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水力発電の比速度について

Last updated at Posted at 2024-06-22

はじめに

電験の電力科目の水力発電に、水車の比速度という概念がある。これは、落差1[m]で1[kW]の相似な仮想水車が存在していると仮定したときの回転速度という意味である。一般に、水車を設置する落差や規模は環境に依存する。したがって、比速度を用いれば、すべての水車を同じ基準で比較することができるようになる。今回は、比速度について簡潔に紹介した後に、落差と出力と比速度の関係を水車の回転数を一定という条件のもとグラフ化してみる。これにより、3つのパラメーターの関係性について調査する。

hisokudo_phns.png

比速度の定義

前述するとおり、ある水車について落差1[m]で1[kW]の相似な仮想水車が存在すると仮定したときの回転速度を比速度と定める。
導出は以下の記事を参考にされたい。エネルギー保存の法則と流量と速度の関係を使用するようである。

さて、比速度は以下の式で表すことができる。

N_s=N \frac{\sqrt{P}}{H^{5/4}}

ただし、水車の出力は$P[kW]$であり回転速度は$N[min^{-1}]$であるとする。

公式の導出

水車の出力P[kW]は流量Q[$m^3/s$]を用いると以下のように表すことができる。

P=gQH\eta

ただし、$g,\eta$は重力加速度と水力発電の効率とする。

また、水路は半径rの円筒管であるとすると、

Q=Av=(\pi r^2)v

ただし、$v$は流速[m/s]として円筒管の断面積は$A=\pi r^2$であるとする。

次に下図のような水車においてrと回転数Nの積は流速に比例するので、

image.png

v=r\omega =  K_1 r (2 \pi N/60)=K_2 (rN)

と表すことができる。したがって、エネルギー保存の法則より$v=K_3 \sqrt{2gH}[m/s]$であることを考慮して、

r=\frac{v}{K_2 N}=\frac{K_3\sqrt{2gH}}{K_2N}

となる。これらを用いて水力発電出力Pを計算すると以下のようになる。

P=gQH\eta=g(v \pi r^2)\eta=g(K_3 \pi \sqrt{2gH}  r^2)H\eta=K_4 H^{3/2}r^2=K_5 H^{3/2}(\frac{\sqrt{H}}{N})^2

つまり、

P=K_6 \frac{H^{\frac{5}{2}}}{N^2}

と表すことができる。ただし、K郡は定数である。

ゆえに、

N=\sqrt{K_6} \frac{H^{\frac{5}{4}}}{P^{\frac{1}{2}}}=k \frac{H^{\frac{5}{4}}}{P^{\frac{1}{2}}}

ここで、H=1[m],P=1[kW]である仮想的な相似水車における回転速度つまり比速度を求めると以下のようになる。

N_s=k \frac{1^{\frac{5}{4}}}{1^{\frac{1}{2}}}=k

したがって、

N= N_s  \frac{H^{\frac{5}{4}}}{P^{\frac{1}{2}}}

ゆえに、

N_s=N \frac{\sqrt{P}}{H^{5/4}}

この式の導出は『風車出力は風速の3乗に比例する』の証明と同じ考え方で、具体的にPはHやNの何乗に比例するかと考えると上手くいく。

グラフ化

さて、横軸を比速度、縦軸を有効落差、高さを水車の有効電力出力としたときのグラフを描写するために以下のプログラムを書いた。

python hisokudo.py
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
import math 

n=1000
P=np.linspace(100,1000,n)
H=np.linspace(100,600,n)

P,H = np.meshgrid(P,H)

#電源周波数
f=50
#極数
p=20
#水車の回転数(発電機と直結)
N=120*f/p

N_s=N*(P**0.5)/H**(1.25)



plt.xlabel("N_s[m・kW]")
plt.ylabel("H[m]")

plt.contourf(N_s,H,P)
plt.colorbar(label="P[kW]")
plt.savefig("hisokudo_phns.png")
plt.show()

これを実行すると以下のようなグラフになる。

hisokudo_phns.png

前提条件として、水車の回転速度は固定とした。
このグラフより、実際の水車の有効落差が高いほど比速度は遅くなるようである。また、出力を大きくするためには、有効落差と比速度の両方を向上させなければならないため、効率の良い水車を建設するためには、できるだけ最新の技術を用いたほうが良いかもしれない。しかし、低落差から中落差に対応するフランシス水車を高落差で運用すると、キャビテーションが発生してしまうため、あまり実用的ではない。

まとめ

今回は、水車の比速度について関連するパラメータと比較するためにグラフ化をした。すると、比速度は水車の落差が大きくなると低下するということが分かった。さらに、大きな出力を得るためには、背反する有効落差と比速度の両方を上昇させないといけないということも分かった。なので、出力の大きな水車を建築するためには、最新の技術を用いるべきである。

参考文献

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