LiDARとは
LiDARとはLight Detection and Ranging、またはLaser Imaging Detection and Rangingの略で、主に目に見えない赤外線のレーザ光を使用した距離を測定するためのセンサです。
電波を使って距離を計測するのがRadar(Radio Detection and Ranging)、光(赤外線)を使って計測するのがLiDARです。
動作原理
原理は単純で、LiDARから放たれた赤外線レーザが計測対象に当たって跳ね返って来るまでの時間を測定し、計測対象までの距離を測ります。
光は秒速約30万㎞ですから、10m先の対象を測定する場合往復で20mなので、
20m / 300,000,000m/s = 6.7×10^-8 = 67ナノ秒
後に跳ね返ってくるわけです。
また、分解能を5㎝に保ちたい場合、往復で10㎝なので少なくとも、
0.1m / 300,000,000m/s = 3.3×10^10 = 0.33ナノ秒
のサンプリング周期をもつ必要があります。
実際には、LiDARは以下の図のようにパルス状のレーザを発出し、反射波を検出しています。
反射光は以下のグラフのようなおおよそ山なりの反射強度となって検出されます。この時ピークを記録したところが物体から反射してきたところ、すなわち計測対象との距離になるわけです。
LiDARの種類と使用例
LiDARには、1点のみの距離を計測するもの(1次元LiDAR)、面上に計測するもの(2次元LiDAR)、立体的に計測するもの(3次元LiDAR)があります。
1次元LiDAR
1次元LiDARは、1本のレーザー光線のみを使って距離を計測するものです。
使用例としては、ゴルフなどで使用するレーザ距離計や、工事現場などで使用する測距計がこれに当たります。
Nikon ゴルフ用レーザー距離計 COOLSHOT 20GII LCS20G2
2次元LiDAR
2次元LiDARは、線上にレーザー光を照射して面をスキャン可能にしたものです。
レーザ自体、またはレーザ光を反射させるミラーを回転させることで計測するものが多いです。
使用例の1つとして、人や物が通過したかどうかを検知する侵入検知があります。
作業機械に取り付けて周囲に人が侵入したことを検知したり、人に立ち入られては困るところに設置して侵入を検知したりします。
筆者が目撃した例として、線路脇の工事現場に設置されている例がありました。
おそらく工事現場からの飛来物や重機の一部が線路上に入ってしまうと重大な事故につながってしまうため、それらを検知し警告を発するためのものかと思われます。
また、航空機に搭載して地形や都市を計測する目的にも使われます。
国土地理院HPより:https://www.gsi.go.jp/kankyochiri/Laser_senmon.html
3次元LiDAR
昨今LiDARといえば、3次元LiDARのことを指していることが多い印象です。
3次元LiDARは、面上にレーザー光を照射することで立体的にスキャンを可能にしたものです。
スキャンの方式はメーカーによってさまざまであり、
・複数のレーザーを縦方向に配置し回転させているもの
・レーザーを上下に動かしながら回転しているもの
・MEMSミラーを使用したソリッドステート式
など、多種多様な製品が世に出ています。
LiDARメーカーOUSTER社HPより
3DLiDARは様々な用途が期待されています。
本記事のタイトルにもある通り、最も期待されている分野は自動運転だと思います。
自動運転やADAS(先進運転支援システム)に使用されるセンサは様々ありますが、中遠距離において、高解像度で環境を把握できるセンサがLiDARのみであるためです。
LiDARを搭載したwaymoの自動運転車両
https://waymo.com/
自動車以外の農業機械や自動搬送台車などの産業機械ではすでに完全自動運転が一部実現しており、これらの多くにもLiDARは使用されています。
また、スポーツ選手の動きをセンシングして、AIが採点を可能にするような用途、
https://sports-topics.jp.fujitsu.com/sports_digital_solution/gymnastics-scoring-support/
警備ロボット
https://www.seqsense.com
人流の計測
https://solution.tsuzuki-techno.com/3d-lidar-people-counter/
など、様々な用途が提案されています。
LiDARの課題
LiDARの弱点として天候などの変化に弱いということがあります。
雨や雪、霧からレーザ光が反射されてしまったり、吸収されてしまったりしするため、状況が把握できなくなります。
対策の1つとして、マルチエコーといって、一つのレーザ光で複数回の反射を観測する技術があります。
雨や霧によってレーザ光は反射されてしまいますが、一部のレーザ光は透過しますので、透過した分が対象物に当たり跳ね返ってきたものを観測します。
最初に帰ってきた反射光をファーストエコー、次をセカンドエコー、サードエコー・・・最後をラストエコーという風に呼びます。
ラストエコーのみを見れば、ある程度雨や霧の影響を除くことができます。
https://www.hokuyo-aut.co.jp/products/data.php?id=238
また、ほかのセンサと比べると値段が高いのもネックの一つです。
まとめ
本記事では自動運転技術で注目されるセンサであるLIDARの原理・特徴・使用例について解説しました。
今後の、LIDAR自体の進化や活用例の拡大、より高度な活用方法が期待されます。