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できるだけ安価にITストラテジスト(ST)を取得しよう。

Last updated at Posted at 2020-02-25

はじめに

 この度「ITストラテジスト(ST)」に合格しましたので、勉強方法や体験談をシェアリングします。
 大学の学部こそ情報系でしたが、今は神戸市で事務屋の公務員をしています。
 できるだけ安価にと書きましたが、予備校等は使わずに、1冊の教科書とあとはインターネット環境だけで合格しました。

ITストラテジストとは

 IPA(情報処理推進機構)が実施するIT国家資格にはレベル1~4までの4段階の資格が設定されています。
 ITストラテジストはその中で最も難易度の高いレベル4のうちの一つです。
 詳しくはIPAの公式ページを見てもらいところですが、要するに経営者の視点からITの活用や導入を考える、ずばりITコンサルタントのための資格です。
 合格率は例年10~15%程度(ただしレベル4はどれも似たような合格率なので、取り立てて低いというわけではありません)、なかなかの難易度に見えますが、やってみれば案外合格できるものです。

こんな人におすすめ

  • ITコンサルタント
  • ITコンサルタントに頼る人
  • 情報システムの発注を行う部門の管理職

 IT業界ではしばしば「資格ではなく実績で語れよ」的なことが言われていまして、そのため資格を取得すること自体にあまり価値が無いように思われることがあります。
 確かに資格はあくまで資格であって実際に何ができるかを表現するわけではありません。
 ただし、この言葉は実績で評価されている人が言うべき言葉であって、普通のサラリーマンである我々は「対外的にそういう資格を持ってるぜ」をアピールすることは大切なことだと思います。
 会社によっては昇進の要件になっていたり、業者から受注を受けるための前提条件だったり、と攻めのカードとして持つことができます。また、肩書を持つことは無知な羊を襲う狼から身を守るための防具としても使うこともできます。
 ですから、私は上記のような人たちにおすすめしています。何よりこの資格「業務経験がない or 浅くても日本語が読み書きできればとれる上に、合格率が低いのですごい」という大変コスパのいい価値のある資格です。
 特にプレイヤーからマネージャーへ上がりたい人には必須の知識が詰まった資格だと思います。

試験対策

 ITストラテジストの試験(以下、ST試験)は午前1、午前2、午後1、午後2と4つの区分に分かれています。各区分ごとに採点されますが、前の区分で合格点に達しないと次の区分の採点自体がされません。
 試験自体は毎年10月の第3日曜の1回しかないので1回飛ばすと次は来年というプレッシャーが大きいです。

午前1

 足きりその1。2年以内に高度情報処理技術者(AP)または他のレベル4の資格を取得していれば免除になります。
 試験形式は50分で30問必答の4択形式。合格ラインは6割(18問)です。
 勉強方法は至ってシンプルで、過去問を延々とやり続けましょう。何年か過去問をやればわかりますが、例年半分くらいは過去問から出題されています。過去問は公開されていて、学習記録を取ってくれるアプリやサイト(こことか)がいくらでもあるのでそれを使ってひたすら解きます。ST試験は途中から出題形式が変わっているので、現在と同じ形式は11年分くらいしかありません。そのうち問題を見ただけで答えの番号まで暗記できてしまいます。
 

午前2

 足きりその2。
 試験方法は40分で25問必答の4択形式。合格ラインは午前1と同じく6割(15問)です。
 午前1と同じく過去問をひたすらやっていればなんとなるのではないかと思います。レベル4の他の試験と出題がかぶるので、それをやっているとアドバンテージになるか。

 とここまでは、よく見る話。参考書を買う必要は全くありませんが、どうしても欲しいのであれば高度情報技術者の参考書なんかがそのまま流用できます。
 午前1、午前2と共通して言えるのは知識を見る試験なので、大切なのは最新の技術動向とかを見ることなんですが、それ以外に勉強法として次のことを提唱します。

1. 4択問題は他の選択肢も見る

 次の問題を見てください。

XBRLを説明したものはどれか。
ア. 企業内又は企業間で使用される複数の業務システムを連携させることであり、データやビジネスプロセスの効率的な統合が可能となる。
イ. 小売店の端末からネットワーク経由で発注を行うことによって、迅速かつ正確な発注作業が実現でき、リードタイムの短縮や受発注業務の効率向上が可能となる。
ウ. 財務報告用の情報の作成・流通・利用ができるように標準化した言語であり、適用業務パッケージやプラットフォームに依存せずに財務情報の利用が可能となる。
エ. 通信プロトコルやデータフォーマットの標準的な規約を定めることによって、企業間での受発注、決済、入出荷などの情報の電子的な交換が可能となる。
(平成28年度 秋期 午前2 問16)

 正解はですが、ここで次に行ってしまうのはもったいないです。ITストラテジストの午前1、午前2(というかほとんどの多肢問題)は次のいずれかのパターンで構成されています。

  • 用語に対する知識を問う問題
  • 内容に関する正誤(またはその組み合わせ)を問う問題
  • 計算結果を問う問題

 このうち知識を問う問題では、正解以外の選択肢を見ておくことがかなり重要です。
 上の例題の正解は先述のとおりウですが、その他の選択肢はそれぞれアがEAI、イがEOS、エがEDIの説明になっています。またこれらは定義であることと問題を使いまわししていく性質上、基本的な記載は変わりません。つまり、この1問で4つの知識が獲得できるということです。
 通常の4倍の効率で勉強ができるので、これを利用しない手はありません。

2. 英語を勉強する

 日本ははっきり言ってIT後進国です。その理由の1つは「日本語が公用語であること」はないでしょうか。パソコンの説明書を見ても横文字ばかり、わからない言葉の説明がわからない言葉で書いてある、そんな現象もよくあることではないですね。
 ST試験でも英語(というか横文字)は多数登場します。バイラルマーケティングとか、ペネトレーション戦略とか、スキミングプライシングとか、先の問題のようなEAIやらEOSやらXBRLやらEDIやらといった略称もたくさん登場します。
 さて、これらの用語と内容を一致させることが知識問題では大切ですが、英語を勉強していれば実は覚えなくても選択肢から回答できます。例で挙げたものを見てみましょう。

  • バイラルマーケティング
    Viral=ウィルス性の。ウィルスのように人から人に伝わるマーケティング手法。要するに口コミ。

  • ペネトレーション戦略
    Penetration=浸透。市場への商品の浸透を意図して採算度外視で価格を設定する戦略。

  • スキミングプライシング 
    Skimming=上澄み。ペネトレーション戦略とは逆に、導入期の価格を高めて高収益率を意図した価格設定。最初に市場に新製品を持ち込んだ企業が行い、2番手以降に差をつける。

  • EAI
    Enterprise Application Integration(企業 アプリケーション 統合)の略。

  • EOS
    Electronic Ordering System(電子 発注 システム)の略。

  • XBRL
    eXtensible Business Report Language(拡張 財務報告 言語)の略。財務報告の文字が選択肢にありますね。これが正解です。

  • EDI
    Electronic Data Interchange(電子 データ 交換)の略。

 このように英語さえわかれば意味は何となくでも解答できるものがたくさんあります。業界で生きていくには英語は避けて通れないので、英語(というか英単語)を勉強しましょう。

3. 計算は最悪覚える

 ST試験では過去問からの出題が半分近くを占めます。過去問からの出題は数字や選択肢をいじることなく、そのまま出題されるので、計算問題であっても解答を覚えてしまえば解答できてしまいます(このあたりが実務には役立たないとか言われてる所以でしょうか)。
 当然、計算方法くらい身に着けた方がよいのは言うまでもありませんが、なるべく安価に効率よくを意識すると解法を覚えるより解答を覚える方が早いのも事実です。
 また、当日の試験では時間の余裕があるわけではありません(午前1、2とも1問あたり1分半くらい)。ですので、できるだけ時間をかけずに解答できる方法を知っておくことは大切です。

午後1

 足きりその3。ここから各試験ごとの特色があらわれます。90分で4問中2問を選択して解答する記述形式。合格ラインは6割です。
 基本的には国語の試験ですので、日本語がきちんと読めれば問題ありません。これも対策としては過去問をやるのが効果的です。午前の2つと違って量をこなしても仕方がないので、問題を査読しましょう。
 問題の流れとしては、まず背景の説明があり、問題点が提示され、ITストラテジストが解決をしたという展開から、「どのような点が問題だったか」や「どのような解決策が提示されたか」などを解答します。
 テーマは新技術や組み込み系など様々ですが、必ず問題文に答えがある構成になっていますので、業務に関する知識は不要です。実際私が受験した時も1つは組み込み系のテーマを解答しました。
 むしろ業務経験などから勝手に市場動向などを書き加えると減点または不正解と判断されることになります(というか字数制限が厳しく解答できない)。

 解答にあたっては前から問題文を素直に読みます。先に問いを見る必要はありません。問題文では、「○○が課題となっている」「○○が要望となっている」といった、困っていることと「○○が注目されている」「○○の視点から解決した」などソリューションが随所に登場します。
 問題文を読みながら印をつけて参照しやすくした上で、実際の問題文から近しいキーワードをピックアップして紐づけて解答しましょう。
 参考サイトとしてこのサイトがわかりやすかったです。対策本の執筆や講座も開設している方でyoutubeに解説動画もあるので参考になりました。

午後2

 ようやく最終。120分で3問中1問を選択して論文を作成します。合格ラインはA判定をとることです。
 合格率こそ15%くらいですが、午前1通過者が50%くらい(欠席者も含め)、午前2の通過者が40%くらい、午後1の通過者が30%くらいらしいので、論文まで行けば5割は通る試験です。
 テーマは3つありますが、1つは必ず組み込み系のものなので、業務経験がなければ避けた方が無難です。
 問題の流れとしては、まずテーマの説明があり、具体例があり、ITストラテジストの求められる役割があり、それに対し、「関わった業務内容」を800字以内、「採択した解決方法」を800字から1,600字、「その他テーマに沿った内容」を600字から1,200字で解答するのがスタンダードです。

準備

 論文試験の準備として次の3つを行いましょう。

1. 自分を知る(写経)

 まず白紙を用意します。そしてどんな文章でも構わないので、適当な文章を探してきて10分間それを転写します。10分で書ききれないよう、小説や論文が良いでしょう。内容を理解する必要はありません。書ききるのが目的ではないので途中になってしまっても構いません。
 10分経ったら次は転写した文章の字数を考えます。これで自分自身の記述速度の限界がわかります。実際は緊張したり休憩したり考えながら記述したりするので、この2/3から半分の速度になるとみておくとよいでしょう。
 午後2の試験は90分ありますが、実際には「問題文を読み解答しやすいテーマを探す」「論文の構成を考える」フェーズがどうしても必要です。
 自分がどの速度で記述ができるかを知ることで試験自体をコントロールできます。
 また、問1以外は最低字数の制限はありませんが、論文試験の性質上実際には7~8割程度の記述はしておく方が無難です。したがって10分間で550字くらい書けないとかなりかつかつになります。400字を切るようでは合格するのは難しいといえるでしょう。

2. テーマを決めておく

 前述のように午後2の試験は時間との戦いです。そのため、なるべく時間を短縮するための方策をとっておきます。
 午後2の試験をもう一度見直すと、次のことが見えてきます。

  • 試験はどの問も3つの小問からできている。
  • 問1はテーマに依らず、関わった業務について600字以内で記述する問題。
  • 問2は採択した解決方法を提示するものが多い
  • 問3はテーマに依り様々。

 ここで注目するべきは問1です。テーマに依らずのところがポイントで、これはつまりオールマイティにどんな問題が来ても同じことが書けるということです。
 というわけで、あらかじめ記載するテーマを絞っておき、問1はあらかじめ作っておくのがポイントです。

3. 全体の構成を考える

 問2、問3についてはテーマによって書き方が変わります。しかし、全体として共通するのはITストラテジストとしてどう対応したかという点です(まだITストラテジストではないのに)。
 合格者の論文を読んで押さえるべき内容だと思ったのは2点

  • ITストラテジスト≠経営者(意思決定者)
  • 世の中トントン拍子には進まない

 です。具体的に解説します。

ITストラテジスト≠経営者(意思決定者)

 冒頭のIPAの公式ページではITストラテジストはこのように説明されています。

高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステム・IoTを利用したシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者

 ポイントはラスト「基本戦略を策定・提案・推進する者」という点。ITストラテジストが行うべきなのは基本戦略を「策定・提案・推進」することであって「決定」ではないのです。
 したがって、業務課題に対してどんな(WHAT)ICTソリューションを採択したかを論文に書いても合格できません。なぜ(WHY)そのソリューションを採択したのか、どのように(HOW)意思決定者に採択させたかを記述する必要があります。

世の中トントン拍子には進まない

 現実として課題に対してどれだけ魅力的な解決策が提示できたとしてもそれを二つ返事で採用されることはまずありません。したがって「解決策を提案しました。採用されました。」と述べるだけでは「実務経験がないのでは?」と勘繰られてしまいます。
 ですから逆にそこへ向かう努力を記述することで説得力のある論文になるのではないかと思います。
 したがって具体的な流れとしては

  1. うちの業界はこういう問題・背景を抱えています
  2. 解決について経営者から何か考えてくれと言われた
  3. こういう理由からこうした解決策を提示した
  4. そのまま採用するには別の問題点があった
  5. 別の問題点をこう対処した

 といった感じなります。
 3.については具体的な数字が書けるとそれは素晴らしいですが、事実と反することを書くと逆にマイナスなので、嘘を並べる場合は信憑性のある数字を計算しておきましょう。
 5.については課題を必ずしも解決しなくても大丈夫です。問題は解決していない課題があることを認識していることその課題について解決する方法の目途がある程度立っているということが大事です。特に後者についてですが、「採用しても根本的な解決にならない」「行き詰まることが見えている」手段をソリューションとして提示しても経営者はまず採用しませんし、詰まるところITストラテジストとしての価値は上がりません(=ITストラテジストとしては失格)。

参考書

 参考書として使用したのはITストラテジスト 合格論文の書き方・事例集 第5版 (情報処理技術者試験対策書)
 読めばわかりますが、ほとんど同じネタを使いまわして論文を書いています。また、日本語としてどうなの? みたいな章立てをするという発想など解説してくれています(つまりこの程度の日本語が書ければ合格できます)。

余談:当日

 個人的な試験対策ですが、試験が始まったら急いで問題を解くのではなく、一瞬周りを見渡して「ふふ、こいつら焦ってるな。だが俺はばっちりだから焦らないんだぜ」と心の余裕を持つのが効果的だと学生の頃から思っています。(カンニング扱いされないように注意)

午前1

 応用技術者は保有していましたが、期限切れだったので午前1からの受験です。6割くらい空席が目立ちます。いきなり過去問では見たことのない計算問題が出ましたがさっさと飛ばして後でゆっくり考えました(合ってました)。

午前2

 事実上の試験開始。4割くらい空席でした。ほとんど過去問のとおり。初見の問題も勘で回答。

午後1

 ざっと読んで短そうなものを選ぶつもりでしたが、近年の傾向はどれも同じくらい長いので、興味がありそうな2つを選択。
 前の席の人が午前の試験で受験番号を解答用紙に記載していなかったため呼びされていました。失意の中午後試験を受けていた彼がその後どうなったのかは知らないですが、皆さんもお気を付けください。

午後2

 進〇ゼミでやったところだ!予想どおりの問題が出たので準備したとおり書いて終わり。
 試験を舐めまくっていたので最後時間が足りなさそうになり少し焦りました。やはり一度は書いてみた方がいいですね。
 午後では選択した問題を解答用紙に〇するんですが、忘れると採点されないという恐ろしい文字が書いてあります。さすがにしないってことはないんじゃないかなって気はするんですが、きちんと確認しましょう。
 私は確認しなかったので、自信はありましたが、合格発表までは悶々としていました。

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