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AWS Amplify Advent Calendar 2019

Day 8

AWS Amplify の ServiceWorker で Web Push 対応を実装してみる - クライアント編

Last updated at Posted at 2019-12-09

Web Push、送りたいことありますよね。

この記事は Web Push 通知を使うアプリを AWS Amplify で作ってみる話です。
特にクライアント側を AWS Amplify でどう実装するかを見てみます。
当初サーバー側もあわせて書こうとしたのですが、分量が多くなりそうだったので今回は一旦クライアント編として、サーバー編はまた Amplify の API カテゴリを絡めたものを後日書きます(たぶん)。

Web Push やりたいときにやらなきゃいけないこと

Web Push を運用しようとすると、けっこう色々やることがあります。

  1. Push を受け取るクライアント側
  2. Service Worker の実装
  • 購読状態管理、Service Worker 登録等を行うフロントアプリケーションの実装
  • 購読処理時に払い出されるエンドポイントをサーバーサイドに送信
  1. Push を送るサーバー側
  2. 秘密鍵・公開鍵の生成、管理
  • クライアントから送られてきたエンドポイント情報をサービスのユーザーと紐付けて保存、管理
  • Web Push 送信用ライブラリ を使って適切なタイミングで送信

等々です。Amplify の ServiceWorker クラスはこの中で、特に 1-2. 購読状態管理、Service Worker 登録等を行うフロントアプリケーションの実装 を助けてくれます。
また、その Amplify プロジェクトで Analytics カテゴリを有効にしている場合、ServiceWorker のライフサイクルイベントを自動で収集、可視化してくれる機能も Amplify が提供してくれます。

前提条件

仕様

今回は、

  • ブロック済でなければページを開いたときにプッシュ通知購読の許可を求める
  • 購読の停止、停止後の再購読を行う UI、機能は提供しない ※
  • 現在の購読状況(未購読、購読済み、ブロック済み)を表示する
  • Push 通知がサポートされていない環境(Safari 等)ではそう表示する
  • 購読済みの場合は、プッシュ通知に必要なサブスクリプション情報を表示する

というモノを実装することにします。

※ 実際のサービス運用時には、購読停止の際に Unsubscribe() の実行、サーバーサイドのデータベース更新等が必要になるでしょう

参考にした資料

この記事は以下2つのドキュメント・チュートリアルを参考にしています。

  1. Service Workers - Amplify JavaScript
  2. ウェブアプリへのプッシュ通知の追加 - developers.google.com

この記事内では AWS Amplify が関わる Web Push の登録・受信部分のみに触れますが、実際のアプリケーションではユーザーの体験を考える上でどんなときにどう購読 ON/OFF の UI を表示すべきかなど、もう少し考えることがあります。
上の 2. のチュートリアルはそういう面にも触れられているのでぜひご覧ください。

作業環境

今回は Vue project をベースにします。


$ node -v
v12.13.1
$ npm -v
6.9.0
$ npm install -g @vue/cli
...
$ vue --version
@vue/cli 4.1.1
$ npm install -g @aws-amplify/cli
...
$ amplify --version
4.5.0

使った環境、ブラウザは↓です。なお、Safari は現在 Push 通知に対応していません。

  • macOS High Sierra 10.13.6
  • Google Chrome ver.78
  • Firefox ver.68.3

実装していき

Vue プロジェクト、Amplify プロジェクトの作成

$ vue create amplifywebpush
? Please pick a preset: (Use arrow keys)
❯ default (babel, eslint)

...

$ cd amplifywebpush
$ npm install aws-amplify aws-amplify-vue
$ amplify init
? Enter a name for the project amplifywebpush
? Enter a name for the environment dev
? Choose your default editor: Vim (via Terminal, Mac OS only)
? Choose the type of app that you're building javascript
Please tell us about your project
? What javascript framework are you using vue
? Source Directory Path:  src
? Distribution Directory Path: dist
? Build Command:  npm run-script build
? Start Command: npm run-script serve
? Do you want to use an AWS profile? Yes
? Please choose the profile you want to use yourprofilename
...

$ tree -L 1
.
├── README.md
├── amplify
├── babel.config.js
├── node_modules
├── package-lock.json
├── package.json
├── public
├── src
└── yarn.lock

4 directories, 5 files

はい

必要な Amplify のモジュール、カテゴリの追加

まず、ServiceWorker クラスは @aws-amplify/core パッケージに、Analytics は aws-amplify/analytics に入っているのでインストールします。

$ npm install @aws-amplify/core
$ npm install @aws-amplify/analytics

次に、Service Worker のライフタイムイベントを集計するため、アプリケーションに Analytics カテゴリを追加します。途中の選択肢は全てデフォルトで Enter を押しています。

$ amplify add analytics
$ amplify push
✔ Successfully pulled backend environment dev from the cloud.

Current Environment: dev

| Category  | Resource name   | Operation | Provider plugin   |
| --------- | --------------- | --------- | ----------------- |
| Auth      | cognito57ed5053 | Create    | awscloudformation |
| Analytics | amplifywebpush  | Create    | awscloudformation |
? Are you sure you want to continue? (Y/n) Yes

...

$ amplify status

src/main.js で Amplify を初期化します。

import Vue from 'vue';
import App from './App.vue';
import awsconfig from './aws-exports';
import Amplify, * as AmplifyModules from 'aws-amplify';
import { AmplifyPlugin } from 'aws-amplify-vue';

Amplify.configure(awsconfig);
Vue.use(AmplifyPlugin, AmplifyModules);
Vue.config.productionTip = false;

new Vue({
  render: h => h(App)
}).$mount('#app');

この時点では何も UI をいじっていないので、デフォルトの Vue プロジェクトの画面が表示されます。

$ amplify run

...

  App running at:
  - Local:   http://localhost:8080/
  - Network: http://192.168.0.1:8080/

  Note that the development build is not optimized.
  To create a production build, run yarn build.

vue.png

はい

ServiceWorker の実装

まず、public/service-worker.js を次のように実装してみます。

/**
 * Push 通知の受信時に発火するイベント
 */
addEventListener('push', (event) => {
  console.log('[Service Worker] Push Received.');
  console.log(`[Service Worker] Push had this data: "${event.data.text()}"`);

  if (!(self.Notification && self.Notification.permission === 'granted'))
    return;

  let data = event.data ? event.data.json() : {};

  let title = data.title || "Web Push Notification";
  let message = data.message || "New Push Notification Received";
  let icon = "path/to/image";
  let badge = "path/to/image";
  let options = {
    body: message,
    icon: icon,
    badge: badge
  };
  event.waitUntil(self.registration.showNotification(title, options));
});

/**
 * 通知がクリックされたときに発火するイベント
 * 通知ごとに適切なクリック時の処理を記述。
 * 今回は Amplify JavaScript のドキュメントを開くという処理にする。
 */
addEventListener('notificationclick', (event) => {
  console.log('[Service Worker] Notification click: ', event);
  event.notification.close();
  event.waitUntil(
    clients.openWindow('https://aws-amplify.github.io/amplify-js')
  );
});

これはかなり最小限の実装ですが、色々な API やキャッシュ機能を使った例としては Example Service Worker - Amplify JavaScriptウェブアプリへのプッシュ通知の追加 - developers.google.com を参照するといいと思います。

ServiceWorker の登録

で、src/App.vue を次のように実装します。

<template>
  <div>
    <h2>Amplifyで作るWebPushアプリ</h2>
    <p>{{ state }}</p>
    <p>{{ endpointInfo }}</p>
  </div>
</template>

<script>
import { ServiceWorker } from 'aws-amplify';

const serviceWorker = new ServiceWorker();
const yourPublicKey = 'Paste your public key here';

export default {
  name: 'app',
  data(){
    return {
      registeredServiceWorker: null,
      state: '',
      endpointInfo: '',
    }
  },
  methods :{
    isPushSupported() {
      return ('serviceWorker' in navigator && 'PushManager' in window)
    },
    async updateUI() {
      if (!this.isPushSupported()) {
        this.state = 'Push 通知がサポートされていない環境';
        this.endpointInfo = '';
        return;
      }

      // 購読状況によって UI を変える
      if (Notification.permission == 'denied') {
        // すでに拒否されている
        this.state = 'ブロック済';
        this.endpointInfo = '';
      } else {
        var subscription = await this.registeredServiceWorker.pushManager.getSubscription();
        if (subscription) {
          // 購読済み
          this.state = '購読済';
          this.endpointInfo = JSON.stringify(subscription);
        } else {
          // 未購読
          this.state = '未購読';
          this.endpointInfo = '';
        }
      }
    },
  },
  async mounted(){
    this.registeredServiceWorker = await serviceWorker.register('/service-worker.js', '/');

    if ('permissions' in navigator) {
      let notificationPermission = await navigator.permissions.query({name:'notifications'});
      notificationPermission.onchange = () => {
        this.updateUI();
      };
    }

    if (Notification.permission !== 'denied') {
      await serviceWorker.enablePush(yourPublicKey);
    }
    this.updateUI();
  },
}
</script>

serviceWorker.enablePush(yourPublicKey) は Push 通知の購読をユーザーに確認し、許可されたら購読処理をすすめるメソッドです。サーバー側で生成する公開鍵を引数に渡しています。この値はあとで置き換えます。

これらの行は、割と Amplify が処理を隠蔽してくれているところで、例えば公開鍵は URL エンコードされた Base64 文字列を UInt8Array に変換してから使う必要がありますが、それは enablePush() メソッドが内包しています。
参考: 該当部分の実装 - github.com/aws-amplify/amplify-js

この状態で、amplify run してから Chrome や Firefox でページを開くと、おなじみ?の通知許可が求められます。 serviceWorker.enablePush(yourPublicKey) による動作です。

image.png

公開鍵の取得と模擬的なサーバーサイドの用意

冒頭で書いたとおり、今回はフロント側について書きたいので、バックエンドは手軽に鍵生成や Push 送信のテストができるコンパニオンサイト、Push Companionを使います。

Push Companionを開くと、Public KeyとPrivate Keyが表示されています。

image.png

Public Key をコピーして、src/App.vue に反映します。

[-]
const yourPublicKey = 'Paste your public key here';

[+]
const yourPublicKey = 'BDirXoCByCLittjLnybgMtlmAl1Oc52zE--QIgU378Z7ljkoiWDjy2F*****************************';

アプリケーションを起動して購読してみる

$ amplify run

...

  App running at:
  - Local:   http://localhost:8080/
  - Network: http://192.168.10.13:8080/

ブラウザで http://localhost:8080/ を開き、通知許可のダイアログを表示します。

image.png

ここで許可(Allow)すると、画面上に JSON 文字列が表示されます。

image.png

この JSON 文字列は Subscription 情報などと呼ばれ、サーバーサイドから Push を送信するときの宛先情報にあたるものです。

実際のサービスでは、この後 subscriptionInfo をサーバーサイドに送り、ユーザー情報と紐付けてデータベースに保存しておくなどして、必要なときに必要なユーザーに Push を送信することができるよう管理する必要があるでしょう。

Push を送信、受信してみる

では、いよいよ Push 通知を受信してみます。またコンパニオンサイトに頼ります。

"Subscription to Send To" に、先程の SubscriptionInfo 文字列をコピーして、"Text to Send" に好きなメッセージを書いて "SEND PUSH MESSAGE" をクリックします。単なる文字列を送ってもいいのですが、通常 JSON で送ることが一般的で、今回の Service Worker 側でもそれを期待しているので、次の内容を送ってみます。

{"title": "Hello Amplify!!!", "message": "Amplifyかわいい"}


image.png

うまく実装されていれば、次のような通知が表示されます。

image.png

Vue アプリケーションのタブを閉じていたり、別 Window を表示したりしていても通知が表示されるでしょうか?通知をクリックしたとき、ちゃんと service-worker.js で記述した処理が実行されているでしょうか?確認してみてください。

期待通りに動いていれば、これで Amplify を使ったクライアントサイドの Web Push 通知対応ができました。

Analytics の集計情報を見てみる

最初に、Service worker のイベントを集計するために Analytics カテゴリを追加してありました。ちゃんと動いているか見てみましょう。

$ amplify console analytics

Amazon Pinpoint のマネジメントコンソールが開いたら、 Analytics > Events を見てみます。
Filters を有効にすると、次のようなイベントが収集されています。

image.png

Amplify が自動的に Service worker のライフサイクルや状態変化、メッセージングなどのイベントを集計してくれています。

補足

開発中に購読状態を変更したいとき

開発中は、一度購読を許可した後にもう一度もとに戻したい、拒否を取り消したいときがたくさんあると思います。
Chrome のアドレスバーのアイコンをクリックすると、そのサイトに対する購読状態を変更することができます。

image.png

サーバーサイドの Push 送信実装について

今回はコンパニオンサイトに頼りましたが、実際にサーバーサイドからの Push 送信を自分で実装するときは Web Push 用のライブラリを使って実装することが一般的かと思います。

言語別のライブラリがあるので、必要のある方は見てみてください。

その辺の実装は、後日書くサーバー編で触れたいと思います。

その他考慮すること

前提条件にも書きましたが、今回の記事はクライアント側の Amplify に関わる部分にフォーカスしています。
サービスを運用する際は、これら以外に購読済みのユーザーが購読を停止するための UI や処理、ユーザーの Subscription 情報や状況を保存するバックエンドのデータベース等が必要になると思われます。
その辺も後日書くサーバー編に(ry

また、Appiterate による調べでは、不適切で不快な通知はユーザー離反の最も大きな要因になり得ます。ユーザー体験を十分に設計する必要があります。

image.png
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まとめ

  • Amplify の ServiceWorker クラスは Web Push 購読処理を隠蔽して、ちょっと手軽にしてくれる
  • Amplify で Analytics カテゴリを有効にしていると、自動的に Service worker の挙動をトラッキングしてくれる

みんなも Amplify で Web Push 処理しましょう。

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