はじめに
単相全波整流回路を用いることで、単相交流電圧を脈動ある直流電圧に変換することができる。さらに、抵抗負荷に対して、直列に大きなリアクトル(コイル)を接続すると脈動が平滑化されて直流電流は滑らかになる。今回はこのことについてPythonを用いてシミュレーションしてみる。
回路設定
以下のような回路の負荷電流を考察する。
また、整流後の電源電圧を以下のように定義する。
E=E_0|sin(\omega t)|
この場合、抵抗負荷に流れる電流$I$は以下の微分方程式の関係性を満たす。
L\frac{di}{dt}+Ri=E
したがって、
\frac{di}{dt}=\frac{-Ri+E}{L}
となる。これをオイラー法を用いて数値計算する。
プログラム
python dengen.py
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
import math
# 微分方程式:L di/dt= 1/L(-Ri+E),E=|sin(omega t)|
#パラメータ
R = 1 # 抵抗値
L = 0.1 # インダクタンス
#初期条件
I=0
#初期時間
t=0
#時間と状態量(ここでは電荷と電荷の微分量)
time_ary=[]
E_ary=[]
I_ary=[]
#微小時間の時間間隔(小さくするほど精度は上がるが計算時間が比例して増大する)
delta_t=0.00001
while(t<0.3):
E=abs(np.sin(2*math.pi*50*t))
didt=(1/L)*(-R*I+E)
#位置の微小変化
I=I+didt*delta_t
#演算結果を記録
time_ary.append(t)
I_ary.append(I)
E_ary.append(E)
#時間の更新
t=t+delta_t
plt.xlabel("応答時間[s]")
plt.ylabel("電流[A],電源電圧[V]")
plt.plot(time_ary,I_ary,color="blue",label="I")
plt.plot(time_ary,E_ary,color="red",label="V")
plt.legend()
#グラフを保存する
plt.savefig("RL_全波整流回路_電流.png")
#グラフの表示
plt.show()
これを実行すると以下のようになる。
このように、負荷電流は徐々に増加していき、立ち上がりの波形の様相を示す。
これは、定常状態だとほぼ一定の値を示す。(直流電流)
一方で、以下のグラフのように、リアクトル分を増加させると脈動成分が小さくなり、立ち上がりも線形的になる。
まとめ
今回は、単相全波整流回路における抵抗負荷電流を立ち上がりをシミュレートした。今回のような回路条件では、定常状態と過渡状態をうまく分離して考察することが大切である。また、リアクトルを大きくすると脈動成分が小さくなり、立ち上がりも線形的になる。このような背景から単相全波整流回路は交流から直流に変換する電源装置の一部(変換器)の役割をすることが多いといえる。
参考文献