AIと現実世界をつなぐ共通プロトコル「Model Context Protocol(MCP)」とは ― 具体例とともに解説
0. はじめに:AIが現実世界の情報を扱えない理由
近年、生成AIの進化により自然言語での対話が可能になった一方で、「外部情報にアクセスできない」ことが実用上の大きな制約となっています。
例えば以下のような指示を出した場合:
「来週の会議、営業部のSlackから日程を調整しておいて」
AIは次のような回答を返すかもしれません。
「Slackにアクセスできません」
「“来週”とは具体的に何日を指していますか?」
これは、AIが外部サービスやファイルに直接アクセスする手段を持っていないことに起因しています。
このような課題に対処するために登場したのが「Model Context Protocol(MCP)」です。
1. MCPとは何か
AIと外部ツール・データソースをつなぐための共通プロトコル
MCPは、AIがSlack、ファイルシステム、データベース、Web APIなどの外部リソースに安全かつ標準的な方法でアクセスできるようにするための仕組みです。
USB-Cがさまざまな機器との接続を統一するように、MCPはAIと外部リソースをつなぐインターフェースの標準化を目指しています。
2. MCPの構成と仕組み(概念図)
[Userの指示]
↓
[AIアプリケーション]
↓(外部情報が必要)
[MCPクライアント]
↓
[MCPサーバー] ────→ [Slack / Files / DB / APIs]
- MCPクライアント:AIアプリケーション内に組み込まれ、外部情報が必要な際にリクエストを生成
- MCPサーバー:外部サービスやデータソースに実際にアクセスし、結果を返す
この構成により、AIは直接外部APIを操作することなく、安全にリソースを活用できます。
3. MCPが可能にすること(利用例)
利用シーン | 内容 |
---|---|
📁 ファイル操作 | Excelファイルから売上トップ10を抽出 |
🧑💼 Slack連携 | 特定チャンネルのやり取りを要約 |
📊 データベース操作 | SQLite/PostgreSQLに接続してクエリ実行 |
📅 タスク管理連携 | Asana等にタスクを直接登録 |
これらの操作を自然言語の指示のみで実現できる点がMCPの大きな特徴です。
4. Claude for Desktop + MCP による実践例
4.1 ローカルファイルの一覧取得(macOS環境)
MCPサーバーの起動
npx -y @modelcontextprotocol/server-filesystem ~/Desktop/
Claudeの設定ファイルに追記(通常は ~/Library/Application Support/Claude/
に存在)
{
"mcpServers": {
"filesystem": {
"command": "npx",
"args": [
"-y",
"@modelcontextprotocol/server-filesystem",
"~/Desktop/"
]
}
}
}
Claudeを再起動後、チャット上で「デスクトップのファイル一覧を表示して」と入力することで、実際のファイル一覧が取得可能です。
4.2 SQLiteデータベースへの接続
uvx mcp-server-sqlite --db-path ~/test.db
{
"mcpServers": {
"sqlite": {
"command": "uvx",
"args": ["mcp-server-sqlite", "--db-path", "~/test.db"]
}
}
}
Claudeに対して「データベース内の商品の一覧を表示して」と指示すれば、AIがSQLiteの中身を直接参照できます。
4.3 Supabase(PostgreSQL)との連携(Cursor対応)
npx -y @supabase/mcp-server-postgrest \
--apiUrl https://your-project.supabase.co/rest/v1 \
--apiKey your-api-key \
--schema public
{
"mcpServers": {
"PostgREST": {
"command": "npx",
"args": [
"-y",
"@supabase/mcp-server-postgrest",
"--apiUrl",
"https://your-project.supabase.co/rest/v1",
"--apiKey",
"your-api-key",
"--schema",
"public"
]
}
}
}
Cursor上での操作により、PostgreSQLの中身をAIが把握し、対話的に活用可能になります。
5. まとめ
Model Context Protocol(MCP)は、生成AIと外部リソース(ファイル、データベース、クラウドサービスなど)を安全かつ標準的な方法で接続するための共通プロトコルです。
従来、AIは「知識を持つが現実のデータには触れられない」状態でしたが、MCPを活用することで、AIに現実世界を操作する能力を持たせることが可能になります。
主なポイント
- MCPはAIと外部ツール・データをつなぐ“共通言語”
- ClaudeやCursorなどのアプリケーションがMCP経由でファイルやDBを扱える
- ノーコードでの設定が可能で、業務への応用が現実的
6. このような方に有用です
- 業務効率化のためにAIエージェントを導入したい方
- ClaudeやCursorなどのAI活用ツールを最大限に活かしたい方
- 外部サービス連携をノーコードで実現したいエンジニア・チーム
補足
MCPは現在も仕様拡張が進んでおり、セキュリティや認証の観点でも柔軟な設計が可能です。導入時はアクセス範囲や公開設定などを慎重に設計することが推奨されます。