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AIが解決する表記ゆれ問題:ChatGPTと協力するデータ品質向上のアプローチ

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表記ゆれがデータ処理の障害となり、情報の整理や分析を困難にすることがあります。本記事では、AI技術の一つであるGPTを活用し、表記ゆれを自動的に検出し統一する方法について詳しく解説します。これにより、データの品質向上や業務効率化につながる知見を提供します。まずはじめに、GPTがどのようにして表記ゆれに対処するのか、そしてそれがどのようにデータ処理の問題を解決するのかを見ていきましょう。

はじめに

表記ゆれの問題点とその影響

表記ゆれは、同じ意味や概念を異なる表現で記述することで生じる問題です。データベースや報告書、日報など、さまざまな情報が集まる場所で表記ゆれが発生することがあります。表記ゆれがあると、以下のような問題が発生します。
  • データの整合性が失われる
  • 検索や集計が困難になる
  • 情報分析の精度が低下する
  • 業務効率が悪化する
これらの問題は、企業や組織の情報管理や意思決定に悪影響を与えることがあります。そのため、表記ゆれの解決は、データ品質や分析精度の向上に直接つながります。

AI技術(GPT)を活用する理由

従来のルールベースの手法では、表記ゆれの種類やパターンが多岐にわたるため、効率的な対処が難しいことがありました。また、新たな表記ゆれが発生するたびに、手作業でルールを追加・修正する必要があり、大変な労力が必要でした。

しかし、AI技術の進歩により、表記ゆれの検出と統一を自動化できるようになりました。特に、GPT(Generative Pre-trained Transformer)は、自然言語処理において優れた性能を発揮します。GPTは、大量のテキストデータを学習し、文脈に応じた適切な表現を生成できる能力を持っています。これにより、表記ゆれを検出し、統一された表現に置き換えることが可能です。また、GPTは柔軟性が高く、様々なタスクやドメインに適用できます。このため、GPTを活用することで、表記ゆれの問題を効率的に解決し、データ処理や分析の品質を向上させることが期待できます。

表記ゆれの自動検出と統一

GPTを使った表記ゆれ検出の方法

GPTを使って表記ゆれを検出するには、まずGPTに表記ゆれが存在する可能性のあるテキストデータを入力します。GPTは、入力されたテキストデータを分析し、文脈に基づいて表記ゆれを特定します。例えば、「ボタンを押す」「スイッチを切り替える」「電源を切る」など、同じ意味を持つ異なる表現を見つけることができます。

ここから実際のプログラムで説明をしていきます。

Step1. 基本ルールを用意する

GPTといえども正しい文章から自動的に置き換えをすることは出来ません。そのため最初に基本ルールとなるマッピングデータを用意します。例えば、以下のようなマッピングデータを用意します。用意した内容を rules.json として保存します。
{
  "ボタンを押す": ["ボタンを押して電源を切る", "電源を切る", "スイッチを切り替えて、電源を切る"],
  "終了する": ["終了処理をする", "終了させる"],
  "キャンセルする": ["取り消す", "中止する"],
  "削除する": ["取り除く", "消去する"],
  "切り替える": ["変更する", "切り換える"],
  "クリアする": ["消去する", "リセットする"],
  "リロードする": ["更新する", "再読み込みする"],
  "フォーカスする": ["選択する", "選択範囲を指定する"],
  "アクティブにする": ["有効にする", "オンにする"],
  "インストールする": ["設置する", "導入する"],
  "ダウンロードする": ["取得する", "取り込む"]
}
このマッピングデータをもとに、GPTは入力テキスト内の表記ゆれを検出し、対応する統一表現に置き換えます。例えば、「スイッチを切り替える」が検出された場合、これを「ボタンを押す」に置き換えます。このようにして、GPTを使ってテキストデータ内の表記ゆれを自動的に検出し、統一することができます。

Step2. スクリプトを作る

import openai
import json

# APIキーの設定
openai.api_key = "your_api_key"

# 置き換える表現と統一表現の辞書
with open("rules.json", "r", encoding="utf-8") as file:
    replacement_rules = json.load(file)

# 入力テキスト
input = """
電源を切ったら、システムが終了処理をします。取り消す場合は、もう一度ボタンを押してください。
リセットすると、再び有効になります。取り込む前に、必ず保存しておくこと。
"""

# 置き換える表現を検出し、統一表現に変換するためのメッセージ
messages = [{"role": "system", "content": "あなたは、与えられたルールに従って表現を統一するアシスタントです。ルールを参照しながら、文脈に適した形で表現を変換してください。例えば、入力文章が「電源を切った」のような過去形であれば、「ボタンを押した」と過去形のまま変換してください。"}]
for key, values in replacement_rules.items():
    for value in values:
        messages.append({"role": "user", f"content": f"以下の様な表現を統一した表現に置き換えてください: {value} -> {key}"})

messages.append({"role": "user", "content": f"入力: {input}\n変換後:"})

# GPT-3.5-turboを呼び出す
response = openai.ChatCompletion.create(
    model="gpt-3.5-turbo",
    messages=messages
)

# 出力テキストを取得
output = response.choices[0].text.strip()

print(output)

スクリプト内では『ルールを参照しながら、文脈に適した形で表現を変換してください。例えば、入力文章が「電源を切った」のような過去形であれば、「ボタンを押した」と過去形のまま変換してください。』と命令を与えることで表記ゆれだけでなく、より文章に適した変換をしてくれます。プログラムと異なりGPTの自然言語処理能力により、多少の表記の揺れに対応されます。

Step3. 実行します

実行すると以下のように出力されました。太字部分がGPTによって変換された部分です。

変換前の文章

電源を切ったら、システムが終了処理をします。取り消す場合は、もう一度ボタンを押してください。 リセットすると、再び有効になります。取り込む前に、必ず保存しておくこと。
変換後の文章
ボタンを押したら、システムが終了します。キャンセルする場合は、もう一度ボタンを押してください。クリアすると、再びアクティブになります。ダウンロードする前に、必ずバックアップしておくこと。
変換後を見ると「電源を切った」を「ボタンを押した」と過去形として変換しております。他の部分もきちんと変換されておりました。ルールベースではないため、何回か実行すると変換のされ方が変わったり、100%正しく変換されるわけではありませんでしたが、目視で行うことを考えると非常に簡単にルールを統一することが出来ました。

まとめ

本記事では、AI技術の一つであるGPTを活用して、表記ゆれを自動的に検出し統一する方法について解説しました。GPTを利用することで、表記ゆれの問題を効率的に解決し、データ処理や分析の品質を向上させることが期待できます。具体的には、基本ルールを用意し、スクリプトを作成し、実行することで、文脈に適した形で表現を変換し、表記ゆれを統一できます。この手法を活用することで、データの整合性を保ち、検索や集計が容易になり、情報分析の精度を向上させることができます。また、業務効率も向上させることができるため、企業や組織の情報管理や意思決定において非常に有用です。GPTを活用した表記ゆれの検出と統一は、データ品質や分析精度の向上に大きく寄与するでしょう。
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