はじめに
はしご型に抵抗を接続していった場合の合成抵抗計算は、電験理論科目の試験などで数多く出題される。今回は、無限に抵抗をはしご状に接続させた回路の合成抵抗について、数列の漸化式と連分数を用いた解法についてそれぞれ示し、最後にプログラムによってどのような値に収束するかを調査する。
問題設定
以下のような回路で考える。この回路の合成抵抗を求めたいのだが、無限回演算する訳にもいかないので、漸化式などの極限計算を用いて工夫をすることが大切である。
ただし、$R_1=100[\Omega],R_2=24[\Omega]$とする。
漸化式を用いた解法
このままでは、扱いづらいので、はしごをn個接続させたときと$n+1$個接続させたときの関係性について調べてみると以下のような関係になることが分かる。
したがって、これを式で表すと以下のようになる。
R_{n+1}=R_1+\frac{R_n R_2}{R_n +R_2}
ここで、十分にはしごを繋げたと仮定すると、$n\rightarrow\infty,n+1\rightarrow\infty$より、
$R_{n+1}=R_{n}=R_{\infty}$
ただし、$R_{\infty}$は収束して、一定値になると仮定する。
ゆえに、以下の式が成立する。
R_{\infty}=R_1+\frac{R_{\infty}R_2}{R_{\infty} +R_2}
したがって、この式を整理すると以下のようになる。
R_{\infty}^2-R_1R_{\infty}-R_1 R_2 =0
ここで、$R_1=100,R_2=24$を代入すると、
R_{\infty}^2-100R_{\infty}-2400 =0
(R_{\infty}-120)(R_{\infty}+20)=0
R_{\infty}=120,-20
ここで、$R_{\infty}>0$より、$R_{\infty}=120[\Omega]$となる。
連分数を用いた解法
同じ回路が繰り返し接続されたような回路では、連分数という概念を用いて解くこともできる。
R_{\infty}=R_1+\frac{1}{\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_1+\cdot \cdot \cdot }}
と表すことができるため、共通部部分$R_{\infty}=R_1+\cdot \cdot \cdot$とすると、
R_{\infty}=R_1+\frac{1}{\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_{\infty} }}
となり、
R_{\infty}=R_1+\frac{R_{\infty}R_2}{R_{\infty} +R_2}
となることから、以下同様の計算を行うことで$R_{\infty}=120[\Omega]$となる。
プログラム
それでは、漸化式を再帰のPythonプログラムで表して、合成抵抗の収束状況を見ていこう。
以下のプログラムを書く。
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
import numpy as np
R_1 =100
R_2 = 24
#再帰的に漸化式から値を推定
def resistance(n):
if n ==1:
return R_1+R_2
else:
return R_1+R_2*resistance(n-1)/(R_2+resistance(n-1))
#グラフ化
plt.title("ハシゴ型抵抗の合成抵抗値[Ω]")
plt.xlabel("n")
plt.ylabel("合成抵抗値[Ω]")
#n=1から10までを計算する
for i in range(1,20):
plt.scatter(i, resistance(i))
plt.show()
これを実行することで、以下のようなグラフが出力される。ただし、計算に時間がかかるので、はしごの個数nを1から20までとした。
このように、見事に$120[\Omega]$付近に収束していることが分かる。
グラフをよく見ると$n=3,4$あたりで既に120付近にいることから、これくらい用意すれば無限大(十分な長さ)という条件はクリアしそうである。
まとめ
今回は、無限はしご型回路の合成抵抗を漸化式や連分数の極限を取ることで導出した。また、計算時間はかかるが、再帰のプログラムを実行することにより、はしごを3個程度繋げれば、無限大という条件はクリアできそうだと言うこともわかった。今回の問題は有名問題なので、ぜひとも解き方を身に着けよう。