みんな大好きカオスエンジニアリング。
令和5年度の情報処理安全確保支援士の午前2で出ました。一生忘れられません。
カオスエンジニアリングとは
カオスエンジニアリングは、大規模な分散システムの耐障害性を評価し、向上させるための実践的な手法です。このアプローチでは、システムの安定性と信頼性を意図的にテストするために、プロダクション環境で予期せぬ状態や障害を模倣します。カオスエンジニアリングの目的は、システムが予期せぬ問題にどのように反応するかを理解し、その結果を基にシステムの弱点を特定して修正することにあります。これにより、システムの全体的な耐障害性が向上します。
メリット
- システムの弱点の特定
カオスエンジニアリングによって、システムやアプリケーションの隠れた弱点や脆弱性を発見し、修正することができます。これにより、未知の問題が実際の障害となる前に、予防的な措置を講じることが可能になります。 - 耐障害性の向上
実際の障害を模倣することで、システムが実際の障害状況にどのように対応するかを理解し、耐障害性を向上させることができます。これにより、システムが障害に対してより強固になり、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。 - 信頼性と可用性の向上
システムの弱点を特定し、修正することで、システムの全体的な信頼性と可用性が向上します。これは、ユーザー体験の向上に直結し、ビジネスの継続性を支える要因となります。 - インシデント対応の強化
カオスエンジニアリングは、インシデント発生時の対応プロセスをテストし、強化する機会を提供します。これにより、チームは実際の障害発生時に迅速かつ効果的に対応できるようになります。 - チームのスキル向上
カオスエンジニアリングのプロセスを通じて、チームメンバーはシステムの深い理解を得ることができます。また、障害対応のスキルを向上させ、チームワークを強化することができます。
歴史
カオスエンジニアリングの概念は、2010年代初頭にNetflixで形成され始めました。当時、Netflixは自社のサービスの信頼性を高めるために、プロダクション環境で意図的に障害を発生させる実験を開始しました。このアプローチの目的は、システムが潜在的な障害に対してどのように反応するかを理解し、その耐障害性を向上させることでした。
カオスエンジニアリングの基本原則
- システムの複雑性理解:分散システムは非常に複雑であり、その振る舞いは予測が難しいことがあります。カオスエンジニアリングは、この複雑性を実際に体験し、理解するための方法を提供します。
- 障害を前提:障害は避けられないものとして前提し、それに対処するための準備を常にしておく必要があります。カオスエンジニアリングは、障害が発生したときのシステムの振る舞いをテストし、改善するための実践です。
- 実際の環境でのテスト:システムの真の耐障害性を理解するためには、実際のプロダクション環境でテストを行うことが重要です。これにより、理論上ではなく実際の負荷やデータに基づいた結果を得ることができます。
- 小さな実験から始める:大規模な障害を一度に導入するのではなく、小さな実験から始めて徐々に範囲を広げていくことが推奨されます。これにより、リスクを最小限に抑えつつ、システムの弱点を段階的に特定し、修正することができます。
実践方法
- 目標の定義
システムの耐障害性を向上させる具体的な目標を設定します。これは、特定のサービスの可用性を高める、レスポンスタイムを改善するなど、具体的な目標であるべきです。 - 基準の設定
正常時のシステムパフォーマンスの基準を設定します。これには、通常のトラフィックパターン、応答時間、エラーレートなどが含まれます。 - 仮説の立案
システムに特定の障害が発生した場合の挙動についての仮説を立てます。この段階では、「このサービスがダウンした場合、システムはリクエストを別のサービスに自動的にリダイレクトするはずだ」といった具体的な予測を行います。 - 実験の設計
小規模から始め、影響を最小限に抑える実験を設計します。例えば、非ピーク時間にトラフィックの一部に対してのみ障害を導入するなどの方法があります。 - 実験の実施
計画した実験を実施し、システムの反応を観察します。実験は、モニタリングツールを使用して細かく観察されるべきです。 - 結果の分析と学習
実験の結果を分析し、仮説が正しかったかどうか、システムが期待通りに振る舞ったかを評価します。問題点や改善の余地が見つかった場合は、これを学習の機会とします。 - 改善策の実施
実験から得られた知見をもとに、システムの修正や改善を行います。これには、コードの変更、インフラの再構成、新たな監視ツールの導入などが含まれます。