1. はじめに
街中のいたるところで見かけるようになったカメラやセンサ。これらが日々生み出す膨大なデータをリアルタイムで把握し、すぐに活用したい──そんなニーズが急速に高まっています。例えば、街角に設置されたIPカメラの映像や環境センサのデータをすぐに見える化できれば、セキュリティ強化や街の賑わい分析、さらにはスマートシティでの活用まで、様々な可能性が広がります。
今回の記事では、そんな可能性を広げてくれる時系列データと高精細地図データの融合について書いてみます。
時系列データベース(CLOUDSHIP)で実現するデータ活用
私たちPROMPT-Xが提供する時系列データベース CLOUDSHIPは、カメラ映像やセンサーデータを一元管理できる国産の商用データベースです。CLOUDSHIP APIを通じて簡単に時系列データにアクセスできるため、必要なときに必要なデータをサッと取り出せます。今回、この強みを活かし、世界的な地図サービスプロバイダーであるHERE社のプラットフォームと組み合わせることで、新たな価値を生み出すことができました。
RealBoard:時系列データをサッと"見える化"&”分析”できるシステム
CLOUDSHIPに保存されたデータを、直感的に素早く可視化できるのがRealBoardです。大量のデータをスムーズに処理できるCLOUDSHIPの特長を活かし、過去から現在までのトレンドを簡単に分析できます。時系列データの中に隠れた複雑な関係性も、複数の相関性の高い値や画像をまとめて一緒に見える化することで、ユーザが直感的に発生事象を理解できるようになるためのツールとして様々な分野でご活用いただいております。
HERE MAP APIとの出会い
このたびRealBoardは、HERE社が提供する地図API、HERE MAP APIに対応しました。詳細な道路・建物情報や高度な地図描画機能と時系列データ表示が融合できています。これにより、高精細な地図上でリアルタイムデータや履歴データを重ね合わせて表示できるようになり、「いつ」「どこで」「何が」起きているのかが、一目で分かるようになったポイントをまとめてみます。
読み進めるにあたって
この記事では、私たちエンジニアの視点から、時系列データ(CLOUDSHIP)と高精細な地図データ(HERE MAP API)を組み合わせることで、どんな新しい発見が生まれるのか? 一緒に見ていきましょう。
2. システム概要
街角のカメラやセンサから集められたデータは、時系列データベース(CLOUDSHIP)で一元管理され、HERE MAPの高精細な地図上で直感的に可視化・分析できます。ソラカメの映像解析からデータ管理、可視化までの一連の流れです。
UI/UX
グリグリ動くHEREの高精細地図上にAIが分析したカメラ画像が時系列データベース(CLOUDSHIP)から超高速でAPI連携され3Dっぽくプロットされる見た目の破壊力はハンパないですね!
地図と時系列データを組み合わせることで、単なる見た目の良さだけでなく、現場の状況をより深く理解できるようなUI/UXが完成しました!
システム構成図
全体的な流れ
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映像・センサデータの取得(SORACOM経由)
街頭に設置されたソラコム社のソラカメサービスから画像データを取得する処理です。ソラカメのライブ視聴見放題APIで提供されるストリームデータから、独自開発した高効率な画像切り出し処理により、解析に最適な画像データを抽出します。この技術により、ストリームデータからの効率的な画像取得と、後段の解析処理に適した品質の両立を実現しています。 -
映像解析(AIyesによるオブジェクト検出)
PROMPT-Xの物体検知 - AIyesが採用するYOLO系の物体検出技術で人物・車両・トラックなどのオブジェクトを検知します。検出精度と処理速度のバランスを考慮したモデルを採用し、リアルタイム性を保ちながら高精度な物体とその数の検出を実現しています。検出結果は画像内の座標情報や検出確信度をJSONデータ化するだけでなく、検出オブジェクト別のバウンディングBOX数を数値化しています(ナニが幾つかをデータ化)。 -
時系列データベース(CLOUDSHIP)への集約
画像データ、検出オブジェクト情報、センサ値など、異なる形式のデータをCLOUDSHIPで一元管理しています。バイナリデータ(Base64)も含めた時系列データを高速に格納できる独自のデータベース構造により、大量データの書き込みと読み出しを両立しています。さらに、CLOUDSHIPの強力な時系列を揃える集計処理機能により、クライアント側の処理負荷を最小限に抑えています。 -
RealBoardによる可視化・分析
CLOUDSHIP APIを介して取得したデータを、SPAアーキテクチャで実装されたRealBoard for HEREで可視化します。時間軸でのデータ集計や、位置情報に基づくマッピング処理をフロントエンド側で効率的に実行し、インタラクティブな操作性を実現しています。 -
HERE MAP APIとの統合
高精細な地図情報の上に、CLOUDSHIPから取得した時系列データをオーバーレイ表示します。地図の描画処理とデータの更新処理を最適化することで、スムーズな操作性を確保しています。位置情報と時系列データの統合により、空間的・時間的な文脈を持った分析が可能になりました。
この一連のアーキテクチャにより、データの取得から解析、保存、可視化までの一連の処理を、高いパフォーマンスを維持しながら実現しています。時系列データのリアルタイム性と、地図データの視認性を両立させた新しいデータ活用のベストプラクティスだと言っても過言ではないでしょうね。
3. リアルタイム時系列データと高精細地図データの融合
地図で見える『場所』の価値
時系列データだけを見ていると、「午後3時に人が増えた」という数字の変化は分かっても、それが「どの通りで」「どんな場所で」起きているのかまでは見えてきません。でも、HEREの高精細な地図と組み合わせることで、「あっ、この商店街の角にあるカフェの前で人が増えてる!」といった具合に、数値の変化と場所の関係が一目で分かるようになります。道路幅や周辺の店舗配置なども地図上で確認できるので、なぜその場所で人が増えたのか、より深い考察もできるようになります。
現在と過去を同時に見比べる
RealBoardは、CLOUDSHIPのAPIを使って「今、現在」のデータも「昔、過去」のデータも自由自在に取り出せます。例えば、「今の混雑状況」と「先週の同じ時間の様子」をHEREの地図上で見比べることで、普段と違う場所で渋滞の発生や人が集まっていないか?などがすぐに見えるようになります。
AIの解析結果を地図で確認
AIyes(YOLO)が見つけた人や車の位置情報は、すべてCLOUDSHIPに記録され、地図上にすぐ表示できます。これにより、「この交差点に大型車両が増えてきた」「駅前の歩行者が急に増えている」といった変化を、場所の特徴と合わせて確認できます。歩道の広さや信号の配置なども地図で見ながら検討できるので、より実践的な対策を考えられる可能性があります。
4. すぐに対策できる!時系列データと地図を使った課題解決の可能性
このように地図と時系列データを組み合わせることで、交通管理、防犯カメラの監視、お店の集客分析、街づくりの計画など、様々な場面で役立ちます。
例えば:
- 事故や渋滞が起きたとき、周辺の道路状況を見ながらすぐに対応策を考えられる
- 人の流れを長期間観察して、新しい店舗の最適な場所を見つけられる
- イベント開催時の混雑状況を把握して、来年の運営に活かせる
- 街に増えてきたインバウンド客の人流の特徴を可視化できる
高精細な地図とグラフを1つの画面で見られるので、複数の画面を行き来する手間もありません。クリック1つで違う時間のデータを重ねたり、気になる場所を拡大して細かく確認したりと、直感的な操作で分析できるようになりました。
これまでバラバラだった「地図は地図」「データはデータ」という情報が、RealBoardとHEREの地図を組み合わせることで、『場所の特徴を踏まえた生きた情報』に変わります。現場で何が起きているのか、すぐに理解して行動できる - それが、この組み合わせがもたらす最大の価値なのではないかと考える所です。
5. 最後に ~地図データ活用の新しいカタチ~
「地図を活用したサービスを作りたい!」「現場のデータをもっと活かせないか?」
そんな思いをお持ちの方向けの実装例として参考にしていただければ幸いです。今回対応したHERE社が提供する高精細な地図とそのAPIは、その思いを実現する強力な基盤となることがご理解いただけたかと思います。
以上です。