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自然数の交換法則の証明

Last updated at Posted at 2024-08-31

$a,b$を任意の自然数とする。このとき、

a + b = b + a

が成り立つ。

定義

ペアノの公理

集合 $N$ が次の性質を満たすとき、その要素を自然数と呼び、$N$を自然数の集合と呼ぶ。

性質1:N は空集合でない。

$N$は特別な要素$0$を含む。

0 \in N

性質2:鎖のように連なっている。

$N$から$N$への射 $S$が存在する。

S: N \rightarrow N

$N$の要素$a$に対し、$S(a)$を$a$の「後者」と呼ぶ。

性質3:鎖には端がある。

$S(a) = 0$ となるような$N$の要素$a$は存在しない。

性質4:鎖は合流しない。

$N$の任意の要素$a,b$について、次が成り立つ。

a \neq b \implies S(a) \neq S(b)

性質5:0から始まる鎖以外に要素がない。

$N$の部分集合$E$が次の性質を満たすならば、$E = N$ である。

\displaylines {
0 \in E \\
\forall a \in N, a \in E \rightarrow S(a) \in E
}

※ 性質5が無いと、0から始まる鎖とは別にグー→チョキ→パー→グーのようなループを含むような集合が考えられるが、これは自然数の集合とは呼ばない。

※ 以下の証明で数学的帰納法を用いる。数学的帰納法は「集合$N$の要素にまつわる命題」と「命題が真となるような$N$の要素全体を集めた部分集合」を同一視することで、実質的に性質5を利用している。

以下、自然数の集合を $\mathbb{N}$と書く。

自然数同士の和

自然数同士の和$+$を次のようにして再帰的に定義する。

\displaylines {
\forall a \in \mathbb{N}, a + 0 = a \\
\forall a, b \in \mathbb{N}, a + S(b) = S(a + b)
}

証明

a + 0 = 0 + a の証明

$a$ に関する数学的帰納法を用いて証明する。

a = 0 のとき

a + 0 = 0 + 0 = 0 + a

より成り立つ。

a のときに成り立つと仮定

$a \in \mathbb{N}$ について交換法則 $a + 0 = 0 + a$ が成り立つと仮定する。

このとき、

\displaylines {
0 + S(a) & = & S(0 + a) & \because 和の定義 \\
& = & S(a + 0) & \because 数学的帰納法の仮定 \\
& = & S(a) & \because 和の定義 \\
& = & S(a) + 0 & \because 和の定義
}

より $S(a)$ についても成り立つ。
数学的帰納法により、任意の $a$ について$a + 0 = 0 + a$ が成り立つ。

a + b = b + a の証明

$b$ に関する数学的帰納法を用いて証明する。
以下、 $a \in \mathbb{N}$ を任意とする。

b = 0 のとき

前述の通り、 $a + 0 = 0 + a$ が成り立つ。

b のときに成り立つと仮定

$b \in \mathbb{N}$ について交換法則 $a + b = b + a$ が成り立つと仮定する。

このとき、$S(b)$についても交換法則が成り立つことを証明したい。
そのために、$a$に関する数学的帰納法を用いる。
以下で、$S(b)$は固定されている。

a = 0 のとき

前述の通り、 $0 + S(b) = S(b) + 0$ が成り立つ。

a のときに成り立つと家庭

$a \in \mathbb{N} $ について交換法則 $a + S(b) = S(b) + a$ が成り立つと仮定する。
このとき、

\displaylines {
S(a) + S(b) & = & S(S(a) + b) & \because 和の定義 \\
& = & S(b + S(a)) & \because b に関する数学的帰納法の仮定 \\
& = & S(S(b + a)) & \because 和の定義 \\
& = & S(S(a + b)) & \because b に関する数学的帰納法の仮定 \\
& = & S(a + S(b)) & \because 和の定義 \\
& = & S(S(b) + a) & \because a に関する数学的帰納法の仮定 \\
& = & S(b) + S(a) & \because 和の定義
}

より、 $S(a)$についても成り立つ。

したがって、数学的帰納法により、任意の $a$ について $a + S(b) = S(b) + a$ が成り立つ。

つまり、 $S(b)$ についても交換法則が成り立つ。
今、 $b$について交換法則が成り立つと仮定して$S(b)$について交換法則が成り立つことを確認できた。
したがって再び数学的帰納法により、任意の$b$について交換法則が成り立つ。
$a$は任意であったから、題意は示された。

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