#プレゼンテーション道場#1〜StoryTelling〜
プレゼンテーション道場、師範のあっちゃんです!
皆さんは**"Story Telling"**という言葉を聞いたことあるでしょうか?
今回はプレゼンにおける効果的な伝え方の手法の一つ、StoryTellingについて解説していきます。
##0. "Story Telling"とは?
コトバンクには以下のような説明が書かれています。
「ストーリーテリング」とは、伝えたい思いやコンセプトを、それを想起させる印象的な体験談やエピソードなどの“物語”を引用することによって、聞き手に強く印象付ける手法のことです。
この手法は古代から物事を伝える時によく使われてきました。
世界遺産などにある壁画が物語のように描かれているのもこの手法の一種だと思います。
プレゼンテーションというのはStory Tellingそのものであるということを理解しましょう。
##1. "物語"とは?
まずは"物語"というものをしっかりと理解しましょう。
"物語"とは以下の化学反応式のことを指します。
(変化前の人) + (もの・こと) → (変化後の人)
例えば、
おばあさんが、携帯を買って、いつでもどこでも娘に電話できるようになりました。
という感じですね。
この化学反応式を作ることが、"物語"を作るということです。
すると、決めなければいけないことは明確ですね。以下の3点だけです。
- (変化前の人):登場人物(ユーザー)→課題
- (もの・こと):アプリ、ゲーム、webサービスなどで得られる経験
- (変化後の人):登場人物(ユーザー)→課題解決後の姿
この3点を決めた時に考えなければならないことは何でしょうか?
これはある法則で示すことができます。
化学反応式を考える上でも、必ず忘れてはいけない法則がありましたね。
昔に勉強した化学の教科書を引っ張り出して、思い出してみましょう!
それは、質量保存の法則です。
質量保存の法則とは、「化学反応の前と後で物質の総質量は変化しない」とする化学の法則のことである
化学反応式が成立するということは、質量保存の法則が成立しているということです。
この質量保存の法則が成立している化学反応式には納得感があります。
"物語"における化学反応式も同じです。
(もの・こと) = (変化後の人) - (変化前の人)
が成立していなければならないということです。
例えば、
おばあさんは、携帯を買って、様々な情報を入手できるようになりました。
という
(携帯を買う) ≠ (様々な情報を入手できる)
というように等式が成立していないため、物語として成立していません。
物語を作っていくなかで、自分の作ったサービスが上の法則をしっかりと満たしているかどうかを何万回と確認しながら進めていきましょう。
以上のことを念頭において、"物語"を作っていきましょう!
##2.(変化前の人)を定義する
はじめに、1点目の(変化前の人)を定義することが重要です。
ここはプレゼンにおける導入部分であり、ここの設定次第で聞き手の興味・関心が変化します。
導入部分におけるゴールは聞き手の興味を引くことです。
このゴールを意識しながら、導入部分を作成してみましょう。
まずは聞き手の興味というのは何によって構成されているでしょうか?
自分は以下の方程式で表せると思っています。
"興味の大きさ" = 「具体性」✖️「重要性」
つまり、聞き手の興味を引くには
- 想像ができること
- 深刻であること
が大切です。
###2-1. 「想像ができる」とは?
1つ目から考えていきましょう。
「想像ができる」というのは、
「話者が想定している登場人物」=「聞き手が考えた登場人物」
という状態を指します。
そして、「想像ができる」ためには、(変化前の人)は具体的でなくてはなりません。
まずは、以下の例を見てみましょう。
- 日本語を話せない人
- 東南アジアから日本に留学しに来たばかりで、日本語を流暢に話せない大学生
下の方が具体的であり、想像
上のように定義をすると、
①西洋に住んでいる人を思い浮かべた人
②言語障害をもっていて話すことのできない日本人を思い浮かべた人
③自分の身の回りにいる留学生を思い浮かべた人
など、聞き手によって思い浮かべる人が異なってしまいます。
また、そういった人たちの目指している理想像も異なるでしょう。
上の例で言えば、
①日本語のアニメが見れるようになりたい
②話す以外で日本語の会話ができるようになりたい
③日本人の友達と会話ができるようになりたい
というような感じです。
この時点で、①〜③は"物語"が全く異なることがわかります。
このようにならないためにも
プレゼンの導入部分で意識しなければならないことは
「話者が想定している登場人物」と「聞き手が考えた登場人物」を一致させるということです。
そして、そのために具体性が重要であるということです。
###2-2. 「深刻である」とは?
では、2つ目の深刻であるとはどういうことでしょうか?
深刻さは以下の方程式で表せます。
(深刻さ) = (程度) ✖︎ (規模)
この方程式をわかりやすく理解するために、以下のような子どもを想定してみます。
(1) 10日間、全く食事をしていない子ども
(2) 1日3食きちんと食べたが、もっと食べたいと感じている子ども
上の例は、どちらも「何かを食べたい」ということに関しては同じですが、(1)の子どもの方が(2)の子どもよりも深刻であるように思われます。
つまり、(1)の子どもと(2)の子どもが隣同士でいたときに(1)の子どもに手を差し伸べたくなるということです。
しかし、マクロで考えたときに、規模ということを考えなくてはなりません。
-世界で(1)の子どもは5人いる。
-世界で(2)の子どもは1億人いる。
としたときに、「1億人が困っている」という状態の方がより深刻であるように感じます。
このように、プレゼンの導入部分によって
聞き手に、話者は重要な話をしようとしているという気持ちにさせることが大切です。
##3. (変化後の人)を定義する
(変化前の人)を定義した後は(変化後の人)について考えます。
一般には、「目標」とされるものです。
(変化後の人)は**(変化前の人)がもつある課題を解決した姿**です。
つまり、目標ありきでstoryを構成するのではなく、あくまでも(変化前の人)ありきで考えることが大事だとわかります。
##4. (もの・こと)を正しく伝える
アプリ、ゲーム、webサービスなどで得られる経験をしっかりと説明しましょう。
では、上記で書いた**"経験"**とはどういうものを指すのでしょうか?考えてみましょう!
Story Tellingにおいて、以下のような方程式が成立すると述べました。
(もの・こと) = (変化後の人) - (変化前の人)
この経験によって変化前後の差が生まれていないと上の方程式が成立しなくなってしまいます。
つまり、ここで述べなければない"経験"とは、変化前から変化後までの過程のことだとわかります。
これをもう少しわかりやすく説明しましょう。
スタディサプリというアプリを例にあげてみます。
(変化前の人)=経済的な理由で学校に行けない高校生
(変化後の人)=学校に行くことなく、難関大学に合格する。
この時、
(もの・こと)は、サービスを通じて経済的な負担がなく、難関大学に合格するという経験というわけです。
「経済的な負担がない」という部分は
①ユーザー課金額が他サービス(オフライン塾や他のオンライン教育サービス)と比べて低いということが証明できれば良さそうです。
では、「難関大学に合格する」という部分は何を示せば良いでしょうか?
多くのことが考えられますが、大きく2つに分けてみましょう。
②量:難関大学の合格実績のある塾と同等の教材がある。
③質:難関大学に多数輩出している予備校講師が授業をしてくれる。
この2つを証明することができれば、「難関大学に合格する」ということが証明できそうです。
この具体例を踏まえて、以下の図をみてください。
まずは、変化前後の差をしっかりと定義、証明します。
難関大学を合格するにあたって、経済的な負担があることと最適な教育教材がないことを言います。
その上で、スタディサプリがその差を超えられることを説明します。
①月額980円で他サービスと比べて圧倒的な低価格
②100以上の動画教材を見ることができる。
③実績のある超有名講師が教えてくれる。
(※例にあげただけなので、実際のスタディサプリの情報とは異なる点があります。)
という3点でその差をスタディサプリが超えられることを示しています。
ここでは、全ての考えの源泉として「ユーザー」の変化から考えているところがもっとも大事です。
全て「ユーザー」という主人公のStoryを話しているわけですから、一方的にアプリの魅力を話すことはナンセンスだということがわかります。
そして、この①と②を証明するにあたって有効な手法を2つ示しましょう。
- 他の失敗事例を自分なりに分析して、適切解を見つける
- 他の成功事例を分析して、引用する
具体例を示すと、
「今まで文字ベースのSNSだったが、画像をメインとしたオリジナルSNSを開発する」というのが上の例。
「AppStoreでDL数50位に入るゲームは運の要素が入っているため、運の要素を取り入れた」というのが下の例。
下の例の場合は想像がしやすいですが、オリジナリティを取り入れている上の場合は聞き手が想像しやすいように思考過程や参考イメージを話すとわかりやすいと思います。
##まとめ
- StoryTellingとは
- "物語"とは?
- (変化前の人)を定義する
- (変化後の人)を定義する
- (もの・こと)を正しく伝える
について解説しました。
StoryTellingはあくまでも、物事を説明するときのフレームワークの一つです。
(変化前の人)をしっかりと定義すること、(もの・こと)が変化前後の差分となっていることを証明することがとても大事です。
上のようなフレームワークを用いて、より良いプレゼン構成を自分なりに考えてみましょう!