はじめに
システム開発の現場では、大きく分けて「新規開発」と「保守開発」という2つのタイプがあります。
新規開発では、要件定義から設計、構築、テストまで一連の開発フローを通してゼロからシステムを作っていきます。一方で保守開発は、すでに稼働しているシステムに対して機能追加や不具合修正などを行う開発です。
現場の実感としても、多くのエンジニアが関わる開発の大半は「保守開発」であることが多いのではないでしょうか。
本記事では、これから保守開発に携わるエンジニアや、既に関わっている方に向けて、保守開発におけるポイントや心構えについて共有できればと思います。
※主に業務アプリケーションを想定しています。
保守開発とは?
1. 「動いているもの」に手を加えるという緊張感
保守開発の本質は「現在進行形のシステム」に対して改修を加えることにあります。
特にクリティカルなシステムや大規模な業務システムの場合、「今も使われている」という緊張感があります。
本番リリースのたびに、「障害は出ないか」「問い合わせが来ないか」と緊張するのは、保守開発に携わる人なら誰もが経験していることでしょう。
2. 既存処理を読み解く力が求められる
保守開発では、過去のソースコードや設計資料を頼りに開発を進めることになります。ただし、ドキュメントが完璧に整備されているとは限らず、「コードが唯一の真実」になっているケースもしばしばです。
そのためには、既存コードをリバースエンジニアリングする力が必要です。
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似たような機能がどこかに存在していないか
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過去にどういう実装判断がされたのか
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この処理の裏側にある業務的背景は何か
こうした観点を持ちながら、必要に応じて既存処理を参考にしたり、新たな処理を設計・実装したりする判断が求められます。
3. 品質とメンテナンス性のバランス
「新しいやり方で書いた方がキレイになる」と思うことはよくあります。
しかし保守開発では、あえて既存処理に寄せるケースも少なくありません。
たとえば、
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同じようなロジックが既に存在している
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実際にその処理が長年動いている実績がある
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処理を置き換えることで新たな障害を生む可能性がある
といった理由から、あえて古いロジックに合わせて実装することも「品質」を保つ上での戦略です。
こうすることで将来的な改修コストを抑えることができ、チーム全体としての生産性を担保することにも繋がります。
保守開発における注意点
「いま動いている」ことの重み
保守開発で最も注意すべき点は、「今まさに動いているシステムに手を加える」ということです。
これはつまり、
変更によって新たな障害を生み出すリスクが常にある
ということを意味します。
そのため、以下のような慎重な進め方が必要です。
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変更対象の処理がどこに影響を及ぼすかの影響調査
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検証環境での入念な動作確認
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万が一に備えたロールバック
場合によっては「石橋を叩いて、叩いて、それでも渡らない」という判断も必要になります。
利便性向上や新機能追加よりも、安定性を優先するのが保守開発の基本スタンスだったりします。
最後に:保守開発のポイントまとめ
保守開発は、現場では欠かせない仕事です。
システム全体を理解し、安定稼働を守りながら改修を進めていくためには、着実さと判断力が求められます。
改めて、保守開発のポイントを整理してみます。
✅ 動いているシステムに手を加えるという緊張感と責任感
✅ バグ(デグレ)を出さないことが最優先
✅ 既存コードを活用しながら、将来コストも考慮に入れる
✅ システム全体の整合性や保守性にも気を配る
保守開発に取り組む皆さんにとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。