はじめに
Gitは開発者にとって欠かせないバージョン管理ツールですが、その操作コマンドには多くの機能が詰まっています。特にgit checkoutはブランチの切り替えやファイルの復元など、多目的に使用されてきました。しかし、その多機能さゆえに動作が曖昧になりやすく、誤った操作を招く原因にもなっていました。
Git 2.23(2019年8月)以降、新しいコマンドであるgit switchとgit restoreが導入されました。これらのコマンドはそれぞれ特定の操作に特化しており、より直感的で安全なGit操作を実現します。本記事では、git checkoutの問題点や新しいコマンドの使い方、そしてgit checkoutを使わないべき理由について解説します。
git checkout:古い多目的コマンド
git checkoutは以下のような複数の機能を持つコマンドです。
- ブランチの切り替え
- 新規ブランチの作成
- ファイルの復元
- コミットのチェックアウト
一つのコマンドで様々な操作が可能ですが、その反面、どの操作が実行されるのかがコマンドの書き方によって変わるため、動作が曖昧になりやすいという問題があります。特に初心者にとっては学習コストが高く、誤った操作によるトラブルも起きやすいです。
新しいコマンドの導入:git switchとgit restore
Git開発チームはこれらの問題を解決するため、操作を明確に分離した新しいコマンドを導入しました。
git switch:ブランチ操作に特化
git switchはブランチの切り替えや新規ブランチの作成に特化したコマンドです。
-
ブランチの切り替え
git switch ブランチ名 -
新規ブランチの作成と切り替え
git switch -c 新しいブランチ名
git restore:ファイル操作に特化
git restoreはファイルの復元やステージングの解除に特化しています。
-
作業ディレクトリのファイル復元(変更内容を削除)
git restore ファイル名Gitで追跡していないファイルを削除する場合
cleanコマンドを使う- 削除されるファイルを確認
git clean -n - ファイルを削除する
git clean -f - ディレクトリを削除する
git clean -d - ファイルとディレクトリを削除する場合
git clean -fd
- 削除されるファイルを確認
bash
コピー
git clean -fd
:::
-
ステージングの解除
git restore --staged ファイル名
具体的な使用例
以下にgit checkoutと新しいコマンドの対応する使用例を示します。
ブランチの切り替え
# 従来の方法
git checkout develop
# 新しい方法
git switch develop
新規ブランチの作成と切り替え
# 従来の方法
git checkout -b feature
# 新しい方法
git switch -c feature
ファイルの復元
# 従来の方法
git checkout -- file.txt
# 新しい方法
git restore file.txt
git checkoutを使わない理由
1. 動作の曖昧さを排除
git checkoutは一つのコマンドで複数の異なる操作を行うため、コマンドの意図が不明瞭になりやすいです。例えば、ブランチ名とファイル名が重複している場合、どちらを指しているのか混乱を招く可能性があります。git switchとgit restoreを使用することで、その操作がブランチに関するものかファイルに関するものかが明確になります。
2. 学習コストの低減
新しいコマンドはその名前から機能が直感的に理解できるため、Gitの学習コストを下げることができます。特に初心者にとって、操作を誤るリスクを減らし、安心してGitを活用できるようになります。
4. 将来的なベストプラクティスへの適応
Gitの開発者は、git switchとgit restoreの使用を推奨しています。これらのコマンドは今後も維持・改善が行われると考えられ、最新のベストプラクティスに従うことで、将来的な互換性やサポートを得やすくなります。
まとめ
git checkoutは長らくGitユーザーに利用されてきた多目的コマンドですが、その曖昧さや誤用のリスクから、git switchとgit restoreへの移行が推奨されます。これらの新しいコマンドを使用することで、操作の意図が明確になり、誤った操作を防ぐことができます。Git 2.23以降を利用している場合は、ぜひgit switchとgit restoreを積極的に活用して、より効率的で安全なGit操作を実現しましょう。