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「トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして」を読んで

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脱規模の経営をめざして

ものづくりに携わる人に限らずこの本は本当に読むべきだと思いました。トヨタ生産方式を確立した大野耐一氏の人生の集大成とも言える本で、ある意味で究極のダイエット本です。より言えば、全身の細胞を活性化させ鍛えつつ最適な体型に保ち、どんな環境でも生き抜く身体と精神を磨くための本です。

でもその本質は繰り返し述べられているように「必要なものを必要な時に必要なだけ作る(提供する)」という事だと思います。
今まで知りながらちゃんと向き合って読んでいなかったのが悔やまれるくらい。サブタイトルの「脱規模の経営をめざして」というところに全てが込められています。つまりこれは単なる生産方式の本ではありません。これを掲げてものづくりの改革が徹底されたトヨタが日本最大規模の会社になっているのは面白いところです。
しかしその理由は読めばわかります。

「自動化ではなく自働化」の意味

この本でようやく「自動化ではなく自働化」の意味が腹落ちしました。どんな装置も動くだけでは意味がない、価値を生む=働く必要がある、価値を生み続ける仕組みを作るのが「自働化」であるという事です。その意味で必ずしもロボットなどの自動機を入れるのには意味がなく、そもそもその作業が必要なのか考えるところから始まるという話に続きます。
逆に言うとカンバン方式などを表面的に取り入れる事自体が問題を作りかねません。手法にとらわれるとリバウンドや不調をもたらす諸刃の刃なのはダイエットと同じかもしれません。この本でも「生兵法は大怪我のもと」と戒めています。

低成長時代を生き抜く

この本はオイルショック直後に書かれていますが、直近でも様々な経済的ショックを経験している現代の人は特に第5章「低成長時代を生き抜く」から読むとこれは読まねばと思えると思います。
スナップショット的な状況把握に基づく短期的な生産・経営改革ではなく、日々の生産活動、経済活動の流れの中でどう本質的なニーズに沿ってシステムを構築すべきかが書かれています。
その対比になる規模を追うようなフォード生産方式もきちんとヘンリ・フォード1世の自著を引用しながら本来は同じビジョンを見ていた事を見出しており、深いリスペクトを感じます。結局は後進の人々がその真なるビジョンを受け継ぎながら中身を時代や状況に合わせて更新し続けられていないことが後々の課題を生むというのはいつの時代も変わっていません。

今再び読むべき名著

40年前の本ですが、全く古さを感じさせないどころか今またハードウェアが再び新たな価値を生む可能性が出てきた今だからこそ心新たにじっくり読むべき本だと深く感じました。単なる一ものづくり方式の説明本ではない名著と呼ばれるだけの時代に左右されないインサイトが盛りだくさんです。
人生をかけて本質的なものづくりに取り組まれた大野耐一さんに本当に心から敬意を表したいです。

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして -大野 耐一 (著)

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