@__asachi__ です。
今回は、「インフラコスト最適化」を行ってくれるSaaSを紹介します。
この前「他企業のインフラコスト規模ってどうなっている?」という記事を書いた後に、
最適化をオートメーションできるようなSaaSはないかなと思って、
少し調べたのでまとめました。
基本的には海外の先端事例がメインです。
TL;DR
- 可視化メイン、削減メイン、ハイブリッドのタイプが存在する
- 海外には削減オートメーションまで対応しているようなSaaSがある
- コスト削減のインパクト的にはAWSメインのサービスが多め
- 大枠は3タイプに分かれる
- Reserved Instance, Spot Instance の活用 (ex.RI自動売買, 最適ブレンド提示)
- 自動終了問題を解決したSpot Instance の活用
- その他 (ex.施策レコメンド, アイドルリソースの自動停止)
- 大枠は3タイプに分かれる
- セルフサーブで導入できるものと、商談が必要なものの双方が存在
- セルフサーブの場合は、フリーミアムorトライアルで即時使える
- どうしてもセットアップコストは多少かかるケースが多い
- AWSでCloudFormationなどを用意しているケースもあり
- 削減額やインフラコストに対する割合のような、価値直結でのプライシングもあり
はじめに
サービスの性質を理解するのに、FinOpsという概念が出てくるため、簡単にだけ説明します。
「FinOps」とは、"Financial"と"DevOps"を組み合わせた造語で、
FinOps Foundation が提唱する理論です。
定義をまとめると
- 組織が最大のビジネス価値を獲得できることを目的に
- エンジニアリング, 財務, テクノロジー, ビジネスといった部門(チーム)が協同し
- データドリブンなクラウドコストに対して意思決定を行う
運用モデルとなります。
部門横断であることやビジネス価値の最大化という文言からも分かるように、
技術としてのインフラやコストとしてのインフラといった粒度でなく、
より有機的に企業における資産・戦略としてクラウド財務を捉えていくような考え方です。
- オンプレ時代の固定費モデルからクラウド時代の変動費モデルに代わり単純計算ができなくなったこと、
- パブリッククラウドへの支払いが毎年20%レベルで増えていっていること
等の背景から、管理や最適化をビジネス的な側面からも実施していこうと、
近年海外を中心に取り組みが進んでいます。
(引用元)
そのFinOpsの中6原則と3フェーズがあるのですが、
原則に
FinOpsデータはアクセス可能でタイムリーであるべき
クラウドの変動費モデルを活用する。
フェーズに
通知 (可視化とコスト配分)
最適化 (最適な利用)
とあるように、「可視化」「最適化」が重視されている側面があります。
そのため、下記で紹介するようなツールも上記に沿うような設計になっています。
FYI:
日本語文献だと、このあたりが理解に役立ちます。
https://www.ibm.com/jp-ja/topics/finops
https://cloud.google.com/learn/what-is-finops?hl=ja
サービス紹介
Vantage
- 概要
- 可視化・削減の双方に対応する統合型ツール
- 特徴
- 可視化・最適化を通じて実践的なFinOpsを支援
- ほとんどの機能で主要クラウドに対応
- 可視化の文脈では、Datadog,Fastly,Snowflake等にも対応
- AWSのみReserved Instance売買の自動化機能が提供されている
- ほとんどの機能で主要クラウドに対応
- 可視化・最適化を通じて実践的なFinOpsを支援
- 導入方法
- セルフサーブ可
- 各種クラウドのIAM定義やToken等によって、データにアクセスする準備を行う
- AWSの場合はCloudFormationを利用
- 可視化イメージ (引用元)
- 最適化アプローチ例
- AWSを対象にReserved Instance売買の自動化機能を提供
- プライシング
- トラッキングするコスト規模と機能に応じて、複数プランがあり
- フリーミアム型で、月間クラウドコストが$2,500(約330万)までは無料で利用可
- Autopilot (自動売買)が使いたい場合は$30/月〜+削減額の5%
- トラッキングするコスト規模と機能に応じて、複数プランがあり
- 備考
- Square, NASA, BuzzFeedなどが利用している
ProsperOps
- 概要
- 削減機能がメイン/強みのツール
- 特徴
- AWSを対象に、Reserved Instance自動売買, Saving Plansを活用したコスト削減を提供
- 割引手段を適切にブレンドし、削減額の最大化とコミット期間の最小化を行う
- 利用者側がカバレッジやリスクに対するパラメータを設定し、それに対して自律的に動いてくれる
- AWSを対象に、Reserved Instance自動売買, Saving Plansを活用したコスト削減を提供
- 導入方法
- 無料診断まではセルフサーブ可
- 管理しているAWSアカウントに対してアクセス可能なIAM権限を付与する
- ※本利用には商談が必要
- 無料診断まではセルフサーブ可
- 可視化イメージ (引用元)
- 最適化アプローチ例
- Reserved Instance, Saving Plansを用いて、On-Demand Instanceと最適な割合を自動構築
- プライシング
- 非公開
- ※1ヶ月単位のサブスクリプションであることは記載
- 備考
- coinbase, VICE, webflow等が利用している
Xosphere
- 概要
- AWSに特化した削減機能がメイン/強みのツール
- 特徴
- EC2を対象にSpot Instanceを活用し、大胆なコスト削減を行う
- On-Demandインスタンスと同様の信頼性でSpot Instanceにて運用が可能にする
- Auto Scaling Group, 購入済Reserved Instanceには干渉しない
- Spot Instanceの課題である自動終了に対して、コンテナを新ノードに自動移行
- EC2を対象にSpot Instanceを活用し、大胆なコスト削減を行う
- 導入方法
- セルフサーブ可
- Cloud Formation/Terraformを用いてセットアップを行う
- セルフサーブ可
- 可視化イメージ ※LP上の記載がなく手元で試した画像(データなし)
- 最適化アプローチ例
- 自動終了課題を解決できる形でSpot Instanceを用いて大幅なコスト削減
- プライシング
- 利用料は無料で、成果報酬型で支払いを行う
- 計算式が出ていないが、おそらくSpot Instance利用料に対して約17%のライセンス料を支払う形と思われる
- 利用料は無料で、成果報酬型で支払いを行う
- 備考
- LP,利用例ともに記載事項が少なく、あまり分かりませんでした…
CloudZero
- 概要
- 可視化機能がメイン/強みのツール
- 特徴
- 各種クラウドの支払い詳細の可視化、最適化作業の情報ハブとして提供
- Datadog,Fastly,Snowflake等にも対応
- 高度な可視化として、顧客当たりのコストや原価に占める割合等の可視化まで行う
- 各種クラウドの支払い詳細の可視化、最適化作業の情報ハブとして提供
- 導入方法
- セルフサーブ可
- CURレポート作成とIAMを通じて設定
- セルフサーブ可
- 可視化イメージ (引用元)
- 最適化アプローチ例
- コスト削減施策のレコメンデーション
- アラート
- ※自動化についてはXospher(Spot Instance), ProsperOps(Reserved Instance, Saving Plans)と連携している
- プライシング
- 非公開
- ※節約額に基づく従量課金でないことは開示
- 非公開
- 備考
- SkyScanner等が利用している
harness
- 概要
- 可視化・削減の双方に対応する統合型ツール
- 特徴
- SRE,DevOps領域の統合SaaSの提供機能群の1つとしてCloud Cost Managementが提供されている
- Opsで発生しやすいタグ付け・アイドルリソースのストップ等の自動化に対応
- その他にもXosphere的なアプローチでSpot Instanceを自動終了問題を解決した形での運用やコスト削減施策のレコメンデーションも提供
- 導入方法
- セルフサーブ可
- CURレポート作成とCloudFormationを通じて設定
- 可視化イメージ (引用元)
- 最適化アプローチ例
- アイドルタイムを検知してリソースの自動ストップ
- コスト削減施策のレコメンデーション
- (AWS)自動終了課題を解決できる形でSpot Instanceを用いて大幅なコスト削減
- プライシング
- フリーミアム型で提供
- $250/年 (おそらく)のクラウドコストまでは無料で利用化
- Team,Entepriseでは機能とサポートが拡充し、年間支出の2.25~2.25%を支払い
- 月額制も導入予定とのこと
- $250/年 (おそらく)のクラウドコストまでは無料で利用化
- フリーミアム型で提供
Spot
- 概要
- 可視化・削減の双方に対応する統合型ツール
- 特徴
- SRE,DevOps領域の統合SaaSの提供機能群の中に、分析/可視化やコスト最適化機能が提供されている
- クラウド構成自体の最適化や運用自動化とも合わせて利用が可能
- AWSを対象に、Reserved Instance, Saving Plans売買を自動化したコスト削減を提供
- SRE,DevOps領域の統合SaaSの提供機能群の中に、分析/可視化やコスト最適化機能が提供されている
- 導入方法
- セルフサーブ可
- 各種クラウドのIAM定義やToken等によって、データにアクセスする準備を行う
- AWSの場合はCloudFormationもしくはIAM定義を利用
- 可視化イメージ (引用元)
- 最適化アプローチ例
- Reserved Instanceの自動売買, Saving Plansの効果的な利用
- プライシング
- 非公開 - 備考
- 元々はイスラエル発の企業でNetAppが2020年に買収し、現在は統合されている
まとめ
クラウド側が提供する仕組みの影響により、
削減観点の最適化については、
よりインパクトが大きく出せるAWSに対応するソリューションが多くなっていました。
一方で、AWSのMarketplace機能の利用(Reserved Instanceの自動売買など)には、
米国の銀行口座と税務レポート提出が必要なので、
日本からの利用だと少し難しい面があるかもしれません。
そういった意味では、
可視化+レコメンデーションを期待するか、
Spot Instance系のソリューションを利用するのがベターそうです。
それでも、FinOpsの第一歩としては、
十分な・(準)リアルタイムでの可視化を通じて、
エンジニアリング組織を超えたクラウド財務に取り組むだけでも成果にはなりそうなので、
各社の状況に合わせて最適な手法を探していくのが好ましいと思います。
また、今回紹介しきれなかったサービス・事業もあるので、箇条書きで簡単にだけ。
- cloudchinpr (Ycom W23の採択企業)
- Rosettic (Ycom W23の採択企業)
日本でも、
- Alphaus Cloud (可視化・削減双方に対応)
- Airz (主に可視化に対応)
- opswitch (主に削減に対応)
や、各種総合開発会社やクラウド構築会社による支援や、特化型での代行(CTO Booster など)といったアプローチもあるようです。
Misc.
LPベースでの調査なので、間違っていたことがあれば教えてください。(修正しますmm)
他にも何か知りたいことがあれば、コメント・フィードバックいただけたら嬉しいです。