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はじめに

一般的に、3相交流回路の故障計算は難しいとされる。1線地絡のうち特殊な場合は、鳳-テブナンの定理を用いて平易に解くことができる。また、3相短絡は3相平衡しているという前提を認めれば平易に解くことができ、3線地絡も3相短絡と現象的には同じといえる。
しかし、断線を除くそれ以外の故障である2線地絡および2線短絡は、直接解くのが難しい。ミルマンの定理を用いるという手もあるが計算機の力を借りないとまず無理だろう。
そこで、線形変換を用いた対称座標法という手法が考案された。これは事故時、3相不平衡になっても、3つのベクトル成分は必ず単相成分である零相と3相対称成分である正相(発電機正方向)と逆相成分の線形和で表すことができるという数学的事実に基づいている。
今回は、その事実をPythonを用いてグラフ化で検証することで、対称座標法の基礎知識を体感することを目的とする。

対称座標法のベクトル.png

対称座標法とは

対称座標法とは、3相不平衡のベクトル成分a,b,c相を0,1,2相(零相、正相、逆相)の線形和として表現する手法である。これによって、3相不平衡でも平衡回路の重ね合わせとして表現することが可能になる。

ここで、ベクトルオペレータ$a$を以下のように定義する。

a=\frac{-1+\sqrt{3}j}{2}

ただし、$a^3-1=(a-1)(a^2+a+1)=0$を満たす。

とすると、各相の電圧は、以下のように表現することができる。



\begin{pmatrix}
   \dot{V_a} \\
   \dot{V_b} \\
   \dot{V_c} \\
\end{pmatrix}

=

\begin{pmatrix}
   1 & 1 &1\\
   1 & a^2&a\\
   1&  a&a^2\\
\end{pmatrix}


\begin{pmatrix}
   \dot{V_0} \\
   \dot{V_1} \\
   \dot{V_2} \\
\end{pmatrix}

ただし、正相の成分は、$\dot{V_1},a^2\dot{V_1},a\dot{V_1}$となる。(相順a→b→c)

これを線形代数の逆行列を用いて逆変換すると以下のようになる。(電験受験者は、代入し確かめるだけでいい。)


\begin{pmatrix}
   \dot{V_0} \\
   \dot{V_1} \\
   \dot{V_2} \\
\end{pmatrix}


=\frac{1}{3}

\begin{pmatrix}
   1 & 1 &1\\
   1 & a&a^2\\
   1&  a^2&a\\
\end{pmatrix}


\begin{pmatrix}
   \dot{V_a} \\
   \dot{V_b} \\
   \dot{V_c} \\
\end{pmatrix}

プログラム

さて、上記の公式を覚えておけば、abc相と012相の変換は行える。今回は、ベクトルで図示することで上記の考察を検証する。

python 3phase.py
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
import math

#ベクトルオペレータ
a=np.exp(1j*2*math.pi/3)
#変換前の相電圧
V_a=1.0
V_b=-1.5+1.5j
V_c=0.8-1.0j
#転置を用いて横ベクトルを縦ベクトルに変換する。
V_abc=np.array([V_a,V_b,V_c],dtype=np.complex128).T

#変換行列

V_012=(1/3*np.array([[1,1,1],[1,a,a**2],[1,a**2,a]],dtype=np.complex128)@V_abc).T
V_abc=np.array([[1,1,1],[1,a**2,a],[1,a,a**2]])@V_012

V_0_ary=V_012[0]*np.array([1,1,1]).T
V_1_ary=V_012[1]*np.array([1,a**2,a]).T
V_2_ary=V_012[2]*np.array([1,a,a**2]).T

for i in range(len(V_012)):
  if i==0:
    V0="V_0"
    V1="V_1"
    V2="V_2"
  else:
    V0=V1=V2=""
  plt.quiver(0,0,V_0_ary[i].real,V_0_ary[i].imag,angles='xy', scale_units='xy', scale=1,color='red',label=V0)
  plt.quiver(V_0_ary[i].real,V_0_ary[i].imag,V_1_ary[i].real,V_1_ary[i].imag,angles='xy', scale_units='xy', scale=1,color='blue',label=V1)
  plt.quiver((V_0_ary[i]+V_1_ary[i]).real,(V_0_ary[i]+V_1_ary[i]).imag,V_2_ary[i].real,V_2_ary[i].imag,angles='xy', scale_units='xy', scale=1,color='green',label=V2)

plt.quiver(0,0,V_a.real,V_a.imag,angles='xy', scale_units='xy', scale=1,color='black',label='V_A')
plt.quiver(0,0,V_b.real,V_b.imag,angles='xy', scale_units='xy', scale=1,color='black',label='V_B')
plt.quiver(0,0,V_c.real,V_c.imag,angles='xy', scale_units='xy', scale=1,color='black',label='V_C')

# ベクトルの描写範囲の設定
margin=0.2

V_x_max=max([V_a.real,V_b.real,V_c.real])+margin
V_x_min=min([V_a.real,V_b.real,V_c.real])-margin
V_y_max=max([V_a.imag,V_b.imag,V_c.imag])+margin
V_y_min=min([V_a.imag,V_b.imag,V_c.imag])-margin

plt.xlim(V_x_min,V_x_max)
plt.ylim(V_y_min,V_y_max)
plt.xlabel('Real-Value')
plt.ylabel('Imag-Value')
plt.legend()
plt.savefig('対称座標法のベクトル.png')
plt.show()

結果

上記のプログラムを実行すると以下のようになった。

対称座標法のベクトル.png

このように、abc相は012相の対称成分の線形和として表すことができる。ただし、$V_0$はabc相が作る電圧の三角形の重心に対応する。したがって、どれだけ$abc$相が対称成分からずれているのかを示す指標が零相である。したがって、バランスが崩れる地絡事故の計算に効果を発揮する。

まとめ

今回は、対称座標法の基本である、3相不平衡回路は平衡回路の線形和で表すことができるという事実を図を用いて考察した。具体的にはabc相と012相の変換を線形代数を用いることで行った。発電機の基本式および故障の等価回路、故障計算は全てこの考えが元になっているため、ただ公式を暗記するのではなく、イメージもできるようにしておこう。

参考文献

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