こちらの記事は、Ryan M. Raiker 氏により2020年01月に公開された『 Top 10 Technology Trends for 2020 』の和訳です。
本記事は原著者から許可を得た上で記事を公開しています。
宇宙家族ジェットソンのような1960年代のテレビ番組は、21世紀は空飛ぶ車でいっぱいになり、空中ロボットは私たちの日常生活の一部になると予測していました。
2015年10月21日は、バック・トゥ・ザ・フューチャー2(タイムトラベルを扱った名作映画の続編)でマーティマクフライ(マイケル J. フォックス)がタイムトラベルをする未来の日付でした。
マーティが見た未来は、当時の数百万人の想像力をかきたてるものでした。
それは、現在私達が住んでいる世界とは異なります。
ライブストリーミング、スマートフォン、ソーシャルネットワークに支配され、空飛ぶ車もホバーボードもありません。( ホバーボードはあるかもしれませんが、それは本当にホバーボードと言えるでしょうか?)
この10年という短い間に、もしかするとそれよりも短い間に、Uber、Lyft、DoorDash、AirBnBなどのサービスアプリが何百万人ものユーザーを生み出し、今では、ほぼすべての人がスマートフォンにインストールしています。また、SiriやAlexaなどのパーソナルアシスタントが私たちの生活の多くに入ってきました。
過去10年間、世界は変わっていないと言うとしたら、誰が言ったとしてもひどく世間知らずに聞こえるでしょう。この技術の成長と変化は、今後10年以上にわたって続くと思われます。
またそれは、2020年代の赤ちゃんの泣きわめく声なのです!新しいミレニアムである2000年代が始まる頃、情報技術に関する2000年問題がとても懸念されていました…「オーノー、3つのゼロとクロック達よ!」2000年に時計が12を打ったとき、iPhone、Twitter、Facebook、4K、5G、および今日私たちが知っている他の楽しいものは存在しませんでした。
それでは、新しい10年が始まると、何が起こるのでしょうか?2020年のテクノロジートレンドに対応するために、どのスキルを習得する必要があるかもっと興味がありますか?2020年は、世の中の状況を大きく変えるようなテクノロジートレンドが想像されます。これらのトレンドは、私たちが受け入れる(または既に受け入れている)ものです。
いくつかのものはすでに存在し、近代的な企業で一般的に見られますが、他の新しいテクノロジーは、私たちの生活、仕事、交流の方法を劇的に変える「重要な摘み取るべきもの」です。
私たちの知る愛するモダンなテクノロジーが、新しいユースケースやさらに新しいアプリケーションと共に進化するにつれ、新たな利益と新しい機会が見えてきます。
本記事の2020年のテクノロジートレンドTOP10は、2019年10月のGartner IT Symposium / Xpoで発表されたものです。
Gartnerは、2020年の主要な戦略的技術トレンドは、ヒューマンセントリックとスマートスペースの2つの主要分野だと予測しています。
ハイパーオートメーション
ハイパーオートメーションは、タスクの自動化を次のレベルに引き上げます。これは、人工知能(AI)や機械学習(ML)などの高度な技術を適用して、従来の自動化能力よりもはるかにインパクトのある方法でプロセス(タスクだけでなく)を自動化します。
また、それは、機械学習、パッケージ化されたソフトウェア、自動化ツールの組み合わせを用います。ハイパーオートメーションには、人間が従事しているタスクの自動化をサポートするツールの組み合わせが必要です。
このトレンドは、ロボットプロセスオートメーション(RPA)で始まりましたが、プロセスインテリジェンス、コンテンツインテリジェンス、AI、OCR、およびその他の革新的な技術の組み合わせにより成長するでしょう。
マルチエクスペリエンス
マルチエクスペリエンスは、現在の2次元のスクリーンとキーボードを用いたインターフェースから、よりダイナミックでマルチモーダルなインターフェースの世界へ、大規模な移行を扱います。その新しい世界において、私達は自分たちを取り巻くインタラクティブな技術に没頭できるのです。
マルチエクスペリエンスは現在、拡張現実、仮想現実、複合現実、マルチチャネルヒューマンマシンインターフェイス、およびセンシング技術を使用した没入型体験に焦点を当てています。
AI対応の会話型プラットフォームは、人々がデジタル世界と対話する方法を変えました。また、会話を超えて、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)は、人々がデジタル世界を認識する方法を変えています。この知覚と相互作用を組み合わされた変化は、将来のマルチセンサーかつマルチモーダルな経験をもたらすでしょう。
次の10年間で、この傾向はアンビエントエクスペリエンス(取り囲む経験)として知られるようになるでしょう。
技術の民主化
技術の民主化とは、多くの人々がテクノロジーに急速にアクセスしやすくなっていくプロセスを指します。技術の民主化とは、大規模または高価な研修なしで、技術やビジネスの専門知識に簡単にアクセスできるようにすることです。これは、市民開発者の台頭によりすでに広く認識されています。
歴史的には、自動化はITによって管理および展開されていましたが、デジタルワーカーの出現に伴ってロボットプロセスオートメーションが出現し、状況が変化しました。
現在、新世代の市民開発者が登場しています。ビジネスの課題により近いビジネスアナリストなどが、自分たちの仕事を支援するために、デジタルワーカーをプログラムおよび自動化しています。このトレンドは、4つの重要な分野に焦点を当てています。
アプリケーション開発、データと分析、デザイン、そして知識です。
Gartnerによれば、これらは「ML (Machine Learning)モデル開発の実質的障壁に対処するのに役立つ、統合的なトレーニングデータを生成する」ためにデザインされたツールかもしれません。
新しい技術と改善されたユーザーエクスペリエンスは、技術産業以外の人々が技術製品やサービスにアクセスして使用できるようにします。
人間拡張(Human Augmentation)
人間拡張は、認知的および身体的改善を提供するために、テクノロジーを人間の経験の不可欠な部分としてどのように使用できるか探ります。この拡張技術は、テクノロジーを活用して、人間の能力を物理的にも認知的にも向上させています。
ボストンダイナミクスなどの企業は、すでに工場や戦場で使用できる多種多様な人間拡張装置を開発しています。私達はすでにスマートデバイスとウェアラブルデバイスの急増を見てきました。
新しい人間拡張の適用先には、これらのウェアラブルデバイスを使用して、鉱山業の労働者の安全性を向上させることが含まれます。小売や旅行などの他の業界では、ウェアラブルを使用して、労働者の生産性を高め、人間の能力を高めることができます。
透明性とトレーサビリティ(追跡可能性)
個人情報が貴重であることに次第に気づいている消費者は、規制を要求しています。多くの人は、個人データの保護・管理のリスクが高まっていることを認識しています。
それ以上に、政府は個人データの保護と管理を確実にするために厳しい法律を制定しています。透明性とトレーサビリティは、これらのデジタル倫理とプライバシーのニーズをサポートする重要な要素です。
今後数年間で、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)に類似したより多くの法律が世界中で制定されそうです。多くの組織がAIを展開し、機械学習を活用して人間の代わりに意思決定を行うに従って、このことはさらなる懸念材料となります。説明可能なAIとAIガバナンスの必要性が高まっています。
この傾向により、信頼性の重要な要素である整合性、オープン性、説明責任、能力、一貫性に焦点を合わせることが必要となります。
エンパワードエッジ
エッジコンピューティングとはコンピューティングトポロジのことであり、情報処理、コンテンツの収集、配信が、情報源、リポジトリ、顧客の近くに配置されることを指します。これにより、通信の遅延時間を短縮でき、これらのエッジデバイス上である程度の自律性を実現できます。
エッジコンピューティングは、IoTシステムが組み込みIoTの世界に、切断時の動作や分散配置時の動作を提供する必要性から生まれました。Gartnerのブライアン・バークによると、「エッジコンピューティングは、事実上すべての業界およびすべてのユースケースで支配的な要因になり、ますます洗練され専門性に特化したコンピューティングリソースとより多くのデータストレージにより強化されるでしょう。ロボット、ドローン、自動運転車、運用システムなどの複雑なエッジデバイスが、この移行を加速させます。」
そして、スマートスペースの基盤としてのデバイスの役割が拡張され、主要なアプリケーションやサービスが、それらを使用する人々やデバイスにとって身近になっていくでしょう。
分散クラウド
分散クラウドは、どのようにクラウドがシフトしていくかを表しています。ほとんどの人は、クラウドは場所に依存しないと考えています。クラウドはただここではないどこかにあると考えているのです。
しかし現在、分散クラウドでは、これらのデータセンターが置かれている物理的な場所がますます重要になっています。規制の問題、遅延の問題、およびこれらの問題に対処することが、はるかに重要になっています。
クラウドは現在、その領域を拡大し、分散クラウドになってきました。これにより、パブリッククラウドサービスがさまざまな場所に配置され、元のパブリッククラウドプロバイダーがサービスの運用、ガバナンス、更新、および発展に対して責任をおうと想定されています。
これは、ほとんどのパブリッククラウドサービスの集中型モデルからの大きな変化を表しており、クラウドコンピューティングの新しい時代につながります。
“より”自律的なもの
Autonomous Thingsは、人工知能を使用して、今まで人間が実行していた機能を自動化する物理デバイスです。Autonomous Thingsの最も認識可能な現在の形態は、ロボット、ドローン、自動運転車、および電気機器です。
これらの自動化は、厳格なプログラミングモデルによって提供される自動化を超えており、AIを活用して、環境や人々とより自然に対話する高度な動作を提供します。
テクノロジーの能力が向上し、規制が許可され、社会的受容性が高まるにつれて、制御されていない公共スペースでAutonomous Thingsがより展開されていくでしょう。
暗号通貨と実用的なブロックチェーン
ここでは「実用的なブロックチェーン」を認識することが重要です。ブロックチェーンは数年前から存在していましたが、技術的な問題と技術の管理上の問題のために商業的に展開されるのには時間がかかっています。
ブロックチェーンは、信頼を可能にし、透明性を提供し、ビジネスエコシステムにおいて価値交換を可能にし、潜在的にコストを削減し、トランザクションの決済時間を短縮し、キャッシュフローと資材の移動を改善することにより、産業を再構築する可能性を秘めています。
Gartnerのレポートでは、ブロックチェーンが潜在的に持つ可能性のあるもう1つの分野は、アイデンティティ管理であると指摘しています。スマートコントラクトは、ブロックチェーン上でイベントがアクションを引き起こすようにプログラムできます。たとえば、商品の受領時に支払いが実施されます。
しかし、Gartnerのブライアン・バーク氏は、拡張性や相互運用性の低さなど、ある範囲の技術的な問題により、ブロックチェーンはエンタープライズ展開には未熟のままだと述べています。
「これらの課題にもかかわらず、この破壊性と収益創出性を持つ大きな可能性は、近い将来にブロックチェーン技術のアグレッシブな採用を見込んでいなくても、ブロックチェーンの評価を開始すべきだということを意味します」と彼は言います。
AIやIoTなどの補完的なテクノロジーの統合が開始されると、ブロックチェーンはエンタープライズ分野で大きな成長を遂げるでしょう。
AIセキュリティ
ハイパーオートメーションなどの進化するテクノロジーは、ビジネスの世界で真のデジタルトランスフォーメーションがどのように変化しているかをすでに示しています。ただし、これらのテクノロジーは、潜在的な新しい攻撃ポイントを通じてセキュリティの脆弱性も生み出します。
将来のAIセキュリティには、3つの重要な視点があります。
1)AI駆動システム、保護されたAIトレーニングデータ、トレーニングされたパイプラインと機械学習モデルの保護。
2)セキュリティ防御を強化し、機械学習を利用してパターンを理解し、攻撃を発見し、サイバーセキュリティプロセスの一部を自動化するためのAI活用。
3)攻撃者によるAIのネガティブな使用の予測—これらの攻撃を特定し、それらに対して防御します。
2020年は、企業のリーダーにとって大きな機会と大きな課題が見込まれます。変化を受け入れ、新しいテクノロジーとトレンドを採用することで、あなたの組織が市場での競争力を維持することを保証するのだということを常に忘れないでください。それについて間違いを犯さないでください。
変化に抵抗することはあなたの会社を後退させます。真のデジタルトランスフォーメーションに注力する人々は、ビジネスを成長させます。未来を形作るこれらのトレンドを実行することに飛び込む勇気はありますか?
Gartnerの完全なレポートである2020年の戦略的技術動向は、ここからダウンロードできます(登録が必要です)。
翻訳協力
Original Author: Ryan M. Raiker
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選定担当:yumika tomita
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