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EFFがGitHubに送ったyoutube-dlに関するメール

Last updated at Posted at 2020-11-18

2020年11月15日、EFF(電子フロンティア財団)がGitHubに、「youtube-dlは米国著作権法やDMCAに違反しないこと」を旨としたメールを送信しました。その内容が公開されています。これもCC BY 3.0 USで公開されているようなので、訳しておきました。

Re: youtube-dlリポジトリの公開停止について

GitHubのDMCA担当者様、

電子フロンティア財団は、開発にGitHubを利用するフリーソフトウェアyoutube-dlの現時点での開発者を代表します。既知の通り、GitHubはアメリカレコード協会が2020年9月21日に送付した要求に基づき、youtube-dlリポジトリを無効化しました。

GitHubが、自由でオープンソースなソフトウェアの開発者の権利を保護し、またRIAAの文書にある主張に対処するためのyoutube-dlについての詳細な情報を提供してくれたことに感謝します。まず、youtube-dlは著作権を侵害し、また侵害を促進することはなく、単体テストにある著作権の存在する曲への参照はフェアユースです。ただし、それにもかかわらずyoutube-dlの開発者はこの参照を置き換えています。そして、youtube-dlは、YouTube動画に対する技術的保護手段1を「回避」しないためDMCAの第1201条に違反しません。同様に、YouTubeの「署名」や「rolling cipher」というメカニズムは、動画の複製を制限しません。以下、詳しく説明します。この情報を検討したうえで、GitHubがyoutube-dlリポジトリを再び有効化することを願っています。

youtube-dlとは

youtube-dlは、YouTubeを含むさまざまなウェブサイトにアップロードされた動画をストリームし、またはダウンロードするコマンドラインユーティリティー2です。2006に公開され、世界中で様々な人により利用されています。ジャーナリストや人権団体が発見した動画を保存するため、先生が学校で使うため、YouTuberが自分の動画のバックアップをとるため、そして世界中のユーザーが標準的なウェブブラウザーを動かせないハードウェアで動画を視聴したり、遅く、または信頼性のないインターネット回線で動画を高画質で視聴したりするために使われています。

youtube-dlはウェブブラウザーの代わりにユーザーがアップロードした動画に対しウェブブラウザーと同様に動作します。重要なことに、youtube-dlはNetflixなどのサブスクリプション制動画サイトで使用されているWidevineのような、商業用DRM技術で暗号化された動画ストリームを解読しません。

youtube-dlの単体テストが販売されている音楽を参照している件

RIAAの手紙は、youtube-dlのソースコード内にあるひとつのファイルのソースコードが複数の著作権の存在する音楽を参照していることに言及しました。当該ファイルには、複数の種類の動画をストリームする、youtube-dlの機能を検証する自動化されたテストが含まれています。youtube-dlのソースコードには、当然のことながら音楽の複製物は含まれていません。っして、たくさんあるテストの中に著作権の存在する音楽へのリンクが含まれていることは、複数の理由から著作権侵害を促進しません。まず、このファイルは、RIAAの主張と異なり、際立って目立っているようなものではありません。次に、この単体テストは参照された音楽を永久的に保存したり、再配布するようなものではありません。youtube-dlの機能を確認するために各曲の数秒ほどをストリームするだけです。個人で作成されたソフトウェアの機能を確認するために曲の一部分を永続しない方法でストリームすることは、フェアユースに該当します。要求されたストリームのコピーを保存するのはyoutube-dlの一つの機能に過ぎず、youtube-dlは動画を再配布しません。このため、単体テストは参照された音楽の複製や再配布を促進しません。youtube-dlの開発者はこのツールを使用して著作権を侵害することを推奨せず、またそうした目的のために広告しません。

youtube-dlのコード内にて著作権の存在する音楽を参照する自動化されたテストが存在することによって、著作権は侵害されませんが、開発者はこれらを著作権の存在する音楽を含まない動画への参照で置き換えています。これによってGitHubはリポジトリを再び有効化できると願っています。

YouTubeの「署名」コード

一部の動画に対して、YouTubeは「署名」と呼ばれるメカニズムを利用しています。以下は私たちが確認した実装です: 視聴者がYouTube動画を要求したとき、YouTubeサーバーはブラウザーに小さなJavaScriptプログラムを送り、YouTubeプレイヤーページに埋め込まれます。このプログラムは「sig」という数を計算し、ブラウザーがYouTubeに対し実際の動画を取得するためのURLの一部として使われます。このメカニズムは、プレイヤーページのソースコードを閲覧すればだれでも確認できます。動画は暗号化されていないため、動画にアクセスするために秘密は不要です。JavaScriptは数百万のウェブサイトにて使用されるユビキタスな技術でたくさんのプログラムによって解釈可能です。ソフトウェアがYouTubeによって許可されたかにかかわらず、JavaScriptコードを実行できるソフトウェアはすべて動画のURLを取得しストリームにアクセスできます。たとえると、外国語で何か書かれたドアに遭遇した旅人のようなものです。翻訳すると、「「友達」と唱えると入ることができます」とあります。旅人が「友達」と言うとドアが開きます。このドアに書かれたことのように、YouTubeは動画にアクセスするための方法を、尋ねられたらすべての人に提供しています。

youtube-dlは、署名メカニズムに関してはブラウザーと同様に動作します: YouTubeから送られたJavaScriptプログラムを解釈し、署名値を計算し、動画をストリームするためYouTubeに送信します。youtube-dlにはYouTube動画にアクセスするためのパスワード、キーその他の秘密は含まれていません。YouTubeがすべての視聴者に対して提供しているメカニズムと同じものを利用しています。

この「署名」が、RIAAが言及する「rolling cipher」であると推測します。ただし、YouTubeのJavaScriptコードはそのような語句を含みません。メカニズムの名前にかかわらず、YouTubeが動画にアクセスするための手段を要求する人すべてに提供しているため、youtube-dlはデジタルミレニアム著作権法第1201条(a)に掲げる「回避行為」は行っていません。連邦控訴審の最近の判決によれば、公開されたパスワードで利用制限手段は「回避」されません。(Digital Drilling Data Systems L.L.C.対Petrolink Services, 965 F.3d 365, 372 (5th Cir. 2020)参照。)「回避」は、著作権者の許諾なしに技術的手段を解読し、回避し、除去し、無効化し、または損なわせることです。Egilman v. Keller & Heckman, LLP., 401 F. Supp. 2d 105, 113 (D.D.C. 2005)では、「この定義では、著作権者の許諾なしに技術的手段を使用することは含まれていません」とあります。youtube-dlはYouTubeによって提供された「署名」コードを、回避せずブラウザーと同様に利用することから、技術的利用制限手段の回避はなく、YouTubeやRIAAの許諾がないことは無関係です。

同様に、youtube-dlは、「署名」コードが著作権者の権利の行使を制限しないため、DMCAの第1201条(b)にも違反しません。言い換えると、そのコードは動画のデータの複製を制限しません。JavaScriptプログラムを実行できるプログラムは、受信する動画を保存できるかどうかにかかわらず、すべてYouTubeの「署名」コードを実行できます。YouTubeコードは、Universal City Studios, Inc. v. Corley, 273 F. 3d 429 (2d Cir. 2001)で説明されたDVDディスクのCSS暗号化技術や、YouTubeの運営会社Googleが所有し利用するWidevine DRMとは大きく異なります。DMCAがこれらにどう適用されるかはここでは意見を述べませんが、CSSとWidevineの両方が秘密鍵を含むライセンスされたプレイヤーを必要としていて、それらが利用を制限し秘密を守る契約を結んだベンダーにのみ配布されていることは言及しておくべきでしょう。YouTubeの署名コードは、それらと違い、すべての視聴者に配布され、秘密は含まれません。YouTubeは、Widevineと異なり、署名コードの利用にウェブブラウザーのベンダーとのライセンスや秘密保持契約を必要としません。

RIAAが参照した、YouTubeの署名メカニズムに言及するドイツのハンブルク地裁の2017年の判決は、不当であり、米国では適用されません。その裁判所はどうやら裁判官がJavaScriptに詳しくないため、署名コードの使用は一般利用者の能力を超えていると判決したようです。そのため、裁判所はコードがDMCA第1201条と似たドイツの法律のうえで有効な技術的手段となると述べました。この分析は、すべてのブラウザーや類似のソフトウェアに組み込まれた、署名メカニズムの使用を一般利用者の能力の範囲内とするJavaScriptの普遍性を過小評価しています。ハンブルク地裁の分析の影響は極めて幅広い範囲に影響します: これでは、技術的手段の回避に関する法律が、ソースコードの形では一般利用者にはわかりにくい内容であってもブラウザーでは簡単に解釈される、単純なプレインテキストのものを除くすべてのウェブページに適用されてしまいます。ハンブルク地裁の判決は米国のDMCAとは整合性がなく、米国の裁判所では適用されません。

簡単に言うと: youtube-dlは著作権法やDMCAに違反しません。EFFとyoutube-dlの開発者はGitHubにてプロジェクトを運営する開発者の権利のために立ち向かうGitHubに対し感謝します。この説明により、youtube-dlリポジトリが復元され、GitHubがこの人気で重要なツールの居場所としてあり続けることを期待しています。

感想

「裁判官がJavaScriptに詳しくない」とあるが、これはコインハイブの東京高裁にも言えるのではないだろうか。


  1. 原文では"technical protection measures"となっていて、このまま訳しましたが、のちの文が技術的保護手段に言及していることから、日本の著作権法の「技術的利用制限手段」ではないかと思っています。 

  2. ただし、他の使い方もできます。 

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