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AI を活用して社内からの製品問い合わせを 60% 削減した話

Last updated at Posted at 2025-03-11

はじめに

現在、私は自社の BI 製品の開発チームに所属しています。
本記事では、「社内からの製品問い合わせ」を約 60% 削減するに至った取り組み内容について紹介します!

開発チーム概要

業務内容

私のチームでは、主に以下の業務を担当しています。

  • 製品問い合わせ(顧客だけでなく社内のコンサルチームからもある)
  • 製品のバージョンアップ対応
  • 不具合対応
  • 新規 AI 機能の開発
  • 既存の自社製品との連携開発

チーム構成

チーム構成は当時 8 名で、内訳は以下の通りです。

  • チームリーダー (1 人):問い合わせや開発マネジメントがメイン
  • 問い合わせ専任 (1 人)
  • 製品バージョンアップ・不具合対応 (2 人):問い合わせには対応しない
  • 新規 AI 機能開発 (2 人)
  • 既存製品との連携開発 (2 人/私が担当)

製品のバージョンアップ・不具合対応の 2 名以外は、開発等をしながら問い合わせ対応も兼務している状況でした。

ここで課題ですが、問い合わせ対応の工数が大きすぎるという課題を抱えていました。

課題詳細

問い合わせ対応に多くの時間が割かれている

2024 年 2 ~ 7 月データでは、問い合わせの約 約 50% が社内からの問い合わせでした。
私自身の 3 か月平均の勤怠を例に挙げると、開発業務は 30 時間ほどに対し、問い合わせ対応が 90 時間ほどで、開発よりも問い合わせ対応に時間を取られるケースが続出していました。

また、他のメンバーについても大なり小なり状況は似ており、問い合わせ対応の優先度が高く、本来やるべき開発作業に十分なリソースを割くことが難しい状態になっていました。

ナレッジ活用の問題

弊社 BI 製品には豊富なドキュメント(ナレッジ、マニュアル、教材、過去の問い合わせ記録など)が用意されていましたが、ドキュメントが補完されているシステムの検索性の低さやドキュメント量の多さから十分に活用されていない状況でした。
一定数の問い合わせは既存の情報で解決できるものであるにも関わらず、自己解決しづらい状態になっていました。

以上の課題を抱えていることに加えて、私自身、問い合わせ業務がかなり嫌だったので、問い合わせ削減をどうしてもしたいと上司に進言し、勝手に 1 人で進めていきました笑

解決したい課題

以上の状況だったため、以下 2 点を主軸として、課題解決に取り組んでいきました

  1. 問い合わせ時間と件数の削減

    • BI チームの調査時間を削減し、業務効率を向上させる。
    • 社内で自己解決できる仕組みを整備し、問い合わせ数の削減を図る。
  2. ドキュメントの一元化と活用促進

    • BI 製品に関する情報を集約し、効率的に活用できる仕組みを整える。

施策と取り組み

STEP1. コンサルチームへのヒアリング

まず、コンサルチームへ詳細なヒアリングを実施し、何か別の要因が無いかの深堀りを行いました。
ここで分かったのは、コンサルチーム内での相談が少なく、すぐに開発チームに問い合わせをする傾向があるという状況が引き出せました。

そこで私は、人的な解決方法システムによる解決方法の両面からアプローチを行うことにしました。

STEP2. 人的な解決策の導入

コンサルチーム内のチャットグループ作成

「とりあえず開発チームに聞く」のではなく、コンサルチーム同士でまず話し合う仕組みを整えました。それでも解決できない場合のみ開発チームへ問い合わせるルールとし、相談を促進することで不要な問い合わせの削減を目指しました。

STEP3. システム的な解決策の導入

RAG(Retrieval-Augmented Generation)システムの活用

ドキュメントの一元化への対策として、製品のドキュメントやマニュアル、過去の問い合わせ記録を弊社 RAG システムに格納しました。ユーザが自然言語で質問すると、関連ドキュメントを自動で見つけて回答を返せるようにしました。
必要な情報を素早く検索できるようにし、自己解決を促進。

生成 AI(ChatGPT など)の活用

一般的な知識(SQL、JDBC ドライバー関連エラーなど)は AI で自己解決できるように案内しました。
他には、製品のグラフ描画機能が特定のライブラリをベースにしているので、ライブラリ名で検索や質問をする、など具体的な聞き方のコツを社内に周知しました。

活用のコツや勉強会の開催

定期的なアンケートの実施により利用者から「うまく回答が得られない」「検索性が悪い」などのフィードバックを収集し、RAG の検索精度向上やドキュメントの整理を継続的に実施するという、改善するサイクルを回しました。

また、AI ツールを提供しただけではなかなか使い方が分からないという声が上がっていたので、必要に応じて生成 AI や RAG の使い方のナレッジの提供や講座を実施しました。

※ AI 推進活動の具体的な導入・改善プロセスについては、別記事で詳しく取り上げる予定です。

結果

これらの取り組みを数カ月にかけて改善しながら継続的に行うことで、以下の結果を得られました。

社内(コンサルチーム)からの問い合わせが約 60% 減少

2024 年 2 ~ 7 月と比較し、8 ~ 12 月の期間で問い合わせ数が大幅に削減しました。

自己解決率の向上および知識共有の促進

コンサルチームから「AI ツールのおかげで自己解決ができるようになった」「チャットグループのおかげで属人化されていた知識が共有されるようになった」といった好評の声が上がっていました。

開発チームの負荷軽減

問い合わせ対応に割かれる工数が減ったことで、開発メンバーは本来注力すべき開発業務などにリソースを振り向けやすくなりました。

今後の展望

今回の取り組みは社内向けとして一定の成果が出たため、今後は以下のような拡張を検討しています。

  • RAG システムの顧客導入
    社内だけでなく顧客向けにも弊社 RAG システムを導入し、問い合わせ削減や自己解決率の向上を図る。
  • 生成 AI を活用した専用エージェント開発
    グラフ系など特定分野の質問を自動的に変換し、ChatGPT などに適切に問い合わせるエージェントを検討中。
  • 顧客向け AI 講座の実施
    顧客向けにも AI ツールを活用した問題解決方法の社内講座を実施。

おわりに

問い合わせ対応に追われる状況は、開発チームにとって大きな負担となります。しかし、これまで述べてきたような取り組みによって負担を軽減し、本来注力すべき開発業務に時間を割けるようになりました!

社内からの問い合わせは、蓋を開けてみると「膨大な情報資産があるのに活用されていない」「とりあえず開発チームに聞いてしまう」という人的な要因も大きいと感じました。RAG や生成 AI といったツール導入だけでなく、運用フローの見直しコンサルチーム内での相談体制を整えることも、問い合わせ削減につなげる一つの手であると分かったのは印象的でした!

今後は、さらに AI を活用した高精度の問い合わせ対応フローを整えながら、開発チームが本来の業務に集中できる環境を整備していきたいと思います。

今回の取り組みが、問い合わせ業務に頭を抱える他のチームの参考になれば幸いです!

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