この記事のめあて
- ITエンジニアにもビジネスフレームワークが必須であること
- ビジネスフレームワークは多数あって戸惑いますが基本はMECEとロジックツリーであること
- MECEは横
- ロジックツリーは縦
背景
- Qiitaを読んでいるエンジニアだからこそ、ビジネスフレームワークは必要なんです
「フレームワーク」というと「型」ですよね。ITで言えば開発のSpring, Django, 運用だったらITILとか、データ分析だったらPyTorchとか。でもITって世の中の役に立つためにあるので、世の中の困りごと特に、ビジネスの問題を解決するために、という側面もある。というかそれが大きい。
ワンランク上、行きたいですよね。そのためのフレームワークである、ビジネスフレームワークです。
開発系やデータ分析系であれば要件定義で必須です。NI、インフラ系ではあまり必要ないと思われるかもですが、ただ安全高速なインフラを提供だけでしたら価格競争に陥る。例えば営業向けインフラ提案でも客先のビジネスモデルによって、個々の営業が自由に動けるようなリモート重視なのか、定期的にはオンサイトでのミーティングが必要なのか(であれば1箇所に集中させるのか、任意のリモートオフィスでも安全快適なミーティング環境を作るのか)等々客先の状況、他社との差別化提案などがないと1ランク上にはいけないですよね。
ITを突き詰めてスペシャリストになるもよしですが、上位の技術営業になる、ITコンサルを目指したいなんて方にも必須ですね。
関連情報
この記事なんかがQiitaでは有名ですが、
経産省のビジネススキル標準
データサイエンススキルリスト
にもビジネスフレームワークが必要との言及があります。あるんですよ。1ランク上に行きましょうよ。
- 「ビジネススキル標準」に明示的に挙げられているもの
- PEST、3C、5Forces、SWOT、STP、4P、バリューチェーン
- データサイエンススキルリスト」で明示的に挙げられているもの
- MECE, So What?/Why So?
ですがそれらの他によく使う
- PDCAを加えて、整理してみました!
でもね、ロジカルシンキングとか、ビジネスフレームワークの本を読むとたくさんのフレームワークがあってわかんないじゃん。
代表的な書籍
ここら辺には書いてあるのですが、ITの方にはあまり馴染みなくないですか。
ビジネス(である程度上に行く)人には常識です。ITもビジネスの一部なので、そこを目指しましょうよ。
これらの本にも書いてあるんですけど、なんでこんなにたくさんあるんだーというビジネスフレームワークも実は2つだけなんですよ基本は。
基本は2つ。MECEは横、ロジックツリーは縦
- MECE
- ロジックツリー(So What?/Why So?)
実はこれだけなんです。これが使える人が上に行けます。
ほぼ全てのビジネスフレームワークはこれを実施しているだけです。これを具体の問題に適用した結果、「これとこれはしょっちゅうあるよねー」とテンプレ化したのがいわゆるビジネスフレームワークになってます。
MECEは漏れなくダブりがないように思考の横を意識する
ロジックツリーはなぜそう言えるのか、つまり何が言えるのかと思考の縦を意識
- また、ロジックツリーで考える時は同じレイヤーではMECEを意識する
これが全ての基本であり、そのた多数あるSWOT、5Forces、PESTなどはこれらの思考法を適用した時に共通して現れるものをテンプレートしたもの。
- 極論すれば多数のフレームワークをまる覚えするのは意味がなく、MECEとロジックツリーだけを使いこなせれば他のフレームワークはいらない、と言える
- ただ頻出のテンプレートとしてのフレームワークは日常使いとして、覚えにいくのではなく馴染ませることが必要
- ビジネスフレームワークの基本はMECEとロジックツリー
- 他のビジネスフレームワークは2つを適用したテンプレート
テンプレートとしてのビジネスフレームワーク
-
汎用としてのテンプレート
- 状況分析
- SWOT
- 施策の進捗確認
- PDCA
- 状況分析
-
役割が決まっているテンプレート
- 状況分析
- 外部環境
- PEST
- 内部(自社)環境
- バリューチェーン
- 外部環境
- 戦略立案の基礎情報整理
- 3C
- 5Forces
- 市場調査・マーケティング
- STP
- 4P
- 状況分析
-
関係性を図示すると下記
-
ケースバイケースですが
- 汎用(「役割特化」のビジネスフレームワークと連携しながら)
- SWOTで外部と内部の状況の整理
- 強み・機会を活かし、弱み・脅威を避けることを考える
- PDCA
- 計画通りにことが運んでいるかを確認し、必要に応じ次のアクションの再検討
- SWOTで外部と内部の状況の整理
- 役割特化(「汎用」のビジネスフレームワークと連携しながら)
- PEST、バリューチェーン
- 外部環境と内部環境の現状を把握
- 3C、5F
- 内部と外部の環境から戦略立案の基礎情報整理
- STP、4P
- (市場に売っていく場合の例としてですが)
- 市場の状況から自社の立ち位置を決め、具体的な施策に落とし込んでいく
- PEST、バリューチェーン
- 汎用(「役割特化」のビジネスフレームワークと連携しながら)
各論
MECEは横、ロジックツリーは縦の思考法
- MECE
- Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveであり、日本語で言うと「漏れなくダブりなし」
- 議論時に漏れがあるとそれについて議論ができていない。ダブりがあるとダブり部分にどちらの結果が適用されるかわからない。漏れなくダブりなく議論しましょうと言うこと
- 例示すると
- 「若い女性と主婦」というとダブりあり(そもそも「若い女性」の範囲が不明)
- 「会社員と自営業」というとフリーランスなど漏れあり
- 図で描くと下記
ダブりあり | ダブりなし | |
---|---|---|
漏れあり | ![]() |
![]() |
漏れなし | ![]() |
![]() |
- ロジックツリー(So What?/Why So?)
- ロジックツリーは、物事を体系的に整理し、原因や施策を論理的に掘り下げたり抽象化したりする思考法のこと
- 2つの方向性:ロジックツリーには以下の2つの方向性がある
-
Why So?(なぜそれが発生したのか)
- 最上位の概念や事象を出発点とし、その原因を掘り下げていく思考法
- 例: 売上が減少した → 主な原因は何か? → 商品の認知度不足?競合の影響?需要の低下?
- 最上位の概念や事象を出発点とし、その原因を掘り下げていく思考法
-
So What?(そこから何が言えるのか)
- 現場での具体的な事象を出発点とし、それが示唆するものを抽象化していく思考法
- 例: 顧客アンケートで「商品が高い」という声が多い → 価格戦略を見直す必要がある?新しい価格帯の商品を導入すべき?
- 現場での具体的な事象を出発点とし、それが示唆するものを抽象化していく思考法
-
Why So?(なぜそれが発生したのか)
- 同じレイヤー間ではMECEになっている必要がある
- ポイント
- Why So? は原因追求に使われ、問題解決の「背景」を理解するために有効
- So What? は施策立案に使われ、次のアクションや全体像を整理する際に役立つ
- 最終的にはこのようなロジックツリーが出来上がる
基礎となるビジネスフレームワーク
SWOT
-
マトリクス(ある対象を4象限のマトリクスに分けてMECEで考えるフレームワーク)の一例としてよく使われるもの
- 内部環境と外部環境にわけそれぞれプラス要因とマイナス要因を挙げる
- 強み・弱み、機会・脅威の掛け合わせで何ができるか、避けられるかを挙げる
-
4つに分けて考えるのはMECEの応用であり、要因から施策を考えるのはロジックツリーの応用
SWOT プラス要因 マイナス要因 内部環境 強み(Strengths) 弱み(Weaknesses) 外部環境 機会(Opportunities) 脅威(Threats) \Downarrow
SWOT 内部環境 強み 弱み 外部環境 機会 これを活かして何ができるか 機会で弱みを克服できるか 脅威 強みで脅威をどうかわすか どう避けられるか
PDCA
- 計画・実行・確認・改善という計画実施に際に必要な行動をMECEで挙げたテンプレート。ActionからPlanを、CheckからActionを考えるのはロジックツリーの応用
- 計画をたて
- 実行をし
- 計画との差異を確認
- 改善の行動を取る
PEST
- 外部環境について政治・経済・社会・技術で考えるフレームワーク。MECEの応用であり、抽象化・具体化を考えるのはロジックツリーの応用
カテゴリ | 意味 | 概要 |
---|---|---|
Political | 政治的要因 | 税制、規制法、など政府が自社ビジネスにどのような影響を与えるか |
Economic | 経済的要因 | 景気、為替レート、インフレ率、金利などの経済状況が自社ビジネスにどのような影響を与えるか |
Sociocultural | 社会文化的要因 | 文化意識、人口・年齢構成などが自社ビジネスにどのような影響を与えるか |
Technological | 技術的要因 | 技術的変化が自社ビジネスにどのような影響を与えるか |
バリューチェーン
マイケルE. ポーター. [新版] 競争戦略論I. ダイヤモンド社, 2018, 455p. を元に作成
3C
- 戦略立案のための基礎整理として、顧客、競合、自社の観点で市場環境を分析するビジネスフレームワーク。大前研一が提唱した。3つに市場環境を分けるのはMECEの応用でありそこから戦略を考えるのはロジックツリーの応用
5F
- 5つのFとも呼ばれる。供給者、買い手、代替品、新規参入者、既存企業の競争から市場を分析するビジネスフレームワーク。マイケルポーターが提唱した5つの要因(力)からその業界の魅力を測る。市場を5つに分けるのはMECEの応用。そこから戦略を考えるのはロジックツリー
STP
- 市場環境から自社の立ち位置を決定するプロセスのフレームワーク。ここのプロセスがMECEであることとSTPが、なぜそのセグメントに絞るのか、どこをターゲットにするのか等がロジックツリーの考え方の応用ともなっている
-
Segmentation(セグメンテーション)
- 市場を顧客層で細分化するプロセス
- 顧客の属性(例: 性別、年齢)、購買履歴(例: RFM分析)、行動特性、心理的要因、製品価格帯や嗜好性など、多様な観点でセグメントを分ける
-
Targeting(ターゲティング)
- セグメント化した市場から、ビジネスの目的や競争優位性に基づき、どのセグメントを優先して狙うかを決定するプロセス
- 目標とする顧客層を具体化することで、マーケティング戦略の焦点を絞る
-
Positioning(ポジショニング)
- ターゲットとするセグメントのニーズや競合他社の戦略を踏まえ、自社製品・サービスの「独自の立ち位置」を決めるプロセス
- 競合と差別化し、顧客に対して価値提案を明確に伝える。これには、ブランドイメージや価格設定、メッセージ戦略などが含まれる
-
Segmentation(セグメンテーション)
4P(4C)
- 市場を捉えるためにマーケティングで打てる手を分類し総合的な施策にしようというマーケティングミックスの考え方のビジネスフレームワーク。これも打ち手をMECEで分類している応用例。4Pにまとめる、あるいは4Pから施策に落とすのはロジックツリーの応用
- また4Pは企業視点のため、それを顧客視点から見た4Cも提案され、4Pがきちんと顧客視点の4Cに対応しているかで判断する方法もある
カテゴリ | 意味 | 概要 |
---|---|---|
Product | 製品 | サービス、品質、デザイン、ブランド等 |
Price | 価格 | 割引、支払条件、信用取引 等 |
Place | 流通 | チャネル、流通範囲、立地、品揃え、在庫 等 |
Promotion | プロモーション | 広告等 |
カテゴリ | 意味 | 概要 |
---|---|---|
Consumer | ニーズやウォンツ | 消費者のニーズやウォンツにその商品が対応できているか |
Customer Cost | 顧客目線でのコスト | 商品価格が顧客目線でのコストに見合っているか |
Convenience | 便利さ | 顧客の利便性に対応した流通ができているか |
Comunication | コミュニケーション | 顧客とコミュニケーションが取れるプロモーションとなっているか |