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【決定版】需要予測・市況予測のための時系列分析の本リスト

Last updated at Posted at 2021-12-30

時系列分析関連の本としては下記などの記事があり、被っている本もありますが、需要予測・市況予測がメインだった私の観点と違う面もあるのでまとめてみました。


時系列解析

タイトル 入門/実装/理論 推奨度 概要
時系列分析と状態空間モデルの基礎:
RとStanで学ぶ理論と実装

入門・実装R 通称「隼本」。Rで時系列分析をするならばまず最初の1冊として必読
  • 下記、時系列分析で必要な知識の概要がほぼ網羅されており分野を俯瞰出来、Rで試しながら読み進められる。
    • 時系列データの特徴
    • ARIMA、VAR、GARCHをはじめとする時系列データの統計モデル
    • それを拡張している状態空間モデル
    • 状態空間モデルのエンジンとしてのベイズ推論やMCMC
  • 本書でこの分野を一通り試した後、後述の「沖本本」『経済・ファイナンスデータの計量時系列分析 (統計ライブラリー)』で理論を補強するのがRで時系列分析をする王道かと思います(この記事の著者青木はこの本が出る前に学んだので苦労した、、、)。
  • また、著者のブログ「Logics of Blue」は時系列分析を初めデータ分析一般で非常に参考になります。
基礎からわかる時系列分析
―Rで実践するカルマンフィルタ・
MCMC・粒子フィルター
(Data Science Library)

入門・実装R 上記「隼本」と同レベルだが状態空間モデル寄り
  • 「隼本」の方が時系列データの特徴など満遍なく、本書は状態空間モデルに重点といった感じです。
  • 本書もコード例が豊富ですが、時系列データの取り扱いが初めてならば、「隼本」→(状態空間モデルが必要ならば)→本書、という位置づけでしょうか。
時系列解析: 自己回帰型モデル・
状態空間モデル・異常検知
(Advanced Python)

入門・実装Python Pythonならば最初の1冊として必読
  • 下記、時系列分析で必要な知識の概要がほぼ網羅されており分野を俯瞰出来、Pythonで試しながら読み進められる。
    • 時系列データの特徴
    • ARIMA、VAR(GARCHはなし)をはじめとする時系列データの統計モデル
    • それを拡張している状態空間モデル
    • 状態空間モデルのエンジンとしてのベイズ推論(MCMCはなし)
    • 時系列異常検知
  • 上記の「隼本」と同様に入門として良いと思います。この後に「沖本本」に進められます。
Rによる時系列分析入門
入門・実装R Rでやるならば隠れ推し本
  • 地味で古くあまり知られていない本しかも品切れでAmazonだと中古しかない模様。
  • でもRでやるならば隠れ推し本。私はこの本でコード写経して時系列データの特徴を身につけた。
  • 状態空間など記載なく他書と比べて範囲は狭目ですが、周期・トレンドや自己相関といった時系列データの特性に対してRのライブラリや関数を用いて1つ1つコード例と説明があります。隼本などがある今となってはそちらで良いのかもしれませんがRでやるならば一度手に取っても良いかも。
実践 時系列解析
実装Python/R 入門書の次に
  • RとPythonを縦横無尽に使うなかなか無茶な本。だけど統計的な時はRが強いし機械学習ならばPythonが強く、時系列分析は両方の面があるので、無理に1言語にすることもないしな。
  • 時系列の前処理・EDA、ARIMAなどの時系列モデル、状態空間モデル、深層学習による時系列解析、ヘルスケア・金融・政府統計などの応用面など多岐にわたる解説とコード例がある。
  • 基礎を学ぶというよりも、他書である程度学んだ人がネタ探し、弱点補強的に読むと良いのではないかと思う。
経済・ファイナンスデータの
計量時系列分析 (統計ライブラリー)

理論 理論をしっかり学ぶなら
  • 「沖本本」として定評がある教科書(私は読んでいないが岩波書店の『時系列解析入門』も定評があるが品切れ。あるいはその改訂版『Rによる 時系列モデリング入門』でも良いかもしれない)。
  • 基礎概念/ARMA過程/予測/VARモデル/単位根過程/見せかけの回帰と共和分/GARCHモデル/状態変化を伴うモデル、と重要な概念についての解説があります。状態空間モデルはないですがそれ以外の主だったところは全て押さえていると思います。
  • 難しいけれど章末問題(数理的な、コードを書く的な両方)を解くことで理解が深まる。というか昔はこれくらいしかまともな本がなかったので。やや難しいので、数学が苦手な方は他のコード例が豊富な本で慣れながら本書を読むといいと思う。
  • Rのみですが、章末問題を解いたコードれいをQiitaに上げております『経済・ファイナンスデータの計量時系列分析』章末問題をRで解く-第1章時系列分析の基礎概念-
実証のための計量時系列分析
理論、EViewsやRのコード例 沖本本のもう一段階上
  • 沖本本の範囲をもう一段細かく突っ込んで解説という感じですね。需要予測の実務にということであれば沖本本までで十分かと思います。
  • 市況予測など計量経済学寄りにガッツリと行う必要がある、というような方向けと思います。
  • Eviewsというのは計量経済学でよく用いられる統計計算ツールです。サポートページにRの章末問題回答例があるようです。
カルマンフィルタ
―Rを使った時系列予測と状態空間モデル―
(統計学One Point 2)

簡単な理論解説とRコード例 Rで状態空間モデルに慣れるなら
  • 状態空間モデルとは時系列の値を、実際の値とそれを生み出す内部の状態に分けて、柔軟にモデリングしようというものです。それの上手い計算方法としてカルマンフィルタがあるって感じです。
  • そのカルマンフィルタについての解説と豊富なRコード例となっています。Rで状態空間モデルを扱うならば慣れるのにちょうど良い内容かと思います。
Rによるベイジアン動的線形モデル
(統計ライブラリー)

理論とRコード例 Rで状態空間モデルを本格的に扱いたいならば 本格的に扱うならば必要な本ですが、かなり難し目ですね。昔は他の本がなかったので手に取りましたがなかなか難解でした。他の本で慣れてから次に読む本かなと思います。
経済・ファイナンスのための
カルマンフィルター入門
(統計ライブラリー)

Excel、EViews、R等コード例 経済・金融指標を状態空間モデルで扱うならば
  • これも他の本で状態空間モデルになれた後、需要予測等ではなく市況予測で経済・金融指標を扱う必要がある、などの場合に取り組む本だと思います。
  • サポートページにExcel、EViews、Rのコード例があります。
ファジィ時系列解析 (統計学One Point)
入門 - 時系列解析にファジィ理論を応用するファジィ時系列解析の入門書。時系列データのトレンドなどを矩形で捉えるのではなく、ファジィ集合として柔軟に扱い実態を捉えようというものかと思いますが、申し訳ないですが私はあまり理解できませんでした。
Pythonによる異常検知
入門・実装Python 時系列異常検知を学ぶなら
  • 題名通り異常検知の本ですが、時系列異常検知についても1章を割いています。
  • 時系列異常検知の本は『時系列解析: 自己回帰型モデル・状態空間モデル・異常検知(Advanced Python)』以外にはほとんど見かけないので、この本で補強したい。
点過程の時系列解析
(統計学One Point)

入門・理論 SNSのバズりなどを分析するならば
  • 前述の別記事「時系列データ関連の本10冊読んだので書評書く。+4冊更新 2021年11月」では「時系列解析に使われる確率分布や一部モデリングの本。」と紹介されておりますが全く違います。
  • 一般に言われる「時系列分析・解析」とは秒、日、月など一定間隔の時間軸に対して値(その瞬間の値や一定期間の累積値)がどうなっているかですが、「点過程の時系列とは,データがある着目するイベントの発生時刻の集合として特徴付けられるようなタイプの時系列である。」とのことで何らかのイベントがあり、そのイベントの発生時刻を記録し、それがいつ起こるか密集しているか疎か(地震ならば次にいつ起こるか、SNSならばバズっているかどうかなど)を分析するもので、このページで紹介している他の本の「時系列」とは全く異なります。
  • 本書は入門としては難しいですが、点過程の和書はほとんどないのでまず手にとりたいですね。
  • 私が読んだ中ではウェブデータの機械学習 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)の「第2章 バースト検出」くらいですかね、参考となる和書は。
Pythonによるファイナンス 第2版
ファイナンスデータ
  • これはちょっと独特(私にとっては)
  • 金融データつまり時系列データの取り扱いについての事細かなPythonによるコード例。
Rによる計量経済分析
(シリーズ〈統計科学のプラクティス〉)

実装R 不要
  • 2011年刊行の計量経済学の本。VARやGARCHの解説もありますが、それならば同じくRの『時系列分析と状態空間モデルの基礎』を読めば良い。
  • 数年前は私も本書をよく参考にしましたが、時系列分析良書が多数出版された今となっては、少なくとも時系列分析を学ぶ意味では読む必要どは低い本と考えます。

状態空間モデルを学ぶための補足

  • RではdlmとKFASが代表的と思われる
  • PythonではstatmodelsやPycalmanライブラリ
  • R、Python共通でベイズ構造推定モデルのbstsライブラリがある
言語 状態空間モデルライブラリ
時系列分析と状態空間モデルの基礎: RとStanで学ぶ理論と実装 R KFAS
基礎からわかる時系列分析―Rで実践するカルマンフィルタ・MCMC・粒子フィルター(Data Science Library) R dlm
カルマンフィルタ ―Rを使った時系列予測と状態空間モデル― (統計学One Point 2) R KFAS
実践 時系列解析 R bsts
経済・ファイナンスのためのカルマンフィルター入門(統計ライブラリー) R dlm
時系列解析: 自己回帰型モデル・状態空間モデル・異常検知(Advanced Python) Python Pycalman
Pythonによる異常検知 Python statmodels

Pythonによるファイナンス 第2版

需要予測

  • 本記事の著者(青木)がデータ分析が仕事のため、データ分析をする者が、上記時系列分析の知識を元に需要予測するために参考となる本という立場で選らんでおります。
  • そのため、現場の販売担当者が需要予測をする参考に、という立場だと評が的外れなこともあるかと思いますが、前提が違うということでご容赦ください。
タイトル 入門/実装/理論 推奨度 概要
新版 この1冊ですべてわかる
需要予測の基本

入門 最初の1冊目として必読
  • 山本雄大著。旧版で物足りないところなどが大幅アップデートされました。このところ山本氏が積極的に執筆なされ、第一人者と言ってよろしいかと思います。
  • 単に「需要予測」と言っても、数年間の事業計画に紐づけるのか、1年程度の需給リスクを見るのか、1ヶ月程度の在庫・生産管理に紐づけるのか等々があり、あくまでもビジネスのどこに位置づけるのかが重要という説明から。技術的にも時系列での予測、因果モデルでの予測、人が判断するモデルがあり、また、データが豊富にある予測もあれば新商品でデータがない場合の予測もあるとの解説もあります。
  • また、時系列予測でもARIMAのような時系列モデルや機械学習によるモデル等、およそ「需要予測」と言った時にどこに気をつけ、どこが誤りやすいのか、ビジネスの目的によりどこに注力すべきか、わかりにくいところを俯瞰的に見つけることができると思います。
この1冊ですべてわかる
需要予測の基本

上記の旧版。古本等が出回ると思うので読んでもいいですが本書はやや物足りない面があったので、数千円を惜しんで古い知識とすることはないと思います。
需要予測の戦略的活用
―マーケティングとサプライチェーンマネジメント
(SCM)をつなぐ
(オペレーションズ・マネジメント選書)

入門・理論 2冊目に読みたい。社内推進のネタ本
  • 山本雄大著
  • 『新版 この1冊ですべてわかる需要予測の基本』の次に読む本という位置づけかと思いますが本書だけでも可。
  • 需要予測は統計や機械学習によるものだけが全てではなく、その全体像を目的別に示しています。
  • 需要予測の経営戦略の中での位置づけ、サプライチェーンとの関連、統計・機械学習による手法、データ管理、組織・人材面について書かれているので、需要予測PJの社内説得用のネタとしても使えるのかと思います。
在庫管理のための需要予測入門
入門 実際にデータにあたる方ならば2冊目に読んでおきたい
  • 「需要予測の本があまりないようです。理論的な詳しい本ではありませんが概要を見るにはよい本と思います。」と間の抜けた評を以前書いてしまいましたが需要予測の必要に迫られ改めて読みましたら、上記「新版」も出ましたので本書の有効度はやや下がってきましたがまだまだ有用と思います。
  • Amazon書評では「途中から中途半端な数式がたくさんでてきて辟易としました。この程度の数式ではとてもじゃないけど需要予測はできないかと思います。」と的はずれな評もありますが違います。1冊ですべてが分かるわけがないです。
  • 入門書としては、全体を俯瞰で見せる、次に深く進む取っ掛かりを与える、が重要と思います。本書にはそれがある。データがない新商品の場合、安全在庫の考え方、季節性、周期、トレンド、説明変数の種類など需要予測を本格的に取り組みましたが、ベースはほぼ本書にあり、この本の重要単語をキーにいろいろ調べて次に進めます。古い本ですが需要予測の細かない考え方を理解するのにはまだ有用と思います。
確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力
入門・理論 新たな市場を目指すなら必読
  • 上記までの本は既存市場であり、需要の過去実績がある商品の需要予測が対象(新商品でも類似商品がある等)。
  • 全くの新市場、新ジャンルの需要予測をするならばどうするかの本。USJを急復活させ、西武園ゆうえんちのリニューアルにも取り組んでいる森岡氏の本。
  • 従来の定性的な市場調査に変えてロジカルに、統計学的に突き詰めた方法論。
  • 難し目の本であり私の理解も追いついてないかもですが、私の理解では下記が要点かと思います。
    • 予測は当たらないことを前提として受け入れる
    • 当てるのではなく確率が高い方を選択する
    • ではその確率の精度をどう高めるかをロジカルに突き詰める

余談

時系列分析をすると、「RとPythonのどちらを使うべきか」問題が結構効いてきますね。私は周りがみんなRだったのでRから入り、部署異動でPython必須となったのでPythonと必要に迫られてどっちも学びました(気分的にはR派ですが)。迷う方もいるかと思うのでご参考まで、
TJO氏の記事「データ分析をやるならRとPythonのどちらを使うべき?」への個人的な回答

「その時々のテーマと必要に応じてRとPythonを巧みに使い分けるべし、そのためにも両方とも習得しておこう」

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