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3電圧計法と余弦定理

Last updated at Posted at 2024-03-06

はじめに

交流回路の消費電力を求めるためには、電圧と電流だけでなく電圧と電流の位相差である力率も使用する必要がある。これが、交流回路のややこしいところだが、3電圧計法を用いればたった、3つの電圧計で交流回路の消費電力を算出することが可能になる。また、このことは、余弦定理を使用すると楽に証明することができるようになる。そこで、今回は、余弦定理についてまずは紹介・証明を行う。次に、3電圧計法について紹介・証明を行い、最後に3電流計法について紹介・証明を行う。

余弦定理

導入

以下のような図を考える。
余弦定理1.JPG

以下の等式が成立する。

c^2=a^2+b^2-2ab cos \theta

これは、$\theta=90$度のときはピタゴラスの定理となることから、ピタゴラスの定理を一般角に拡張したものということができる。

証明(ベクトル図)

余弦定理2.JPG

上図のような条件で考える。補助線を引いて、直角三角形になるようにした。

直角三角形にピタゴラスの定理を導入すると以下のようになる。

c^2=(a-b cos\theta)^2 +b sin^2\theta

ゆえに、

c^2=a^2+b^2-2ab cos \theta

変形バージョン

上式を$cos\theta$の式にすると以下のようになる。

cos\theta=\frac{a^2+b^2-c^2}{2 ab}

この式を3電圧計法と3電流計法の証明で多用するので、押さえておきたい。

3電圧計法について

導入

既知の抵抗と3つの電圧計を以下の様に配置することによって負荷の消費する電力を表すことができる。これを3電圧計法と呼ぶ。

3電圧計法.JPG

負荷の消費する電力は以下のようにして表す事ができる。

P=\frac{1}{2R}(V_1^2-V_2^2-V_3^2)

証明(ベクトル図)

今回の重要なポイントは、負荷にかかる電圧と電流の位相差、つまり力率角の情報をどの様にして得るかにある。そこで、電圧の三角形を用いることで力率角の情報を得ることを試みる。以下のようなグラフを書く。

3電圧計法_ベクトル図.JPG

この図に余弦定理を適用させると以下のようになる。

cos (\pi-\theta)=\frac{V_2^2+V_3^2-V_1^2}{2V_2 V_3}

したがって、

cos \theta=\frac{V_1^2-V_2^2-V_3^2}{2V_2 V_3}

ここで、$V_3=RI$なので、

cos \theta=\frac{V_1^2-V_2^2-V_3^2}{2V_2 RI}

$P=VIcos\theta$に気をつけて、

P= V_2Icos \theta=\frac{V_1^2-V_2^2-V_3^2}{2R}

となる。

証明(ゴリ押し)

ちなみに、負荷を抵抗とリアクトルから成立するものと仮定して以下のような回路設定にしてあげれば、ゴリ押しで証明することも可能になる。
3電圧計法_ゴリ押し.JPG
まず、負荷の消費電力は以下のように表すことができる。

P= rI^2

次に、$V_1,V_2,V_3$は$I$を用いて以下のように表すことができる。

V_1=I\sqrt{(r+R)^2+x^2}
V_2=I\sqrt{r^2+x^2}
V_3=IR

したがって、

V_1^2-V_2^2-V_3^2=((r+R)^2+x^2-r^2-x^2-R^2)I^2=2rRI^2=2RP
P=\frac{1}{2R}(V_1^2-V_2^2-V_3^2)

となる。

3電流計法について

導入

三電流計法は、既知の抵抗と3つの電流計を用いて、以下のような回路にすることにより、負荷の消費電力を計算する方法である。

3電流計法.JPG

負荷の消費電力は以下のように表すことができる。

P=\frac{R}{2}(I_1^2-I_2^2-I_3^2)

証明(ベクトル図)

以下のような電流ベクトルを作成する。ただし、負荷にかかる電圧を$V$とする。
3電流計法_ベクトル図.JPG
余弦定理より、

cos(\pi -\theta)=\frac{I_2^2+I_3^2-I_1^2}{2I_2 I_3}

ゆえに、

cos\theta=\frac{I_1^2+I_2^2-I_3^2}{2I_2 I_3}

したがって、

P=VIcos\theta=\frac{R}{2}(I_1^2+I_2^2-I_3^2)

証明(ゴリ押し)

以下の回路設定で考える。

3電流計法_ゴリ押し.JPG

V=RI_2 = (r+jx)I_3

より、

\dot{I_2} = \frac{V}{R}
\dot{I_3} = \frac{V}{r+jx}
\dot{I_1} = \frac{V}{R}+\frac{V}{r+jx}

したがって、

\dot{I_1} = (\frac{1}{R}+\frac{r}{r^2+x^2})V-\frac{x}{r^2+x^2}V

ここで、

I_1^2-I_2^2-I_3^2=(\frac{1}{R}+\frac{r}{r^2+x^2})^2V^2+(\frac{x}{r^2+x^2})^2 V^2-(\frac{1}{R})^2V^2-(\frac{r}{r^2+x^2})^2 V^2 -(\frac{x}{r^2+x^2})^2 V^2=\frac{2r}{R(r^2+x^2)}V^2=\frac{2r}{R}I_3^2=\frac{2}{R}P

ゆえに、

P=VIcos\theta=\frac{R}{2}(I_1^2+I_2^2-I_3^2)

まとめ

今回は、余弦定理を用いて、3電圧計法と3電流計法によって交流回路の負荷の消費電力を計算することを証明した。そのときのポイントとしては、負荷にかかる電圧と負荷に流れる電流の位相差である力率角の情報を得るために、電圧もしくは電流の三角形を作成することであった。また、後半では、ゴリ押しの計算を行うことによっても証明することができることを示した。このような複雑な計算は、エネルギー管理士の問題練習になると思うので、ぜひとも手計算をして確認してみることをおすすめする。

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