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公共の安全 と 個人情報の保護 の均衡 - 人工知能技術、データトラストなどを基盤とするソーシャル・ディスタンシング 2.0

Last updated at Posted at 2020-04-27

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注)この文章はエレメントAI(Element AI) の共同創業者でありAdvisorであるYoshua Bengio教授のブログに2020年3月23日に投稿された“Peer-to-peer AI-tracing of COVID-19”を翻訳したものです。原文はこちらでご確認いただけます。

“社会的距離“をとることにはもちろん効果があるが、当然ながら、とても残忍な方法であり経済的に大きな被害を与えるという限界を示していることがわかる。私たちは、感染している人々の動線を追跡し、該当する場所に訪れた人々に社会的距離をとらせることが、どんなに良い効果を生んでいるかを知っている。ここに技術を加えるのなら、それはより大きな助けとなるだろう。ワクチンの臨床実験期間や大規模の人々にワクチン接種をすることを考えると、経済が再開するのにはこれから18-24ヵ月かかると思われる。私たちの経済を復興させていくためにも、私たちは現在の方法とは違う、新しい自粛方式を考慮しなければならない。また同時に、私たちはこのような技術が、のちに政府機関などが自身を追跡することに悪用されないように監視することにも注意を払わなければならない。

想像してみよう。スマートフォンのアプリケーションが、あなたがどこを訪れたのか、また誰にあったのかをもとにあなたが感染している可能性を割り出し、その情報をあなたに会う人々と共有するということだ。これをもとにアプリケーションは各々の感染の危険度を自らアップデートすることができる。あなたが誰かと会う際に、その人々があなたを感染させる感染源となりうるのか判別することができるだろう。相手との距離を維持し、彼らがあなたの店、家、または車に入ってくることを阻止するだろう。同時に、常に自分の感染の危険水準を知ることができるため、自らが周りの人々に与えうる危険をより意識することができ、このような危険を避けるためにも外出の自粛や意識的な手洗いをすることを促すことができる。万が一、ウイルス検査をすることになれば、医療従事者は暗号化技術が適用されたアプリバージョンを使用し、検査結果に対する重要な情報をスマートフォンで回覧することができるようにし、匿名化した情報(GPS経路ではなく、だれに会ったのかなど、関連するリスク)のデータ管理をする非政府機構のデータトラスト(Data Trust)にアップロードする。データトラストにアップロードされた情報は感染症リスクの予測変数を学習するのに使用され、利用者はデータをアップロードする対価として、アップデートされたバージョンのリスク予測変数を使用し、より正確な感染予測が可能になる。すなわち、データトラストを使用しているため、P2P追跡は中央集権的データベースからすべての使用者の移動情報を保存しなければならないということではない。中央データベースには予測変数を学習するのに必要な地域的な情報が除外された情報、匿名化された情報のみを収集、また保存する。実際に、いつ、どこで会ったのかなど、重要な地理的情報はスマートフォンに保存され、相互間(P2P)でのみ伝達されるということだ。また、このアプリでは疾患に対する利用者の質問に答えることができ、検査が必要な場合、地域保健当局につなぐこともできる。それだけでなく、新しい症状が出ていないか確認する一日点検機能を提供し、リアルタイムで体内の危険度を評価、また追跡することができる。

あなたが出会う人々、店の店主はあなたがスマートフォンにアプリをインストールしているのかを確認することができる。(アプリは10m以内でBluetooth技術によって通信が可能である)つまり、あなたが自由に野外活動をし、人々に会うためにはアプリをダウンロードして、情報をアップロードしなければならないということである。(社会的圧力を感じることになるだろう。)または、政府が特定の人員、食料品店、学校、または大学などが位置する一部の地域に接近するためには、無条件にアプリをインストールするように義務化することもありうる。ある人々は、スマートフォンがないため(多くの高齢者など)、政府が安いスマートフォンを彼らに提供することを考慮しなければならないだろう。

地域別にアプリの収集情報や程度を運用することもできる。地域別にウイルスの増加率をコントロールするため(例えば、ウイルスの再生産数=Reproduction numberを1以下に維持するため)収集される変数の量を調節することができる。これを通して、社会経済的な被害(所得が減ったり経済全般の生産が低下したりする場合)と保健に関連する被害との間の均衡を保つことができるはずである。最も良いのは再生産数が1またはそれよりも少し低い水準で形成されることであり、そうすることで感染によって起こるランダムな変動にも耐えられるようにするためである。

まだ多くの細部的な事項が考慮されなければならず、そのためには感染学、モバイルコンピューティング、 UI、マシーンラーニング、データベースの暗号化、データの信頼に対する専門的な法的知識に至るまで、多様な専門家たちの共同の努力が必ず要求される。しかし、これはオープンソース協業ツールを使用し、公開的に開発することができ、近いうちに全世界的に無料で配布されるだろう。

文:Vargha Moayed & Yoshua Bengio

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