新しいことや環境にチャレンジすると何かしらの壁にぶつかります。他の人によっては簡単に超えられるものでも、自分にとっては超えるのが難しいこともあります。最近、自分のチャレンジで大きな壁になったのは「質問」でした。
今までやってきたように質問するだけではだめで、もっとたくさんのことを考える必要があることに気づきました。自分の思考を整理するために、そして、同じ悩みを持つ人がもしいたら参考にできるように書き記しておきます。
新人のとき
新人の頃、自己解決できてないときは、だいたい「実装途中でエラーが発生し、解決策がわからないとき」でした。よって、エラーの原因を探す方法や解決策について質問するケースが多かったです。また、すでにある資料や仕様書、コードに対してうまく理解できない部分の質問をしていました。総じて技術的な質問が多く、一目でみてわかる課題(エラーなど)があり、自分で試行錯誤しても解決できなそうなときに質問していました。
このような場合、何を聞きたいのか明確です。知りたいことは、主にエラーの原因または解決方法、技術用語の意味や解説です。そして、チームのリーダーか、年の近い先輩に対して質問し、解決を図っていました。
相手は自分の実装タスクを詳しく把握していないという前提のもと、①「結論」、②「発生事象」、③「経過」を質問前に整理しておくと、うまくコミュニケーションが取れて、スムーズにエラーを解消することができました。
■エラーが発生して質問する際に整理しておくとよいこと
①結論
→何をどうしたいのか?何を聞きたいのか?
②発生事象
→何が発生したのか?
→問題が発生した内容、エラーログの内容
③経過
→何をしてエラーが発生したのか、操作方法や作業内容
→エラーが発生後、何を調べて何を試したのか
新人のときに身につけた質問力で歯が立たなくなったとは?
質問がうまくできていないなと思ったきっかけは、「自分の質問に対して質問や指摘がくる回数」が圧倒的に増えたことです。自分の知りたい答えにたどり着く前に、自分の質問について改めて相手からヒアリングされることが増えました。「どんな場面を想定した質問ですか?」とか。
質問の前段の説明に不足が多く、前提があいまいで答えづらい質問になっていました。さらに、いくつかの質問を振り返ってみると、質問をした後をイメージできていないことが多くありました。なので、今までと同じようなやり方では歯が立たなくなっているかなと思いました。
ちなみに、「質問をした後のイメージ」というのは、「答えをもとにした次のアクション」のことです。質問の答えを知って、(例えば)どうドキュメントを作成するのか、どうロジックを組み立てるのかイメージが確立していませんでした。言い換えると、答えを知ってもアクションが発生しないような質問をしていました。
重要度が低い質問をするのではなく、もっと重要度が高い質問に注力する方がよかったと思います。
なぜ歯が立たないのか?
では、なぜ新人のときに身につけた質問力で歯が立たなくなったのでしょうか?
原因①「問題の性質が変化」
原因の1つは、直面する問題の性質が変わったからです。新人の頃に直面した問題は、バグの原因や解決策がわからないなど問題が局所的で単純な問題が多かったように思います。そして、一撃の答えで解決することも多かったです。さらに、先人の残した記事で解決することもできました。
一方で、最近直面している問題は、検討内容の幅が広く、複雑になってきました。まったく同じ状況は過去に発生しておらず、常に自分で状況を鑑みて、最適なロジックを考えることを要求されます。一撃で解決することも少なくなり、調べたり表にまとめたりいくつかの資料を組み合わせて解決するような問題に立ち向かうことが増えました。
そもそも問題は一目瞭然ではなく、自分で問題を発見する方が回数としては多いです。このように問題の性質がだいぶ変わっていました。
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原因②「解像度が低い」
原因の2つ目は、自分の解像度が低いことにあります。「解像度が低い」状態とは、①問題を検討しやすいレベルまで分割できていない状態、②情報を適切に組み合わせて結論を導き出す力が不足して、把握がうまくできていない状態、または、①と②の複合のことです。
①と②で共通しているのは、構造の理解が足りていないことです。データの流れや組み合わせなど繋がりを見いだせていない状態でした。構造の理解を難しくしているのは、突破口とプロセスを見つけるのに時間がかかることです。
ある程度枠組みだとか考えるときのコツやプロセスを知っていると構造の理解が進むのですが、最初は難しいです。どこからどう手を付けて、どんなプロセスを突き進めばゴールにたどり着くかわからないことが多かったことが、解像度が低い状態を作り出していると思いました。「質問をした後をイメージできていない」のは、このプロセスとゴールのイメージができていないことの表われです。
では、どうやって質問力をパワーアップさせるのか?
では、どうやって質問の精度あげていけばよいのでしょうか?
地道に一つ一つ質問の精度をあげるように、準備を十分に行います。
まず、「答えの期待値」によって、「答えがある質問」と「答えがない質問」に分類します。「答えがある質問」というのは、言葉の意味であったり、バグの解消法など、答えが1つに決まりやすいタイプの質問です。
一方、「答えがない質問」というのは、自分で検討した案に対して意見をもらったり、チェックをしてもらうなど、模範解答ではなく最適解を求めるような質問です。
2つの質問のタイプに分類して、次にどんなアプローチで質問を組み立てるか検討します。前者の「答えがある質問」の質問方法は、前述した「新人のとき」に登場した「エラーが発生して質問する際に整理しておくとよいこと」の項目に沿って、質問と前提を検討していきます。後は順番に、「○○について教えてください。(結論)」「□□という事象が発生しました。(発生事象)」「△△ということを行いました。(経過)」を質問する相手に伝えていけばOKです。
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後者の「答えがない質問」の場合、前提も含めて以下のようなことを検討します。
■案を検討して質問する際に整理しておくとよいこと
①想定シーン/条件
→ユーザーがどんな業務を行うことを想定したシーンなのか
→質問したい場面が発生するシチュエーションはどんな場面か
→質問に応えるための前提を提示
②課題点/解決策
→改善ポイントや変更したい意図は何か
→課題点を解決する検討案を提示
→扱っている問題の全体像を提示
③質問内容
→~はどう考えるか、ご意見をお聞かせください。など質問文
→聞きたいことは何か提示
④質問後のアクション
→回答の期待値を想定し、次の行動を検討する
→回答の重要度を鑑みて、質問をするレベルか検討する
「①想定シーン/条件」では、聞きたい内容が発生する事象について整理します。誰が何をいつ、どこでなど想定シーンを相手に伝え、どんなシュチエーションなのか整理し、共通認識をつくります。
次に、「②課題点/解決策」を提示します。「(意訳)○○には課題点がありますが、□□という解決策で対応します」。答えのない質問なので、この②が一番の肝になります。自分で考えた案を順序立てて説明します。自分で考えた案を相手に伝えるときは、説明漏れがないように伝えるので、ある程度まとまった量になると思います。逆に説明が短いと、説明しきれていない可能性があります。質を求めることも大切ですが、量に頼ることも悪くはないと思います。
「③質問内容」は短くてOKです。この手の質問は質問文自体が重要なのではなく、質問の前後です。質問の前にある「②課題点/解決策」や質問の後にある「質問後のアクション」を具体的にそして詳細にすることの方が大事なことが多いです。自分の考えを伝えて相手の考えとすり合わせることや、次のアクションを起こしていくことに価値があるからです。
別の視点からいうと、相手とのすり合わせをしたり、次のアクションを起こすために周囲を巻き込むときにする質問を「答えのない質問」とここでは呼んでいます。
そして、「④質問後のアクション」がどれくらい鮮明にイメージできるかによって、質問の「威力」が決まります。この質問によって、ドキュメントの精度をあげたり、次の合意形成がしやすくなります。逆にいうと、質問後のアクションが不明確だと質問の意図が伝わりづらくなります。
さらに質問力をパワーアップさせるもう3つの観点
上記のところまで、「何を質問するか」と「どのように質問するか」を混ぜて記載してきました。これで一応質問をすることはできるのですが、まだ質問の精度をあげれる観点が3つあります。1つ目が「誰に質問するか」、2つ目が「いつ質問するか」、3つ目が「質問のために資料を作成するか」です。
①誰に質問するか
まず、誰に質問するとよいかという観点を考えます。新人の頃は同じプロジェクトの先輩や上司など、質問する人がほぼ決まっていました。しかし、役回りが変わるにつれてステークホルダーが増えてきて、誰に聞くか検討が必要になります。
部署や役職によって、知っていることや判断できることに濃淡があり、しかるべき人に質問しないと十分な回答を得られません。最悪、たらい回しにされることもあります。「○○さんに聞いて」と言われたら、誰に質問するかという観点の検討が不十分の可能性があります。
検討するタイミングとしては、質問の期待値を考えるときに「誰に質問するか」を考えます。おそらくこの質問は○○さんに聞けば答えてくれるだろうという、見込みがあるかです。部署や役職、担当業務をヒントにして考えていきます。日頃のコミュニケーションがこのような時に、じわじわ効いてきます。
②いつ質問するか
タイミングを検討するのは意外と重要です。扱っている問題の緊急性・優先度と関係してくるからです。検討する観点としては、扱っている問題/課題をいつまでに片づけるのか、テキストベースで質問できるか(それとも対面で説明が必要か)、質問する相手のスケジュール調整が可能かなどがあげられます。
緊急性の高い課題を抱えていて、そのための質問であれば質問をすることに即時性が必要です。素早く質問するのであれば、チャットなどでDMするのが近道でしょう。
一方、緊急性があまり高くないのであれば、定例となっている会議で質問したり、空いている時間に質問することでもよいでしょう。「チャットなどでDM~」と記載しましたが、質問形式もタイミングを検討する観点です。資料を送って意見ください。という聞き方もできるでしょうし、会議を設定する方法もあります。会議をするのであれば、自分の都合だけでなく相手の都合もあるので、質問のタイミングに影響します。
③質問のために資料を作成するか
質問をするのに、チャットや口頭だけで済む場合も多分にありますが、資料をつくって説明が必要な場合もあります。前提や課題が複雑な場合は、図やスクショ、表などを作成して視覚的に整理されたドキュメントをもとに説明をした方が相手に伝わりやすいです。資料は残せるので、後から見返したり、認識合わせすることに一役買います。
資料をつくるかどうかは、質問の複雑さやボリューム、重要度によって決まります。もちろん、資料をつくることが目的なのではなく、質問を適切に伝えて回答を引き出すための資料なので簡易的につくるのが望ましいです。
例えば、画面の項目について質問するのであれば、テキストで「○○画面の○○ボタンについて、~」と伝えるより、画面のスクリーンショットを取得してボタンを赤枠で囲んだ資料を見せた方が伝わりやすいです。
そして、期限など時間と相談しながら、(必要であれば)資料を作成していきます。個人的は、質問する際に「たたき台」のようなものを作成して、質問事項を吹き出しに記載しておく方が感触がよいので、なるべく作成するようにしています。
おわりに
自分の考えていることをうまく出力できなくて、四苦八苦していました。ゴールとプロセスがイメージできず、場当たり的な質問で相手に不信感を与えてしまったこともあります。ただ、ふと考えると、質問で信頼を勝ち取れることもありそうです。
優秀な人はよく、はっとするような質問や大局をみている質問をしています。信頼はこのような発言からも積みあがっていきます。もう少しいうと、質問で力量を推し量れてしまいます。優秀は人は、量でも質でも圧倒的している気がします。
長くて暗いトンネルを振り返れるようになったの記事としてまとめてみました。何かの参考になったらうれしいです。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。