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はじめに

電圧、電流、インピーダンス、皮相電力は、電気回路の状態を表す基本的な4要素である。しかし、4つのうち2つの要素さえ求まれば、オームの法則、電力の式によってすべての要素を求めることができ、それらは一意に決まる。しかし、それらの物性的な単位はすべて異なっており、比較することや計算をするのが複雑になる場合がある。そこで、基準となる物理量(一般的には基準容量)を定め、それの何倍かをp.u.という無次元量の単位で表したものを単位法という。なので、基本的に、基準となる物性量で除するのだが、レジスタンスの役割を果たすインピーダンス計算だけ、基準容量が定義上分子側に来る。つまり、単位法ではインピーダンスは基準容量に比例してしまう。なので、このことについて、電験一種の二次試験、電力管理の問題と絡めて考察する。

単位法の導入

単位法では、基準となる物性量をあらかじめ決定して、それの何倍になるかを考察する。したがって、目的の絶対物性量を基準物性量で除することで、単位法における相対値を得ることができる。
したがって、以下のように電気回路における4要素の単位法を定義することができる。

このうち、電気の勢いを表す電圧と電流の単位法表記は以下のようになる。ただし、変換後の単位法の値を小文字で示すものとし、$E_B,I_B$は基準値とする。

v[\mathrm{p.u.}]=\frac{E[V]}{E_B[V]},i[\mathrm{p.u}]=\frac{I[A]}{I_B[A]}

一方で、電気の勢いを妨げる、レジスタンス系のもの、つまりインピーダンスは、以下のように定義される。

z[\mathrm{p.u.}]=\frac{Z[\Omega]}{Z_B[\Omega]}

ここで、$Z_B$つまり、基準となるインピーダンスは以下のように定義することができる。

Z_B[\Omega]=\frac{E_B[V]}{I_B[A]}

また、単位法での基準として基準容量$S_B[VA]$が多用される。そこで、皮相電力の単位法表記は以下のようになる。

s[\mathrm{p.u.}]=\frac{S[VA]}{S_B[VA]}

インピーダンス

上記の事項をもとに、単位法におけるインピーダンス[p.u.]と基準容量[VA]の比例関係を示す。

z[\mathrm{p.u.}]=\frac{Z[\Omega]}{Z_B[\Omega]}=\frac{Z[\Omega]}{E_B[V]/I_B[A]}=\frac{Z[\Omega]I_B[A]}{E_B[V]}=\frac{Z[\Omega]I_B[A]\times E_B[V]}{E_B[V]\times E_B[V]}=\frac{Z[\Omega]S_B[VA]}{(E_B[V])^2}

ゆえに、$z$[p.u.]は基準容量に比例するということに注意する。

電験について

電力容量からインピーダンスの変換

令和3年の問6の問題を参考にする。

問題の詳細な情報は電験王様を参照して欲しい

ここでは、重要な箇所のみを述べる。

基準容量$S_B=10[MVA]$とする。このとき、電力コンデンサの(無効電力)容量は、$Q=200[kvar]$であるものとする。

ここで、このコンデンサのリアクタンス[p.u]を求めたい。

基準容量[VA]とインピーダンス[p.u.]は比例するので、

x[\mathrm{p.u.}]=1.0[\mathrm{p.u.}]\times \frac{S_B[MVA]}{Q[kvar]}=1.0[\mathrm{p.u.}]\times \frac{10\times 10^6[VA]}{200\times 10^3[var]}=50.0[\mathrm{p.u.}]

これについてもう少し詳しく考えると以下のようになる。

Q[var]=E_BI_C=E_B(\frac{E_B}{X_C})=\frac{(E_B[V])^2}{X_C[\Omega]}

したがって、

X_C[\Omega]=\frac{(E_B[V])^2}{Q[var]}

となる。ここで、基準容量$S_B[VA]$については以下のような式が成立する。

X_B[\Omega]=Z_B=\frac{E_B}{I_B}=\frac{E_B\times E_B}{I_B\times E_B}=\frac{(E_B[V])^2}{S_B[VA]}

したがって、$x[\mathrm{p.u.}]$は以下のようになる。

x[\mathrm{p.u.}]=\frac{X_C[\Omega]}{X_B[\Omega]}=\frac{(E_B[V])^2}{Q[var]}/\frac{(E_B[V])^2}{S_B[VA]}

これを整理すると、

x[\mathrm{p.u.}]=1.0[\mathrm{p.u.}]\times \frac{S_B[MVA]}{Q[kvar]}=1.0[\mathrm{p.u.}]\times \frac{10\times 10^6[VA]}{200\times 10^3[var]}=50.0[\mathrm{p.u.}]

となる。

電力の変換

令和1年の問4の問題を参考にする。

問題の詳細な情報は電験王様を参照して欲しい

以下、重要な箇所のみを述べる。

送電線の負荷として、以下のような特性をもつ負荷がある。

無効電力:$Q_r=4V_r-3$[p.u.]

ただし、基準容量$S_B$は600[MVA]であるものとして、送電端電圧$V_s$は常に、1.0[p.u.]とし、受電端電圧$V_r$[p.u.]は変動する可能性があるものとする。

この負荷を基準容量$S_B$は1000[MVA]での単位法換算に修正したい。

まず、$Q_r$[MVA]は以下のように表すことができる。

Q_r[\mathrm{MVA}]=(4V_r-3)[\mathrm{p.u.}]\times 600[\mathrm{MVA}]

これを、新たな基準容量1000[MVA]で除することで、以下のように無効電力の単位法換算をすることができる。

Q_r[\mathrm{p.u.}]=\frac{Q_r[\mathrm{MVA}]}{S_B[\mathrm{MVA}]}=(4V_r-3)[\mathrm{p.u.}]\times 600[\mathrm{MVA}]/1000[\mathrm{MVA}]

このように、電力[VA]を電力[p.u.]に変換する場合は、基準容量で除する必要性があるが、電力(消費[W]or無効[var]or皮相[VA])をインピーダンス[p.u]に変換するためには、基準容量を掛ける必要性がある。このことは大変紛らわしいので注意が必要である。

まとめ

今回は、電力の絶対値から単位法のインピーダンスに変換する方法と電力の絶対値を電力の単位法にする方法の差異について学んだ。単位法の定義上原則は、基準で除することではあるが、インピーダンスの場合は、基準容量を掛ける必要性が出てくる。(基準容量に比例する)なので、そのことに十分注意して計算をおこないたい。

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