $a^{-1}$ は $a$ に対して一意的に定まる。
(d) $a\ne0$ ならば $(a^{-1})^{-1}=a$。
(e) $b\ne0$ ならば、方程式 $bx=a$ は一意的な解 $x=ab^{-1}$ をもつ。
公理
公理群(M)
M1 任意の $a \in F$、$b \in F$ に対して、それらの積 $ab$ が $F$ の中に定まる。
M2 乗法は可換である。すなわち、任意の $a,b \in F$ に対して $ab = ba$。
M3 乗法は結合的である。すなわち、任意の $a,b,c \in F$ に対して $(ab)c = a(bc)$。
M4 $F$ の中に $0$ と異なる1つの元 $1$ があって、すべての $a \in F$ に対して $a1 = a$ が成り立つ。
M5 $F$ の $0$ でない任意の元 $a$ に対し、$aa^{-1}=1$ を満たす $F$ の元 $a^{-1}$ が存在する。
解答
(a) $aa^{-1}=1$ であるから、公理群(M)を用いて
\begin{equation}
b = 1b = (a^{-1}a)b \\
= a^{-1}(ab) \\
= a^{-1}(ac) \\
= (a^{-1}a)c \\
= 1c = c
\end{equation}
(b) (a) において $c=1$ とおけば、$ab=a$ ならば $b=1$
(c) (a) において $c=a^{-1}$ とおけば、$ab=1$ ならば $b=a^{-1}$。これは $a$ の乗法逆元 $a^{-1}$ がただ1つであることを示している。
(d) $a^{-1}a=1$ であるから、$a$ は $a^{-1}$ の乗法逆元である。すなわち $(a^{-1})^{-1}=a$
(e) $x=ab^{-1}$ とおけば、
\begin{equation}
bx=b(ab^{-1})=b(b^{-1}a)=(bb^{-1})a=1a=a
\end{equation}
2
問題
$A$ を $R$ の下に有界な空でない部分集合とする。$-A$ を、$x \in A$ に対する $-x$ 全体の集合とすれば、$inf A=-sup(-A)$ であることを証明せよ。(ここでは定理2を仮定する。)
定理2
順序体 $R$ は上限性質を満たす。(したがって下限性質も満たす。)
解答
$A$ は下に有界であり、$R$ は下限性質を満たすので、$A$ の下限 $infA \le x \in A$ が存在する。$infA \le x$ の両辺に $-1$ をかけると $-infA \ge -x$。よって、$-infA \ge y \in -A$。したがって
\begin{equation}
-infA = sup(-A) \\
infA = -sup(-A)
\end{equation}