1. Oracle公式の特設サイト/専用ページの有無
Oracleはデータベース19cへのアップグレードに関する専用リソースを提供しています。たとえば、Oracle公式サイトには**「Upgrade or Migrate your Databases」というページがあり、19cへのアップグレード手順やツール(AutoUpgradeユーティリティなど)を紹介するハンズオン・ラボが公開されています
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。また、Oracle提供のホワイトペーパー「Upgrade and Migrate to Oracle Database 19c」では、19cへ移行するメリットや具体的なアップグレード/マイグレーション手法が概説されています
oracle.com
。さらに、Oracle Database公式ドキュメントとして「データベース・アップグレード・ガイド(19c)」**も公開されており、アップグレード計画の立案や非互換変更点の確認に役立ちます
docs.oracle.com
。
2. Oracle Database Client 19cの非互換点・削除/非推奨機能
Oracle Client 19cでは、いくつかの機能が非推奨化・サポート終了となっています。主要な変更点は以下のとおりです。
Oracle Streamsのサポート終了: Oracle Streams(データベースレプリケーション機能)は12cR1で非推奨となっていましたが、**19cで完全にサポート終了(Desupported)となりました
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。レプリケーションにはOracle GoldenGateへの移行が推奨されます。
Data Guard関連パラメータの削除: Oracle Data GuardブローカーのパラメータMAX_CONNECTIONSは19cでサポート終了となりました
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。これにより、Data Guard構成の一部プロパティが変更されています。
Exadata関連パラメータの削除: Exadata環境向けの初期化パラメータEXAFUSION_ENABLEDはOracle 19cでサポート終了となり、設定項目自体が削除されました
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(19cではExafusion機能が常時有効化されたため、このパラメータは不要になっています
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)。
旧式パラメータの削除: セキュリティ関連のO7_DICTIONARY_ACCESSなど、古いリリースとの互換用に残されていたパラメータも19cで削除されています
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。これらは現行のセキュリティ標準に合わせて整理されたものです。
Oracle Fail Safeの非推奨化: Windows環境向け単一ノード可用性機能であるOracle Fail Safeは19cにて非推奨(Deprecated)**となりました
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。今後のリリースでサポート打ち切りの可能性があり、Oracleは代替としてOracle RAC One Nodeなどの利用を推奨しています。
上記のような機能・パラメータ以外にも、非CDBアーキテクチャ(従来のシングルテナント構成)は19c時点ではまだ使用可能ですが、12cR2以降非推奨となっており、21c以降ではサポート対象外になることが公表されています
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。そのため19cが非CDB方式で構築できる最後の長期サポートリリースとなります。移行計画時には、将来を見据え可能であればマルチテナント(CDB/PDB)構成への移行も検討すべきでしょう。
3. クライアント-サーバー互換性ガイド(サポート範囲)
Oracleはクライアントとサーバー間のバージョン互換性について明確なポリシーとサポート範囲を定めています。基本方針として「新しいクライアントは、そのリリース時点でサポート期間中の古いサーバーとの接続互換性が保証される」こと、および「新しいサーバーにもサポート中の古いクライアントから接続可能である」ことが示されています
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。 具体的には、Oracle Database Client 19cは以下のサーバー・バージョンとの接続がサポートされています。
**Oracle Database 11g Release 2 (11.2.0.4)**以上
**Oracle Database 12c Release 1 (12.1.0.2)以上
Oracle Database 12c Release 2 (12.2.0.1)、18c、19c など
たとえばOracleの互換性サポート表によれば、19cクライアントはOracle Database 11.2.0.4、12.1.0.2、12.2.0.1、18c、19cといったバージョンに対して接続動作が保証されています
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(11.2については最終Patchリリースである11.2.0.4以降が必要となります)。一方で、サポート対象外の古い組み合わせ(例:19cサーバーに対する11.2.0.1クライアント接続など)は動作保証がなく、実際にORA-28040: 対応する認証プロトコルがありませんといったエラーが発生するケースも報告されています
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。Oracle提供のMy Oracle Support情報(Doc ID 207303.1)では、サポートされるクライアント/サーバー組み合わせの詳細なマトリクスが公開されています
support.oracle.com
。移行に際しては、自社環境のデータベース・サーバーのバージョンがOracle 19cクライアントと互換性範囲内であることを確認してください。 補足: Oracle Client 12.2.0とOracle Database 19cサーバーの組み合わせも、12.2がサポート期間中であった間は正式にサポートされていました(現時点では12.2自体がExtended Support期限を迎えているため原則アップグレードが推奨されます)。そのため「サーバーだけ19cへ先行アップグレードし、クライアントは従来の12.2を利用」という一時的な併用も技術的には可能ですが、恒久的な構成としない方が良いでしょう。長期的にはクライアントも含め19cへ統一し、サポート切れの組み合わせを残さないことが推奨されます。
4. アップグレード・インストール時の注意事項
Oracle Clientを12.2から19cへアップグレード/再インストールする際の留意点をまとめます。
イメージベース・インストール方式: Oracle 19cより、ソフトウェア配布とインストール手順が簡略化されています。19cではインストール用Zipファイル自体がOracleホームのイメージとなっており、これを任意のディレクトリに展開してからインストーラを実行する方式が導入されました
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(従来のようにGUIインストーラ経由でファイルコピーする方法から変更)。この「イメージベースインストール」により設定が簡素化され、ベストプラクティスに沿った配置が保証されます
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。なお19cクライアントについては、従来型のZIP配布も引き続き提供されており、必要に応じて利用可能です
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。
32ビット版サポート(Windows): Oracle Database Client 19cはWindows環境向けに32-bit版と64-bit版の双方がリリースされています。ただし32-bit版クライアントは公式には64-bit OS上での動作のみ認定されています
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。Linuxを含むUnix系OSでは19cよりクライアント・サーバーとも64-bit環境のみがサポートされます。自社アプリケーションが32ビット版Oracleクライアントに依存している場合、Windowsであれば19cへの移行後も32-bitクライアントを継続利用できますが、将来的な64-bit化も検討してください。
既存アプリケーションの再リンク: Oracleクライアント・ライブラリを利用するアプリケーションを持つ場合、静的にOCIライブラリをリンクしたプログラムについては再コンパイル・再リンクが必要になる可能性があります。Oracleは「静的リンクされたOCIアプリケーションは、メジャーリリース/マイナリリースが変わる際には必ず再リンクが必要」と説明しています
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。特にエラー・メッセージ仕様の変更などにより、新バージョンのクライアント環境下で古い静的リンクバイナリが動作不全を起こす可能性があるためです
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。一方で動的にOCIライブラリをリンクしているアプリケーションであれば、19c提供のクライアントDLLに対しても上位互換性が保たれており、基本的には再リンク不要で動作します
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(Oracle Universal Installerが旧バージョン互換のシンボリックリンクを作成する仕組みにより、既存アプリは新Oracleホーム上でも同じパス名でライブラリを参照できます)。とはいえ、重要な業務アプリについては本番移行前に19cクライアントでの接続テストを十分に行い、問題なく動作するか検証することを強く推奨します。
Windows認証(NTS)利用時の変更: Windows環境でOS認証(NTS認証)を用いてOracleにログインしている場合、19c以降クライアント/サーバー双方でNTLMプロトコル認証がデフォルト無効化される点に注意が必要です。具体的には、SQL*Net設定パラメータSQLNET.NO_NTLMの既定値が19cではTRUEに変わりました
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(従来はFALSE)。その結果、Active Directoryなどを用いたWindows統合認証では追加設定なしに接続しようとすると「ORA-12638: 資格情報の取得に失敗しました」というエラーが発生する可能性があります
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。対策として、引き続きNTLM認証を許可する場合はクライアント・サーバー双方のsqlnet.oraにSQLNET.NO_NTLM=FALSEを明示的に設定する必要があります
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。Oracleはセキュリティ向上のため可能な限りNTLMを使わずKerberosなどを用いることを推奨していますが、既存システム都合上NTLMを使う場合は上記パラメータ変更を忘れないよう注意してください。
その他の考慮点: Oracle Client 19cのインストール要件として、OSやハードウェア要件も12.2時代から更新されています。例えばWindows版19cクライアントではWindows 10以降のOSがサポート対象となり(Windows 7はサポート外)、必要に応じVisual C++再頒布可能パッケージの導入が求められる場合があります。Linux版ではglibcなどシステムライブラリの必要バージョンが上がっていることにも留意ください。アップグレード前に必ずインストールガイドの「システム要件」節を確認し、該当OS上で19cクライアント導入に問題がないかチェックすると良いでしょう
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。
5. OS別インストールガイドへの公式リンク
Oracle Database Client 19cの詳細なインストール手順や要件は、Oracle公式ドキュメントの各OS向けインストールガイドに記載されています。主要プラットフォームのガイドへのリンクを以下に示します。
Oracle Database 19c クライアント インストールガイド(Windows版) – Windows(x64)環境における19cクライアントのインストール手順書
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。GUIウィザードを使ったセットアップ方法、必要スペック、Instant Clientの導入などが解説されています。
Oracle Database 19c クライアント インストールガイド(Linux版) – Linux (Intel 64-bit)環境向けの19cクライアントインストール手順書。必要パッケージやカーネルパラメータ、レスポンスファイルを用いたサイレントインストール方法などが網羅されています
devdoc.net
。
上記ドキュメントはOracle公式サイトのドキュメンテーション(Oracle Help Center)**で公開されており、「Database Client Installation Guide, 19c」として各プラットフォーム別に提供されています。特にWindows版ガイドでは、32-bit/64-bitのインストール要件やディスク容量見積もり
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、Linux版ガイドでは必要なOSユーザーやグループの設定、依存ライブラリの確認手順など実践的な情報が載っています。Oracle Client移行時にはこれら公式ドキュメントを参照し、正しい手順でセットアップを行ってください。各ガイドへのリンクはOracleの19cダウンロードページ上からも辿ることができ、「Installation guides and general Oracle Database 19c documentation are here」と案内されています
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。必要に応じてMy Oracle SupportやOracle Communitiesも活用し、最新のパッチ適用情報や既知の問題に目を通しておくと安心です。 参考資料リンク:
Oracle公式: Upgrade and Migrate to Oracle Database 19c (ホワイトペーパー)
oracle.com
Oracle公式ドキュメント: Oracle Database 19c リリースの変更点 (Deprecated/Desupported一覧)
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Oracle公式ドキュメント: Oracle Database Client / Server互換性マトリクス (MOS Doc ID 207303.1)
oraclefact.wordpress.com
oraclefact.wordpress.com
Oracle公式ドキュメント: Oracle Database Clientインストールガイド 19c (Windows, Linux)
docs.oracle.com
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Oracle公式ドキュメント: 19cクライアント・ソフトウェアのアップグレードに関する注意(イメージベースインストール、リンク互換性 等)
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