2023年7月に認定スクラムマスターに合格しました。試験だけでなく、研修の参加も必要で、今まで受けてきた試験とは異なる形でした。研修もあるからか、学びもかなり多かったので、認定スクラムマスター(CSM)の合格体験記としてまとめておきます。
認定スクラムマスターとは
認定スクラムマスターとは、「Scrum Allianceが発行する認定資格」です。まず、スクラムガイドによると、スクラムとは以下のように説明されています。
スクラムとは、複雑な問題に対応する適応型のソリューションを通じて、⼈々、チーム、組織が価値を⽣み出すための軽量級フレームワーク である。
このスクラムには3つの役割があります。それが「①プロダクトオーナー」、「②開発チーム」、「③スクラムマスター」です。「認定スクラムマスター」は、この「スクラムマスター」に特化した資格となります。スクラムについての詳しい説明などは、本稿では割愛します。
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取得までの大まかな流れは「①申し込み/入金」「②研修」「③試験」となります。まず、私の場合は認定スクラムマスターの研修を行っている日本の会社さんのwebサイトから申し込みをしました。私の勤めている会社が費用を持ってくれたので、せっせと申請をあげて入金を済ませました。
研修については後述しますが、オンラインとオフラインを選択でき、3日間研修が行われます。スクラムマスターの認定団体はScrum Alliance以外にもいくつかあるようなので、講義が日本語か/英語かなど調べてみるとよいでしょう。値段も違っているようです。
研修が終わると、最後に試験を受けることになります。オンラインで受験できます。試験に合格すると、認定証がもらえます。有効期限があり、2年となっています。
ちなみに、Scrum Allianceの公式サイトはこちらのようです
研修について
研修はオンラインとオフラインを選択できるようです。私はオフラインの2泊3日合宿型を選択しました。そして、3日間の研修は平日に実施されたので、業務調整を行い、3日間は研修に集中できる環境をつくってから臨みました。
研修とテキストはとにも日本語で行われました。別団体では英語?の研修・試験もあるようですので、英語に苦手意識がある方は申し込みをする前に、日本語で行われるか調べた方がよさそうです。
そして、私が参加した研修は、受講生がだいたい20人ちょっとで、講師の方が3人いらっしゃいました。受講生の年代や職種(ほぼIT業界の職種です)は様々で、20~30代くらいの人が多いかな?くらいです。全員がスクラム経験者というわけではなく、私のようにスクラム未経験者も参加していました。
テキストが配布され、テキストに沿いながら講義パートとグループワークパートをこなしながら研修が進みます。研修は主体的な参加が求められます。最初のうちは、スクラムの背景や説明の講義パートが多めでしたが、徐々にグループワークパートも増えていきます。スクラムを体験するようなワークで、ポストイットなども使いながら制限時間内にチームで成果を出すように動きます。
オフラインでの研修でしたので、オフラインに比べると会話も作業もスムーズで、チームの雰囲気もよく熱心に取り組むことができました。
私は、配布されたテキストにメモを書き込んだり、ノートにメモを取ったりと古き良きスタイルで受講していました。ノートやペンなど書き留めるものがあると便利です。グループワークの際には、時間制限もあったので、スマホで時間を測っていました。
ちなみに、研修施設はとてもきれいで、ご飯も美味しく頂きました(重要)。
試験について
研修を受け終わると、メールが届き試験を受けることができるようになります。試験はオンラインで受験します。制限時間は60分で、問題数50問中37問以上で合格となります。正答率74%を目指します。
試験では日本語を選択可能できます。ただ、英語を訳しているからか、ところどころ不思議な日本語に出くわします。が、大きな問題にはならないと思います。合格すると認定証が発行されます。実際に自分の名前が入った認定証を見るとうれしいですね。
不合格の場合は、もう一度無料で受験できるようです。それ以上の受験は1回あたり25ドルが必要になるようです。
スクラムは独特な専門用語も多く、ウォーターフォールとは違った考え方をするので、研修を受けてからあまり間を置かず(研修の内容を覚えているうちに)受験することがおすすめです。
雑記
スクラム未経験で、認定スクラムマスターの研修を受けた私の雑記です。思ったままを書きなぐっていきます!
体験記
認定スクラムマスターを受けたきっかけは、上司から受けるように勧めてもらったからです。ずっとウォーターフォールで業務を行っており、アジャイルは未経験で不安もありました。調べてみると「厳しい」とか書かれている記事もあったりして、戦々恐々としていましたが、えい!と思って参加を決意しました。
ただ、費用が思った以上に高く、会社に費用を負担してもらう以上、落ちれないな…と思い、研修の一か月前からアジャイルの有名な本を読み込みました。こちらの本です。
Jonathan Rasmusson(2011)『アジャイルサムライ−達人開発者への道』オーム社
会話調な文体で文字を目でなぞるだけだと、頭に入らないなと思い、要約メモを取りながら読み進めていきました。毎週、土日どちらかの午前中はカフェに行き、『アジャイルサムライ』を読んでいました。さらに、同じように認定スクラムマスターを受講する人たちとの社内チャットグループがあったので、毎週、読んだところまでの感想を勝手に投稿していました。『アジャイルサムライ』を読んだことによって、おおまかな考え方や独特な専門用語を知ることができました。
もし準備に時間が取れないのであれば、「アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験」の参考書を読むことをおすすめします。こちらはアジャイル開発の基礎知識を問う資格です。資格の参考書なので、①知識が網羅されている、②用語の解説が載っている、③要点がまとまっているので、おすすめです。そして、この参考書はページ数が少なめ?だったので、サクッと読めます。試験の前に用語の確認する用語集としても使い、とても重宝しました。
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ただ、『アジャイルサムライ』を読んでも、アジャイル検定の参考書を読んでも、肝心の「スクラムマスター」とは何かイメージがあまりできませんでした。具体的に何をするのか、どんな役割なのかイメージできず、正直、頭の中には「?」がたくさんうまれました。準備はしていましたが、まだアジャイルをよく理解できていない状態で研修に向かうことになりました。
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研修に行ってよかったことは、「知識の矯正」ができたことです。3日間研修を受けるので、知識が広がる/深まるのは当然のメリットです。
ただ、あえて別視点でメリットを上げるのであれば、私は「知識の矯正」だと思います。準備としてアジャイルの知識を入れたものの、一部正しく理解してなかったようでした。勘違いをしていたことが研修を受けたことによって、アップデートできたということです。具体的には、プロダクトオーナーの振る舞いについて勘違いしていました。スプリントレビューで、プロダクトオーナーはレビューをするのではなく、レビューを受ける側だったのですね…!独自解釈のアジャイルではなく、本来ある姿をきっちり捉えることができました。
ちなみに、研修を受けて「スクラムマスターとは?」という謎もちゃんと解消できました。定義がふわふわしている理由もわかって、書籍での知識習得の限界も感じました。
集合研修のメリット
研修をオンラインで受けるか、オフラインで受けるかかなり悩みました。「えぇー泊まり?」とか思っていましたが、社内の方に「合宿の方が得るものが多いのでは?」と背中を押されて合宿を選びました。合宿に参加した後、「合宿でよかったぁ~」と思えるようになりました。
なぜ合宿がよかったかというと、雑談が楽しかったからです。研修以外の時間──夕食や夕食後 には講師の方も含めて、他の受講生と歓談していました。まず、講師の方の知識や経験がすさまじく、個別にスクラムについて質問したり、スクラムを実施する上での相談にものってもらいました。
この歓談中の情報密度が高く自室に戻ったときに、聞いた話をメモに残していました笑。スクラムだと人事評価をしづらいというような話もあり、研修本編では出てこないだろう様々な話を伺うことができました。さらに、他の受講生の質問やその回答を聞いているだけでも勉強になりました。他の会社の様子や悩みを知れて、少しだけ世界が広がったような気がしました。
そして、他の受講生の方とおしゃべりも楽しかったです。IT業界と言っても広く、「井の中の蛙大海を知らず」という言葉が頭をよぎりました。研修は終始雰囲気がよく、意欲にあふれ前向きな方が多く、とても刺激になりました。
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グループワークがやりやすいということも集合研修のメリットです。特に、ちょっとした会話がやりすいです。目の前いることで作業が進みやすいです。そして、身振り手振りも感情などの情報を持っていることを再確認しました。
スクラムの利点
スクラムが優れているなと思った点が多々あります。まず、1つ目はレビュー観点がウォーターフォールと全然違うことです。ウォーターフォールモデルのレビュー観点は、乱暴にいえば「期待した通りになっているか」となる場合が多いです。一方、スクラムの「スプリントレビュー」では、プロダクトの価値に対するレビューが多いです。(スプリントレビューの前に、想定したように動くかという観点でのチェックも行いますが。)
今まで「アプリの価値」についてレビューする/されることが少なかったので、衝撃でした。動くアプリケーションをみて、ターゲットユーザーにちゃんと刺さるか、使い勝手をよくするのはどうするかなどの観点でレビューが進みました。試行錯誤しながら、完成を目指すスタイルの威力を感じました。
2つ目は、プロダクトオーナーと開発者の距離が近いことです。プロダクトの「why/what」と「how」の距離が近いことです。つくるもの(what)すでにどこかで決まって、どう実現するか(how)だけ開発者が担当するってことありませんか?特に、なぜこの商品が必要なのか(why)はほとんど降ってこないまま、開発を進めることってありませんか?
スクラムだと、プロダクトの「why」と「what」を担当するプロダクトオーナーとプロダクトの「how」を担当する開発者の距離が近いです。だから、「改善」がしやす環境が整っています。もう少しいうと、改善要望が出て直すまでのリードタイムが短くなるようになっています。変更に強いのはこのあたりも影響していそうですね。
おわりに
上司から研修を勧められたこともあって、資格を取って終わりではないです(たぶん)。この経験を活かすような動きを求められていると思います(ですよね?)。
スクラムは経験主義です。だから、社内でスクラムを広めるには、やってみるのが一番手っ取り早いと思いました。例えば、ワークショップのような形式で、同じ場所に集まって、ああでもないこうでもないといいながら、体験してみるといいのではと。
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研修のある資格を受けて、気づきがたくさんあった時間を過ごせました。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。