はじめに
電験試験を効率的に解くためには、基礎力を付けた上で過去問演習をして自分なりに電気の知識を体系化させることが必要である。そこで、本記事では筆者が電験の試験をどうやって勉強してきたかの概略を述べ、電験受験生に対して自己啓発をすることとする。
前提
これは、どの試験でも言えるが、マニアックな難しい問題を解くのではなく、過去問の標準的かつ頻出な問題をできるだけ多く、分野の偏りが生じないように学習する。できれば知識を体系化・抽象化して応用力を効かせる。
目次
以下の番号の見出しで本文は進んでいく。
0~3:中学高校の知識を復習する
4~7:電験の勉強
8:過去問対策
本文
0.読解力の育成
・目的:参考書を読んだり、論説で論理的に破綻していない文章を書けるようにするため。(キーワードを詰め込むこと+αが必要である)
・方法:中学校の国語読解問題集で、読解力を身に付ける。
社会人には、以下の新書『大人に必要な読解力が正しく身につく本』がおすすめである。
この本は、接続詞の使い方など基本的な事項の確認から入り、効率の良い情報伝達の方法なども扱っているため、論説の解答用紙の作成方法にも応用が利く。
1.数学力
・高校数学から大学初年度レベルの代数(二次関数、方程式、四則計算、文字式の計算)、解析(微分積分、ベクトル、三角関数、複素数、行列)の計算方法を理解する。
具体的な参考書としては、『電験2種電気数学: 第3種から第2種へ』がおすすめである。レベルは高いが、電験1種までに必要な数学の知識だけがすべて載っている。また、単に公式を紹介するだけでなく、その意味や背景などを実戦形式で教えてくれる。
2.物理
・電磁気>力学(運動方程式、電子の動きや仕事量、エネルギーの計算方法の習得)>波動(三角関数)>熱力学(熱サイクル、エントロピー、エンタルピー→火力で使用)>原子
の優先度で勉強する
初学者は、受験界隈では有名な『物理のエッセンス』シリーズで復習する。
その名の通り、重要なトピックのみを十分過ぎるほどに扱っている。
上級者は、駿台の伝説の参考書である『新物理入門』で基礎を深める。
本作品は、物理で微積を使用しているので、応用性や自由度が増えた議論を味わうことができる。
3.化学
・モル計算などの基本知識と電池と電気分解の知識
→機械の電気化学で使用
重要度は数学や物理と比較すると低めなので、あまり深入りしないこと
4.理論
・とにかく、数学と物理の知識で押し倒す
5.電力
・発電:発電所の種類や性質を理解する
・送電・変電:ベクトル図を書けるようにする
・配電:電圧降下や電力損失の計算
特に、発電・送電では回転機を用いた3相式におけるメリットと課題を整理しておくこと
→慣性力、安定度、発電機における周波数と有効電力と機械入力の関係性など
参考書としては『電力系統』がいい。
電験一種までに必要な電力の知識のすべてが得られる。
6.機械
・回転機>変圧器>制御>パワエレ>電気分解>その他
の順で勉強するのが効率的である。
・特に、回転機の同期機と誘導機、変圧器は電力とも繋がるので念入りに。
・制御はとにかくラプラス変換を用いた微分方程式が解けるようにする。これができれば、伝達関数などは何とかなる。安定性はオイラー公式を用いて感覚的に理解する。
・過去問を用いた演習問題が足りなければ、エネ管電気の過去問も使用するとよい。というのは、エネ管電気は公式や法則の原理を問う本質的なものが多い。
(回転機の回転数の公式:$N_s=\frac{120 f}{p}$の導出など)
7.法規
・電力や施設管理の知識・計算はしっかりと対策する。
・条文は、『電力の安全性と経済性』という考え方が基礎であることを常に頭の片隅において暗記する。
8.過去問演習
・できるかぎりまんべんなく学習する。(食わず嫌いは避ける)
・マニアックな問題を深掘りするのではなく、標準レベルや過去問の類題を多く演習する
・論説と計算をバランスよく学習する
・計算は速さよりも正確さ(検算)を意識する。
復習では、問題の目的や意味を考えるのが理想である。
例えば、誘導機の計算では滑りからはじまり効率を求めることがゴールであることが多い。また、電力用コンデンサの問題では、最終的に改善力率を求めるなどの目的を意識しながら問題を味わうと理解が進む。
まとめ
今回は、電験試験の勉強法の全般にいえることを簡単に説明した。どの試験でもいえることであるが、標準的な問題をあなどらずにしっかりと解き切ることができれば、いい勝負をすることができる。そのために必要なのは、今の自分の実力を客観的に把握して基礎固めをすべきか過去問演習をすべきかを判断できる能力である。健闘を祈る!!