概要
MOSFET全くわからなかった筆者が, 赤外線LED駆動回路を作るために, MOSFETについて学んだことと参考にしたページをメモ.
理解の誤りなどありましたらご指摘ください.
本記事の対象者
- MOSFETの回路図記号がいろいろあってよくわからん
- PチャネルとNチャネルの見分け方わからん
- そもそもPとNの違いがわからん
- MOSFETの回路図記号みてもどっちがソースかわからん
- PチャネルとNチャネルの見分け方わからん
- MOSFETで赤外線LED光らせたい
- 流れる電流値とかの計算の仕方がわからん
- トランジスタの違いがわからん
基本
- NチャネルMOSFETと, PチャネルMOSFETの2種類
- 端子は3つ
- Gate(G)
- Source(S)
- Drain(D)
- Gateの電圧を変えると, SourceとDrainの間に流れる電流が流れたり流れなくなったりする.
- Gate電圧がHigh: SourceとDrain間に電流が流れる
- Gate電圧がLow: SourceとDrain間に電流が流れない
なんでMOSFET使う?
- なんでMOSFET使うかというと, マイコンのGPIOに直接つなぐよりも大きな電流を流せるから.
- GPIOから流せる電流はせいぜい数10mAだが, 例えばGPIOをGateにつなぎ, Drainを5V電源端子, SourceをLEDとGNDにつないで, GPIOのon/offでDrainからSourceに向かって流れる電流をon/offすれば, 電源端子から供給できる電流はもっと大きいので, GPIOのon/offに応じてLEDに大きな電流を流すことができます.
まず回路図の記法から
- MOSFETを表す記法はたくさんあって, それでまず混乱します.
- MOSFETと電力用MOSFETの解説ページが非常に参考になりました.
- NとPの見分け方は
- Nチャネルは, Source端子の矢印が外側向き, または真ん中の矢印が内側向き
- Pチャネルは, Source端子の矢印が内側向き, または真ん中の矢印が外側向き
- Source端子に矢印が流れ出すのがN型
トランジスタとの違い
- トランジスタもMOSFETとスイッチング用途で使えるけど別の素子.
-
こちらの記事が非常にわかりやすい.
- MOSFETはGate端子の電圧で制御, トランジスタは電流で制御する
- MOSFETはGate端子に定常状態では電流が流れ込まない. (GateがHighからLowなど切り替わったタイミングでしか電流が流れない).
- そもそもトランジスタはMOSFETと端子の名前が違う. 端子がBase, Emitter, Collector.
挙動
- こちらの記事が非常にわかりやすい
- 前述のように, MOSFETはSの電位によってG-D間に電流が流れるかどうかスイッチできます.
- 例えば
- Sの電圧が5VならG-D間に電流が10mA流れ
- Sが0VならG-D間の電流は0mAみたいな.
- P型とN型の違いは
- N型は, Gの電圧が高い時にD -> S方向に電流が流れ, Gの電圧が低い時に電流が流れない
- P型は, Gの電圧が低い時にS -> D方向に電流が流れ, Gの電圧が高い時に電流が流れない
- 素子の種類によってはSとDは構造的に対称で, どっちの端子がSourceでどっちがdrainなのかは, 両者の電位の関係によって決まる.
- N型なら, 電位の高い方がD, 低い方がS.
- N型は, Gの電圧が高い時にD(電位高)->S(電位低)方向に電流が流れ, Gの電圧が低い時に電流が流れない
- P型なら, 電位の高い方がS, 低い方がD.
- P型は, Gの電圧が低い時にS(電位高)->D(電位低)方向に電流が流れ, Gの電圧が高い時に電流が流れない
- SとDは構造的に対称なので, 便宜的にP型なら電位が高い方をSと呼ぶ, 低い方をDと呼ぶみたいに呼び名を決めてるだけです.
- N型なら, 電位の高い方がD, 低い方がS.
- P型とN型の電流が流れるかどうかは, 一般化してこう書くこともできます
- G-Sの電位差が大きい時にD-S間の抵抗が小さくなり, G-S間の電位差が小さい時にD-S間の抵抗が大きくなる
- G-S間の電圧をゲート-ソース間電圧V_gsと呼びます
- D-S間の電流をドレーン電流I_dと呼びます
定量的な話
- 登場人物
- Id: ドレーン電流. つまりドレーン-ソース間電流. この電流に直列にLEDをつないだりして, 電流を流したり流さなかったりしたい.
- Vgs: ゲート-ソース間電圧. これをHIGHにしたりLOWにしたりすることで, ドレーン電流を流したりながさなかったりできる
- Vds: ドレーン-ソース間電圧. ドレーン電流がドレーンソース間に流れる場合に, その大きさを決める要因になる
- どのくらいのドレーン電流が流れるの?
- Vgsがある一定の値より大きいと, Id(ドレーン電流)が発生します.
- Idの大きさはVgsの大きさに対して単調に増加するものの比例ではなく非線形な関係です.
- じゃあVsdとIdの関係はどうなるの?
- Vsdが小さい範囲では, IdはVsdにもおよそ比例する(このVsdの範囲を線形領域という)
- Vsdがある程度以上に大きい範囲では, Idに対してVsdはほぼ一定(このVsdの範囲を飽和領域という)
- 飽和領域で使う場合, 以下の手順で計算
- Vgsが決まるとIdが決まる
- Idが決まると回路に流れる電流値が分かり, 結果MOSFETのSとD間にかかる電位Vsdも自動的に決まる
- 飽和領域だとすると, 一定のIdに対してとりうるVsdの幅が大きいので, 自動的に決まるVsdが許容される
LED増幅回路の例
こちらのページのMOSFETを使った赤外線LED駆動回路を参考にさせていただきました. こちらの回路について自分が理解したことを説明します.
- 2段階のMOSFET
- このページの回路では2種類のMOSFETが使われています. リンクは秋月のデータシートのページです
- 2N7000: N型MOSFET
- IRFU9024NPBF: P型MOSFET
- 両方ともSとDが対称ではなく元から区別されているタイプの素子です
- このページの回路では2種類のMOSFETが使われています. リンクは秋月のデータシートのページです
- MOSFET1段目
- 2N7000はN型なのでGPIOがHighでIdが高電圧から低電圧に流れ, Lowで流れなくなります
- ドレーン電流が流れるとR1に電位差が生じて, P型MOSFETのGateの電位はほぼ0Vです
- ドレーン電流が流れないとR1に電位差が生じないので, P型MOSFETのGateの電位はほぼ5Vです
- MOSFET2段目
- P型なので回路図の電位が高い方(上)がSource, 電位が低い方(下)がDrain, 左がGateです.
- Sourceの電圧は5Vで, GateとSourceの電位差が0Vだとドレーン電流は流れません
- GPIOがHighだとp型MOSFETのGateはLowになるのでドレーン電流が流れ, LEDにも電流が流れます
- GPIOがLowだとp型MOSFETのGateはHighになるのでVsgが小さくなりドレーン電流は流れません
- 流れる電流の大きさは?
- こちらのページでは電流の上限値を見積もっています.
- 前提:近似的に, Idの大きさにかかわらずp型MOSFETでの電位差はなく(Vds=0), LEDもIdの大きさにかかわらず定格の1.35Vの電位差が生じるとする
- 27ohm抵抗にかかる電位差は3.65Vとなり, 電流値はおよそ135mA. これがLEDに流れる電流値の上限になります
- 実際にはIdはVdsの大きさと関連して決まる.
- Vsgが4.5V, Vdsがもし飽和領域にあるとすれば, データシートからIdは1Aとなります.
- しかしその場合電流は1A流れてしまうことになり, 抵抗R2での電位差が27V生じることになりおかしいことがわかります
- 実際に流れる電流はそれよりも小さく, そのためVdsは飽和領域ではなく, 線形領域にあることになります. VdsとIdは比例することになります.
- 流れる電流をだいたい100mAとみてVdsを調べるとデータシートよりVdsはおよそ0.15Vとなります.
- そのとき27ohmの抵抗にかかる電位差は3.5Vになるので電流値はおよそ130mAになります
- こちらのページでは電流の上限値を見積もっています.
参考ページ
- MOSFETの回路図記号
- MOSFETとトランジスタの違い
- 赤外線LEDドライブ回路
- MOSFETの挙動と電流値の計算方法