はじめに
Wi-Fiルータのセキュリティについて、2023年4月5日に警視庁より「家庭用ルーターの不正利用に関する注意喚起」が行われました。この中で対策として、次の4つが挙げられています。
- 初期設定の単純な ID やパスワードは変更する。
- 常に最新のファームウェアを使用する。
- サポートが終了したルーターは買換えを検討する。
- 見覚えのない設定変更がなされていないか定期的に確認する。
定期的な設定確認が現実的に可能なのか疑問はありますがそれはさておき、今回は3番目のサポート終了についてです。
たとえばWindowsであればいつサポートを終了するのかずいぶん前に告知がありますし、他のソフトウェア製品についてもLTS(Long Term Support)の設定があるものは計画的にアップグレードを行えます。一方で家庭用のWi-Fiルーターについて、いつサポートが終了するのかわからないまま買っていました。
機能に不満がなければできるだけ長く使い続けたいところですが、サポートはいつまで続くのでしょうか?買った翌日にサポートが終了することもあるのでしょうか?過去には「INTERNET Watchの記事」がありましたが最近の状況は変わってるかもしれないので、家庭用のWi-Fiルータのアップデートが提供されるサポート期間について各メーカーさんに問い合わせてみました。以下は回答の要約と感想です。
各社の回答と感想
※2023年4月時点の情報です。家庭用のWi-Fiルーター全般について聞いたので、Wi-Fiルータ以外の製品、特定の機種、法人向け製品では状況が違う可能性があります。また、ハードウェア保証の期間とも異なります。
バッファロー
- 基本的に現行製品のラインナップはアップデート対応している。
- 脆弱性等対応のアップデートが提供される期間について、明確に定めていない。
- サポートが終了している製品か調べる方法は用意していない。
いつまでサポートがあるのか事前には予測できなさそうです。サポート終了しているかすらも調べられないとの回答でしたが、脆弱性情報とともにサポート終了してる旨告知されているケースはありました。現行製品以外は、脆弱性情報とサポート終了情報が突然出てきて即買い換えが必要になるので、現行製品一覧から消えた頃に買い換えを検討し始めるのが良いと思います。
NECプラットフォームズ
- 販売終了から5年でサポート終了。
- 販売終了品はホームページで公開している
約5年はサポートが受けられるということでした。いつ販売終了になるかはわかりませんが、サイト上で「在庫僅少」など書かれたらそろそろかなと心構えができますし、そこから5年はサポートがあるので余裕を持って買い換えの検討ができそうです。
TP-Link
- サポート期間の定めはない。
- EoLリストに載るまではサポートが行われる。
- EoLリストに載った場合でも必要に応じてセキュリティアップデートの提供する場合がある。
いつEoL(廃盤製品)になるか予測はできなさそうです。その後もセキュリティアップデートを提供する場合があるとのことですが確証はないので、EoLリストに載ったら早急に買い換えた方がよさそうです。
エレコム
- サポート終了日は、製品出荷段階で定めていない。
- 現行製品の一覧がある。
- 使用を停止すべき製品は告知する
- 使用停止製品以外はサポート中の扱い。
- 脆弱性が発覚したタイミングでサポートするかしないかを判断し、サポートしない場合は公開する。
脆弱性が発覚した時点でサポートをするかどうか判断されるとのことで、今後もサポートされ続ける製品なのかどうか事前には分かりません。脆弱性情報とサポート終了情報が突然出てきて即買い換えが必要になるので、現行製品一覧から消えた頃に買い換えを検討し始めるのが良いと思います。
アイ・オー・データ機器
- 基本的に製造終了から5年を目安でサポートを終了。
- サポート終了機種一覧を公開している。
目安とはいえ製造終了から5年はサポートがするとのことでした。いつ製造終了になるかはわかりませんが、そこから5年は猶予があるので余裕を持って買い換えができそうです。
ASUS
- アップデート提供期間の目安はない。
- 製造中止になるとファームウェアの提供は終了。
- 製造中止製品リストを公開している。
製造中止になるまではサポートがあるそうですがいつ製造中止になるか分からず、製造中止になると同時にサポートも終了するので、製造中止情報が出たら即買い換えが必要になると思います。
Sylology
- いつまでサポートが提供されるか案内できない。
- サポートの状態についてWebサイトで公開している。
ファームウェアアップデートは、「フル」→「制限(セキュリティアップデートのみ)」→「期間の終了」と徐々にサポートが限定されていくようです。現在「フル」だったとしてもいつ「制限」になるかはわかりませんし、どのくらいの期間で「制限」から「期間の終了」になるのかも分かりませんが、一定の猶予はあるはずです。「フル」から「制限」になった頃に買い換えを検討し始めるのが良いと思います。
NETGEAR
- 購入後の保証期間3年間、その後開発終了までファームウェアがリリースされる。
- 開発終了後は、セキュリティアップデートはリリースされるが、期間の定めはない。
- セキュリティアップデート終了の事前告知はしていない。
- 購入後3年以内に開発終了した場合は、別モデルの機種への交換などで対応する
- サポートは、日本国内の正規販売店様から購入された製品を日本国内でご利用する場合のみ。
- 「製品保証について」も参照。
少なくとも購入から3年間はサポートされている状態を維持できるので、突発的な買い換えを行う必要はなさそうです。3年が経過し開発も終了すると、その後はいつサポートが終了するか分かりませんが一定の猶予はあると思うので、開発終了が告知された頃に買い換えを検討し始めるのが良いと思います。購入から3年以内なら別機種に交換してでもサポートをするというのは他社にはない特徴です。
- 製造停止するまではファームウェアを更新し続ける。
- 製造停止日は事前に通知するが、何日前までに通知するかは未定。
製造停止を事前に通知すると回答が得られました。告知から終了までの期間はわかりませんが、一定の猶予はありそうです。製造停止に関する情報が出た頃に買い換えを検討し始めるのが良いと思います。
まとめ
製造・販売が終了してからサポートが打ち切られるまでの期間が決まってると回答があったのは、NEC、NETGEAR、I-O DATAの3社さんでした。これらは一定期間はサポートされることが分かっているので、買い換えなどが計画的にできると思います。
他社さんでは明確に期限が決まっておらず、末永くサポートしてくれる可能性もありますが、最低期間が決まっていない以上突然打ち切られる不安が残ります。脆弱性情報と同時にサポート終了が出てくる製品は特に、前述の警視庁の注意喚起にあった、サポートが終了した時点で買い換えを検討するのでは遅そうです。そのタイミングは買い換えを決断するタイミングでしょう。検討自体は、開発終了が分かった時点、あるいはもう少し早めに後継機種が出た時点で始めておくのがいいと思いました。設定変更よりも製造・販売・サポート終了情報を定期的に確認した方がいいですね。