[modernAVR] USART BAUD レジスタ設定値早見表

概要

modernAVR 世代の USART周辺機能は、分数ボーレート発生器を持っている。対応する設定レジスタUSARTn.BAUD は、10ビットの整数部と、6ビットの小数部を持つ。自ずと設定可能な最小値と上限値があり、設定可能なボーレートF_BAUDは CPU動作クロック F_CPU に依存して左右される。この記事は設定可能な計算済の主だった BAUD数値を列挙したものだ。

BAUD設定値は、USART周辺機能の使用動作によって算出方法が異なり、以下の三種類がある。

• 非同期標準速動作
• 非同期倍速動作
• 同期主装置動作

なお USART周辺機能は SPI主装置SPI動作で使うこともできるが、この場合は同期主装置動作の設定値を使用する。

同期動作従装置を選択した場合、USARTn.BAUDは使用されない。また非同期自動ボーレート従装置動作を選択した場合、USARTn.BAUDは採取された最新値を記憶するのに使用される。

F_CPU

modernAVR 世代は、内蔵高速 OSCHFの種類によって、以下の2系統に分かれる。

• 20MHz/16MHz系統 - tinyAVR-0/1/2、megaAVR-0、AVR-EA、AVR-EB
• 24Mhz系統 - AVR-DA、AVR-DB、AVR-DD、AVR-DU

前者の系統は FUSE設定によって、最高20MHz または 16Mhz いずれかの OSCHFを選択できる。それに対する分周比を 1、2、4、6、8、10、16、24、32、48、64 から選択できる。起動時の規定分周比は 6なので、起動時の規定動作速度は 2.66MHz または 3.33MHz である。

後者の系統の OSCHFは 1MHz、2MHz、3MHz、4MHz、8MHz、12MHz、16Mhz、20Mhz、24Mhz、さらに非推奨オーバークロックだが 28MHz、32MHz から基準周波数を選び、これに 1、2、4、6、8、10、16、24、32、48、64 から分周比を選んで掛け合わせることができる。起動時の規定動作速度は 4MHz である。

いずれの規定動作速度も旧来の AVRの 1MHzより高速で、OSCHF設定を変更しなくとも 115200bps の UART速度を確保できるため、ブートローダーの規定速度はこのボーレートであることが普通だ。一方でそれ以上ブートローダーを高速化するには、OSCHF設定変更は必須である。

なおどの系統でも、32768Hz の XSOC低速基準周波数を選ぶことができ、それに分周比を掛けることで 512Hz の超低速動作を実現可能だが、この速度で UART を扱うのは非実用的なため、ここでは論じない。

誤差調整範囲

一般的な 8N1 フレームでは、フレーム長は 10bitであることからボーレートの最大許容誤差は ±2%以内（累積誤差がその10倍になる）であり、これを超えると非同期動作は脱調する可能性が高まる。しかし分数ボーレート発生器の小数部は 6ビットであるため、特に高速度域では調整速度が荒くなってしまう。これを超える誤差の吸収には、F_CPU を生成する OSCHF自体の校正機能（1/1024=0.097%精度）を使用しなければならない。

OSC誤差校正バイト

主に20MHz/16MHz動作系統の、一部の modernAVRは OSC誤差校正バイトを持っている。

OSC16ERR3V OSC16ERR5V OSC20ERR3V OSC20ERR5V など

これらの校正バイトは OSCHFに対する 1/1024精度の増減値を保持しているが、分数ボーレート発生器は 1/64精度でしかないことから、その使用は適していない。必要であれば前述のように OSCHF自体の校正機能（1/1024精度）を使用すべきである。

UART 非同期標準速動作

非同期標準速動作での BAUDレジスタ設定値は以下の式で求められる。

BAUD = floor( (64 * F_CPU) / (16 * F_BAUD) + 0.5 )

ただし、

0x40 <= BAUD < 0x10000

である。従って F_CPUに対する F_BAUDの数値範囲は

F_CPU/16384 < F_BAUD <= F_CPU/16

であると換言できる。

F_BAUD	1M	2M	2.66M	3M	3.33M	4M
300	$3415	$682B	$8AE4	$9C40	$AD9C	$D055
600	$1A0B	$3415	$4572	$4E20	$56CE	$682B
1200	$D05	$1A0B	$22B9	$2710	$2B67	$3415
2400	$683	$D05	$115C	$1388	$15B4	$1A0B
4800	$341	$683	$8AE	$9C4	$ADA	$D05
9600	$1A1	$341	$457	$4E2	$56D	$683
19200	$D0	$1A1	$22C	$271	$2B6	$341
38400	$68	$D0	$116	$139	$15B	$1A1
57600	$45	$8B	$B9	$D0	$E7	$116
76800	-	$68	$8B	$9C	$AE	$D0
115200	-	$45	$5D	$68	$74	$8B
230400	-	-	-	-	-	$45
460800	-	-	-	-	-	-
921600	-	-	-	-	-	-
250000	-	-	-	-	-	$40
500000	-	-	-	-	-	-

F_BAUD	5M	6M	7M	8M	10M	12M
300	-	-	-	-	-	-
600	$8235	$9C40	$B64B	$D055	-	-
1200	$411B	$4E20	$5B25	$682B	$8235	$9C40
2400	$208D	$2710	$2D93	$3415	$411B	$4E20
4800	$1047	$1388	$16C9	$1A0B	$208D	$2710
9600	$823	$9C4	$B65	$D05	$1047	$1388
19200	$412	$4E2	$5B2	$683	$823	$9C4
38400	$209	$271	$2D9	$341	$412	$4E2
57600	$15B	$1A1	$1E6	$22C	$2B6	$341
76800	$104	$139	$16D	$1A1	$209	$271
115200	$AE	$D0	$F3	$116	$15B	$1A1
230400	$57	$68	$7A	$8B	$AE	$D0
460800	-	-	-	$45	$57	$68
921600	-	-	-	-	-	-
250000	$50	$60	$70	$80	$A0	$C0
500000	-	-	-	$40	$50	$60
1000000	-	-	-	-	-	-

F_BAUD	14M	16M	20M	24M	28M	32M
300	-	-	-	-	-	-
600	-	-	-	-	-	-
1200	$B64B	$D055	-	-	-	-
2400	$5B25	$682B	$8235	$9C40	$B64B	$D055
4800	$2D93	$3415	$411B	$4E20	$5B25	$682B
9600	$16C9	$1A0B	$208D	$2710	$2D93	$3415
19200	$B65	$D05	$1047	$1388	$16C9	$1A0B
38400	$5B2	$683	$823	$9C4	$B65	$D05
57600	$3CC	$457	$56D	$683	$798	$8AE
76800	$2D9	$341	$412	$4E2	$5B2	$683
115200	$1E6	$22C	$2B6	$341	$3CC	$457
230400	$F3	$116	$15B	$1A1	$1E6	$22C
460800	$7A	$8B	$AE	$D0	$F3	$116
921600	-	$45	$57	$68	$7A	$8B
250000	$E0	$100	$140	$180	$1C0	$200
500000	$70	$80	$A0	$C0	$E0	$100
1000000	-	$40	$50	$60	$70	$80
2000000	-	-	-	-	-	$40
2500000	-	-	-	-	-	-

USARTn.BAUDレジスタの既定値は 0x0000なので、設定値が 0xFF 以下であるなら下位バイトを書き換えるだけで良い。

UART 非同期倍速動作

非同期倍速動作での BAUDレジスタ設定値は以下の式で求められる。

BAUD = floor( (64 * F_CPU) / (8 * F_BAUD) + 0.5 )

ただし、

0x40 <= BAUD < 0x10000

である。従って F_CPUに対する F_BAUDの数値範囲は

F_CPU/8192 < F_BAUD <= F_CPU/8

であると換言できる。

F_BAUD	1M	2M	2.66M	3M	3.33M	4M
300	$682B	$D055	-	-	-	-
600	$3415	$682B	$8AE4	$9C40	$AD9C	$D055
1200	$1A0B	$3415	$4572	$4E20	$56CE	$682B
2400	$D05	$1A0B	$22B9	$2710	$2B67	$3415
4800	$683	$D05	$115C	$1388	$15B4	$1A0B
9600	$341	$683	$8AE	$9C4	$ADA	$D05
19200	$1A1	$341	$457	$4E2	$56D	$683
38400	$D0	$1A1	$22C	$271	$2B6	$341
57600	$8B	$116	$172	$1A1	$1CF	$22C
76800	$68	$D0	$116	$139	$15B	$1A1
115200	$45	$8B	$B9	$D0	$E7	$116
230400	-	$45	$5D	$68	$74	$8B
460800	-	-	-	-	-	$45
921600	-	-	-	-	-	-
250000	-	$40	$55	$60	$6B	$80
500000	-	-	-	-	-	$40
1000000	-	-	-	-	-	-

F_BAUD	5M	6M	7M	8M	10M	12M
300	-	-	-	-	-	-
600	-	-	-	-	-	-
1200	$8235	$9C40	$B64B	$D055	-	-
2400	$411B	$4E20	$5B25	$682B	$8235	$9C40
4800	$208D	$2710	$2D93	$3415	$411B	$4E20
9600	$1047	$1388	$16C9	$1A0B	$208D	$2710
19200	$823	$9C4	$B65	$D05	$1047	$1388
38400	$412	$4E2	$5B2	$683	$823	$9C4
57600	$2B6	$341	$3CC	$457	$56D	$683
76800	$209	$271	$2D9	$341	$412	$4E2
115200	$15B	$1A1	$1E6	$22C	$2B6	$341
230400	$AE	$D0	$F3	$116	$15B	$1A1
460800	$57	$68	$7A	$8B	$AE	$D0
921600	-	-	-	$45	$57	$68
250000	$A0	$C0	$E0	$100	$140	$180
500000	$50	$60	$70	$80	$A0	$C0
1000000	-	-	-	$40	$50	$60
2000000	-	-	-	-	-	-

F_BAUD	14M	16M	20M	24M	28M	32M
300	-	-	-	-	-	-
600	-	-	-	-	-	-
1200	-	-	-	-	-	-
2400	$B64B	$D055	-	-	-	-
4800	$5B25	$682B	$8235	$9C40	$B64B	$D055
9600	$2D93	$3415	$411B	$4E20	$5B25	$682B
19200	$16C9	$1A0B	$208D	$2710	$2D93	$3415
38400	$B65	$D05	$1047	$1388	$16C9	$1A0B
57600	$798	$8AE	$ADA	$D05	$F31	$115C
76800	$5B2	$683	$823	$9C4	$B65	$D05
115200	$3CC	$457	$56D	$683	$798	$8AE
230400	$1E6	$22C	$2B6	$341	$3CC	$457
460800	$F3	$116	$15B	$1A1	$1E6	$22C
921600	$7A	$8B	$AE	$D0	$F3	$116
250000	$1C0	$200	$280	$300	$380	$400
500000	$E0	$100	$140	$180	$1C0	$200
1000000	$70	$80	$A0	$C0	$E0	$100
2000000	-	$40	$50	$60	$70	$80
2500000	-	-	$40	$4D	$5A	$66
3000000	-	-	-	$40	$4B	$55
4000000	-	-	-	-	-	$40
5000000	-	-	-	-	-	-

最小値の 0x40 に対してキャリブレーション校正を適用すると下限を割り込む場合がある。

USART 同期主装置動作

同期主装置動作では、SPI通信と同様に主装置の XCK信号出力（つまり3線式）で 従装置側の USART送受信部を直接駆動できるため、以下の利点がある。

• 非同期動作では達成できない高速通信
• 従装置側の速度設定が不要で、対応速度範囲は F_CPUにのみ制限される

同期動作での BAUDレジスタ設定値は以下の式で求められる。得られた値はレジスタの10ビット整数部に与えなければならない。

BAUD[15-6] = floor( (64 * F_CPU) / (2 * F_BAUD) + 0.5 )

つまり

BAUD = floor( (64 * F_CPU) / (2 * F_BAUD) + 0.5 ) * 64

ただし、

• BAUDの小数部（bit[5-0]）は設定できず、常にゼロとしなければならない
• F_BAUDは F_CPUの 1/4以下でなければならない

という制約があるため設定可能ボーレート範囲は、

F_CPU/32 < F_BAUD <= F_CPU/4

である。これは高速通信は得意だが、低速側は苦手なことを意味する。

よって設定可能数値は、0x2000未満では F_CPU/4 より早くなってしまうため、

0x2000 <= BAUD < 0x10000 (BAUDの下位6ビットはゼロ固定)

に限られる。

つまるところ選択可能な F_CPU に対する代表的な速度比は（設定可能な F_CPU値を割り切れる） 1/4、1/5、1/8、1/10、1/16、1/20、1/25 のいずれかになるだろう。一部の F_CPU 値では 1/15、1/30 等でも割り切れる。

F_BAUD	1M	2M	2.66M	3M	3.33M	4M
19200	-	-	-	-	-	-
38400	$D040	-	-	-	-	-
57600	$8B00	-	-	-	-	-
76800	$6840	$D040	-	-	-	-
115200	$4580	$8B00	$B940	$D040	$E780	-
230400	$22C0	$4580	$5C80	$6840	$73C0	$8B00
460800	-	$22C0	$2E40	$3400	$39C0	$4580
921600	-	-	-	-	-	$22C0
250000	$2000	$4000	$5540	$6000	$6AC0	$8000
500000	-	$2000	$2AC0	$3000	$3540	$4000
1000000	-	-	-	-	-	$2000
2000000	-	-	-	-	-	-

F_BAUD	5M	6M	7M	8M	10M	12M
115200	-	-	-	-	-	-
230400	$AD80	$D040	$F300	-	-	-
460800	$56C0	$6840	$7980	$8B00	$AD80	$D040
921600	$2B80	$3400	$3CC0	$4580	$56C0	$6840
250000	$A000	$C000	$E000	$10000	-	-
500000	$5000	$6000	$7000	$8000	$A000	$C000
1000000	$2800	$3000	$3800	$4000	$5000	$6000
2000000	-	-	-	$2000	$2800	$3000
2500000	-	-	-	-	$2000	$2680
3000000	-	-	-	-	-	$2000
4000000	-	-	-	-	-	-

F_BAUD	14M	16M	20M	24M	28M	32M
230400	-	-	-	-	-	-
460800	$F300	-	-	-	-	-
921600	$7980	$8B00	$AD80	$D040	$F300	-
250000	-	-	-	-	-	-
500000	$E000	$10000	-	-	-	-
1000000	$7000	$8000	$A000	$C000	$E000	$10000
2000000	$3800	$4000	$5000	$6000	$7000	$8000
2500000	$2CC0	$3340	$4000	$4CC0	$5980	$6680
3000000	$2540	$2AC0	$3540	$4000	$4AC0	$5540
4000000	-	$2000	$2800	$3000	$3800	$4000
5000000	-	-	$2000	$2680	$2CC0	$3340
6000000	-	-	-	$2000	$2540	$2AC0
7000000	-	-	-	-	$2000	$2480
8000000	-	-	-	-	-	$2000

なお AVR-DUシリーズでは USB周辺機能を併用する場合 F_CPU 値を 最小12MHz から 20MHz（推奨）で使用しなければならないため、実用的な USART同期速度は 500kbpsから 5Mbps のあたりに限られる。

AVR64DU28/32の初期ロットには 最高速20MHzまでしか動作保証がされない不具合（Eratta）がある。

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