Content Servicesとは何か?
ECM(Enterprise Content Management)の概念を包含する、コンテンツを作成、共有、保管、廃棄などのドキュメントライフサイクルを通じて必要な機能を提供するサービス。ECMの初期コンセプトとして、企業の情報の一元管理という側面が大きかったが、Content Servicesではコンテンツが分散していることは問題ではなく、ユーザ、もしくはアプリケーションが必要な時にそれらを呼び出して利用できるようにするというのがコンセプトという理解。
Content Servicesの歴史
Wikipediaや企業のWebページの情報からまとめた年表。主要なプレーヤーを含めています。さらに、個人的な解釈による大胆な考察として、Content Servicesの歴史を4つのフェーズに分けてみた。
以下はそれぞれフェーズのと移り変わりについて:
黎明期 (1980年後半~1990年前半)
1980年代後半から1990年代初頭にかけて、商用データベースがIngres、Oracle、Sybaseなどの企業によって実用化。この時にSQLが一般的なデータベース言語として広まる。データベースは数値データなどの構造化データを管理するためのものでしたが、非構造化データ(例えば、文書、画像、音声)の管理についても着目し始めた。
Documentum、Hyland、OpenTextなどが起業し、後のECM市場が形成されることに。これらの企業は、バージョン管理、ワークフロー、セキュリティ機能などを含むドキュメント管理の機能を提供した。最初はライフサイエンスや製造業などの業界では、こうした文書管理ソリューションが成功を納め、DocumentumはFDA、Boeingなどの大手企業からの支持を得た。以降、ECMの導入によって、企業は情報をより効率的かつ正確に管理できるようになり、ビジネスプロセスの改善と効率化に繋がるものとされてきた。
Webと企業ポータルの普及(1990年前半~2000年前半)
Windows 95のリリースとインターネットによって、パソコンが一般家庭にも普及した。その後、Yahoo!やGoogleなどのインターネットポータルが登場し、インターネット利用が更に広がった。同時期に、企業では散らばった情報を集約する企業ポータルの需要が高まり、Plumtreeをはじめとする企業が出てきた。また企業がWebを利用してECや企業サイトを管理するというニーズも出てきて、FatwireやVignetteなどのWCM (Web Conntent Management)のソリューションも出てきた。インターネットの爆発的な普及が文書管理からこうしたポータルやWCM、コラボレーションに派生し、さまざまなプレーヤーが出てきてECMの市場はさらに拡大していくことになる。2001年には、MicrosoftがSharePointの最初のバージョンをリリース。
クラウドとECMの進化(2000年後半~2010年前半)
発展してきたECMもこのあたりで市場の勢いがなくなってきた。業務に合わせるにはカスタマイズが必要で、ECMの導入には巨額の費用と時間がかかることが多く、企業の導入の優先度も翳りが出てきていた。それでも、情報のデジタル化が進むにつれて、取り扱うコンテンツも飛躍的に増大しているために、ECMが必要とされる業界・企業は多かった(今も、もちろん)。
この頃、ECMとBPM(ビジネスプロセス管理)が統合され、プロセスドリブンなコンテンツ管理が注目され始めた(その前にも実際にはあったが、考え方がそれほど固まってなかった?売り物がほかにもあったというのも理由かもしれない)。また、これまでコーディングによって実装されていたECMがコンフィグレーション(設定)によって構築できるようになり、より柔軟なカスタマイズが低コストで可能になってきた。
同時期に、クラウド技術が登場、2006年にAmazon Web Services(AWS)がサービスを開始し、オンプレミスからクラウドへの移行が進む。アプリケーションの提供形態もオンプレミスからクラウドサービスに移行。ECMもハイブリッド環境が登場し、オンプレミスとクラウドを柔軟に組み合わせられるようになった。
さらに、モバイルアプリケーションの普及に伴い、ECMもモバイルに対応する必要性が出てきた。そして、ビッグデータやNoSQLといった新しい技術が登場し、これまで以上に多くの情報を扱うことが可能に。
そういった最中、大企業によるECMベンダーの買収・統合も進み、業界は大きな変化を迎える。SharePointはFast Searchを買収し、情報の検索機能を強化し始めた。IBMはFileNetを買収、OracleもBEA、Fatwireを買収、OpenTextはHummingbirdやVignetteを買収。市場の淘汰はこれだけでは収まらなかった。
ECMの終焉とContent Services(2010年後半~)
2017年、GartnerはECM(Enterprise Content Management)の終焉を発表し、代わってContent Servicesという考え方を提唱。スイート製品による導入コストの高さや、分散した、膨大なデータを、異なる利害がある部署、ユーザ間全てを管理する難しさなど、適応性の低さなど、以前からECMが抱えていた問題、この製品カテゴリでの切り口での導入の難しさが頂点に。Content Servicesは、コンテンツをベースとした業務プロセスを実現するための考え方であり、様々なエンタープライズアプリケーションとの統合を促進する。アプリケーションはRestfulなAPIを介して互いに接続できるようになり、機能の分化が進み、マイクロサービスの考え方が普及してきたのも背景にある。
さらにBoxやDropboxなどのクラウドストレージサービスの登場は、従来のコアなECM製品が持つ設定・導入の複雑さを排除し、社内・社外の情報共有が容易に行うことができ、日本の企業には大きく受け入れられている。
一方で、企業のOffice 365の浸透で、Content ServicesベンダーはOfficeのオンライン編集機能や、コラボレーション機能など、Microsoft製品との連携も無視できない状態。これは今後のトレンドとしても続いていくであろう。
今、AIが脚光を浴びているが、Content Servicesに与える影響はかなり大きいものと推察される。今月開催されるAIIM Conferenceでもトピックとして取り上げられるそうなので、注目したいところです。