『運動脳』を読んだ感想
『運動脳』を読んで、
各章で印象に残った内容と感想を残しておく。
イントロダクション
脳にとって最高のエクササイズとは何か?
その答えは「体を動かすこと」だという。
体を動かすと気分が晴れやかになることは経験したことはあるが、それだけでなく、記憶力、集中力、注意力、創造性や知力にも良い影響を及ぼすとのこと。
脳は頭を働かせようとするより、身体を動かすことでこそ威力を発揮する器官らしいのだ。
一章 現代人はほとんど原始人
■脳は運動によって変化や強化することができる。
- 機能的に優れた脳とは、細胞がたくさんある脳でも、細胞同士がたくさんつながっている脳でもなく、各領域(例えば前頭葉や頭頂葉)がしっかりと連携している脳である。また、それらの連携は、身体を活発に動かせば強化できる。
- 脳を操作しているのは私たちであって、脳が私たちを操作しているのではない。私たちが考え、行うことで脳を変え、その機能を変えることができる。
- 大人の脳が持つ可塑性-柔軟で変形する。
「子供のころに楽器を習っていればよかった。今からじゃもう遅すぎる。」多くの人が一度や二度、こんな思いを抱いたことがあるのではないか。
→例1. 脳が半分の状態で生まれたミシェル・マック
→例2. 脳梁に損傷を受けた状態で生まれたキム・ピーク - 脳の可塑性の研究において、身体を活発に動かすことほどに脳を変えられる、つまり神経回路に変化を与えられるものはない。
※しかも、その活動は特別に長く続ける必要はなく、20分~30分ほどで十分に効果がある。
第2章 脳から「ストレス」を取り払う
■まず、ストレスを引き起こすメカニズムの説明
- ストレスとは、コルチゾールというストレスホルモンが分泌され、身体に様々な反応を及ぼす。
- コルチゾール分泌の大元をたどれば、「偏桃体」が原動力となっている。
- ストレス反応によって、偏桃体自身も刺激を受けるという「ストレスがストレスを呼ぶ」という悪循環を及ぼす。
- 身体にはストレス反応を緩和して、興奮やパニック発作を防ぐブレーキペダルがいくつか備わっている。その一つが「海馬」である。
- 海馬は、記憶の中枢といわれるが、それ以外にも、感情を暴走させないためのブレーキとしても働いており、ストレス反応を抑制することで、ストレス反応を引き起こす偏桃体の働きを相殺している。
- 海馬の細胞は過度のコルチゾールにさらされ続けると、死んでしまう。
→慢性的なストレスは、記憶の中枢を担い空間認識等にもかかわる海馬を委縮させ、記憶障害を引き起こしたり、言葉がうまく出なかったり場所の認識ができなくする。
■ここから、運動による効果の説明
- 運動中も、肉体に負荷がかかるため、一種のストレスであり、活動中はコルチゾールの分泌が増える。ただ、運動後はコルチゾールの分泌は減り、運動前のレベルに下がる。
- 定期的に運動を続けると、運動以外のことが原因でストレスを抱えているときでも、コルチゾールの分泌量はわずかしか上がらなくなる。
→ストレスに対する反応は、身体が運動によって鍛えられるにしたがって徐々に抑えられる! - 運動によって、海馬が活性化する。
- 「長時間1回」より「短時間数回」の方が断然いい。
→週2回がボーダーライン(フィンランドの調査の例) - 「お酒」に含まれるアルコールは、ストレスや不安を消し去ることにおいて驚異的な効果があり、依存性の危険性も極めて高い。
- 筋肉は、ストレスによって生じる代謝物である「キヌレニン(脳に害を及ぼす)」を無害化する物質が含まれているため、筋トレがストレス除去に効果的。
- ただし、筋トレだけに集中すれば、ストレスから身を守ることができるとは言い切れない。ウォーキングやランニングといった有酸素運動もうまく取り入れることが重要。
3章 「集中力」を取り戻せ!
- 運動を終えた数分後にドーパミンの分泌量が上がり、数時間はその状態が続く。そのため運動後には感覚が研ぎ澄まされ、集中力が高まり、心が穏やかになる。
- 身体に与える負荷が多いほど、ドーパミンの分泌量も増える。
→ドーパミンの量を増やすには、ウォーキングよりもランニングの方が適している。 - ドーパミンには幸福感をもたらす効果もあるため、運動を終えるたびに心地よい気分になる。
※運動してドーパミンを増やせば、報酬系と前頭葉、2つの「集中を左右する部位」に一気にアプローチできる!
4章 うつ・モチベーションの科学
- 「あなたが不機嫌なら散歩に出かけなさい。それでもまだ不機嫌ならもう一度散歩に出かけなさい」
- ランニングは抗うつ剤と同じ作用がある。運動は副作用が一切ない薬である。
- 運動によって、セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンという神経伝達物質を増やすことができる。これは抗うつ剤と同じ効果である。
- 運動ほど脳細胞の新生を促せるものはない。
5章 記憶力を極限まで高める
- 運動以上に記憶力を高められるものはない。
- 脳の大きさは25歳がピークで、その後、年齢とともに徐々に小さくなっていく。
- 脳の細胞は一生涯作られるものの、それより早いスピードで死滅している。具体的には、一日約10万個の細胞が失われている。
- 持久系のトレーニングを1年実施した人は海馬が2%成長した。
→週に3回、40分、速足で歩いただけ!
- 暗記力を最大限に上げたいのであれば、運動と暗記を同時に行うことをお勧めする。
- コンピュータゲームやアプリが提供する様々な認知トレーニングは、確かにゲームそのものは上達しても、特に知能が高くなったり、集中力や創造性が改ざんされたり、あるいは記憶力が向上したりする効果はない。
6章 頭の中から「アイデア」を取り出す 最新リサーチが実証した「運動後、ひらめく力」
- 村上春樹の創作のプロセス。
→執筆中は、朝4時起床午前10時まで仕事をする。昼食を取った後に10キロのランニング、それから水泳をする。そのあとは音楽を聴いたり、読書をしたりして過ごす。そしてよるの9時ごろには就寝する。
- スティーブ・ジョブズやマークザッカーバーグ、twitter創業者のジャック・ドーシーなどのシリコンバレーの多くのビジネスエリートたちが、「ウォーキング・ミーティング」を取り入れている。
- どのように脳が発達しどのような人間が作られるかは、DNAの遺伝情報のみで決まるわけではない。脳がどのように発達するかを定める遺伝的なプログラムも存在するものの、脳という器官はあまりに複雑なため、そのプログラムには支配しきれない。
※遺伝子の数は2万3000個だが、脳の細胞は1000億個で細胞同士のつながりは100兆にもなる。
7章 「学力」を伸ばす 才能を一気に開花させる最良の方法
- 子供でも身体を鍛えれば、脳の重要な部位である海馬が大きくなる。
- 子供の能力を伸ばすのは、机に向かって勉強することよりも、身体を動かすこと。
→スウェーデン・スコーネ地方の調査(毎日体育の授業があった生徒の学力)
→アメリカ・ネブラスカ州の調査(体力的に優れた生徒)
※いずれも、算数・英語・国語等様々な分野で良い結果が表れた。 - 立って仕事や勉強をすると、前頭葉が活発化して、ワーキングメモリーの能力や集中力が上がる。
- 脳に効果を及ぼすには、何より心拍数を上げることが重要だとされている。
→脈拍を一分間に150回前後まで上げることを目安にする。
8章 健康脳 認知症、高血圧、高血糖 あらゆる病と無縁な「長生き」の秘訣
- 加齢による前頭葉の委縮の進み具合は、カロリーの消費量と密接に関わっている。
→よく動いてカロリーを消費する人は、加齢による前頭葉の委縮の進行が遅くなる。
- 認知症になるリスクを減らすには、ウォーキングか軽いジョギングを週にトータルで150分、あるいは30分ずつ週に5回行うことが望ましい。
- いくつで運動を始めようと、脳は強化できる。(オルガ・コテルコの例)
9章 最も動く祖先が生き残った 脳は「移動する」ためにある
- 地球上に初めて現れた脳細胞の最も大切な仕事はその生物を移動させること。
→基本的には、移動する生物だけに脳がある。 - 「移動距離」と脳の大きさは比例する。
10章 運動脳マニュアル どんな運動をどのくらい?
- たとえわずかな一歩でも脳のためになる。
- 脳のための最高のコンディションを保つには、ランニングを週に3回、45分以上行うことが望ましい。
- 有酸素運動を中心に行う。筋力トレーニングも脳に良い影響を及ぼすが、どちらかといえば有酸素運動の方が望ましい。
感想
運動によって「得られるもの」はあまりに大きいことが分かった。
そして、さまざまな研究結果を使用しての説明が多かったので、納得感も大きかった。
「忙しくて運動する時間がない?誰よりも運動が必要なのはあなたである。」
この言葉が印象的だ。
忙しさのあまり、どうしても後回しにしがちな運動。運動するとなると、長い距離をランニングしないと効果がないという謎のバイアスを持っていたが、この本を読んでその間違いは払拭された。
例え1歩からでも効果があり、脳は何歳からでも変わることができるんだ。
今すぐに実践しようと思う。