はじめに
2つのコンデンサを直列に接続する場合と並列に接続する場合では、合成容量が異なる。このことは、一般的に電荷保存の法則から導出されるが、今回は誘電率が同じ値のコンデンサ2つの合成容量を考える。具体的には、並列の場合は極板が広がったものとして考えて直列の場合は、板間距離が増加したものとして考察する。
公式の導入
以下のような平板コンデンサを考える。
ただし、この図には電場と電位の情報が入っている。
まず、上記コンデンサーの中心板内の平均電場について求めよう。
今回の場合は、単純にコンデンサの板内電場は一様であるとする。
(実際は端の効果により厳密には一様ではないが、それらの影響は無視できるものとする。)
電場の定義式とガウスの法則により厚さ$d$広さ$S$のコンデンサ内の電場は以下の式で与えられる。
E=\frac{V}{d}=\frac{Q}{\epsilon S}
ゆえに、
C=\frac{Q}{V}=\epsilon \frac{S}{d}
が成立する。
以上が、平板コンデンサの静電容量の式であるが、この式を用いて直列・並列接続時の合成容量の変化について調査する。
前提条件
前提条件として、2つのコンデンサを考えるのだが、まずは単純のためコンデンサに使用される絶縁体の誘電率は両者とも同じ値のものを使用する。
次に、並列接続の場合は板間距離$d$を共通の値として、広さである$S$が大きくなるというイメージで考える。一方で、直列接続の場合は、広さである$S$は共通だが板間距離$d$が大きくなるイメージで考える。
計算準備
以下のような2つのコンデンサの容量を考える。
C_1=\epsilon \frac{S_1}{d_1}
C_2=\epsilon \frac{S_2}{d_2}
並列接続の場合
2つのコンデンサの容量を$C_1,C_2$とし、共通板間距離$d$とすると、それぞれのコンデンサの容量は以下の式で表すことができる。
C_1=\epsilon \frac{S_1}{d}
C_2=\epsilon \frac{S_2}{d}
ただし、$d=d_1=d_2$
並列接続は、2つのコンデンサの板を合体させることと等価である。
したがって、合成後(合体後)のコンデンサの板の広さは$S=S_1+S_2$であると考えることができる。
C=\epsilon \frac{S}{d}=\epsilon \frac{S_1+S_2}{d}=C_1+C_2
となり、並列接続の場合は2つのコンデンサの容量の和が合成容量になる。
直列接続の場合
この場合は、並列接続とは逆で、板の広さを共通として板間距離を増加させると考える。
そうすると、合成後の板間距離$d=d_1+d_2$となることが分かる。したがって、
C_1=\epsilon \frac{S}{d_1}
C_2=\epsilon \frac{S}{d_2}
とおくと、
C=\epsilon \frac{S}{d}=\epsilon \frac{S}{d_1+d_2}
となるので、逆数をとると以下のようになる。
\frac{1}{C}= \frac{d_1+d_2}{\epsilon S}=\frac{d_1}{\epsilon S}+\frac{d_2}{\epsilon S}=\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}
以上のことから、並列接続の場合の合成容量は逆数の和の公式になるということが分かった。
まとめ
直列接続のコンデンサの合成容量の公式を理解するのは、並列接続の場合を理解するよりも難しい。だが、直列接続の場合は、板の広さは共通で厚さが広くなるということをイメージとして持っていれば、上手く計算することが可能になる。ただし、上の議論では誘電率が異なる場合を上手く説明できないので証明としては物足りない。したがって、証明には、有名な電荷保存の法則を用いる。しかし、今回のような公式のイメージを掴むためには、自分なりに具体的なものに落とし込むことが上達のカギである。