60
41

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 1 year has passed since last update.

1.はじめに

資格勉強会の企画運営を担当することになりました。

新卒1年目向けの資格勉強会で、AWS系の資格が対象でした。企画運営とは、勉強会のカリキュラムやスケジュールを作成したり、勉強会で司会進行などを行います。2人で行います。問題の解説をする講師(のちに出てくるメンターのこと)は別にいて、講師に何をしてほしいのか伝えたりもします。いわば、勉強会の枠組みを決めて、実行する担当です。

一方、受講生が資格を取得するのは難しいものです。資格取得の課題が課せられて、1人で取得できる方もたくさんいるでしょう。しかし、業務と並行して学習を進めるのは多くの困難が伴い、合格まで至れない経験をした方もいるのではないでしょうか。

本投稿では、「勉強会」という「ともに目標を同じくする仲間」と「目標とする資格を持ち、教えられる先輩」がいる環境の強みを活かし、どうにか合格まで導こうとした企画運営担当の奮闘記となります。

注意
この記事は1万4000字あります。

2.勉強会の役割

資格勉強会の役割を自分なりに検討してみました。まず、ゴールとしては勉強会参加者が資格を取得することです。研修の一環として勉強会を開催し、勉強会自体を外注せず、社内の合格者を中心にしたメンバーで、勉強会を内製するという前提で検討しています。

スライド6.JPG

①機会の創出

まず、資格取得を目指すという機会の創出が勉強会の役割の1つです。会社の推奨資格であれば、なおさらでしょう。目指すべき資格と期限を提示し、取得を促すということです。自発的に取得することが理想ですが、勉強開始のスタートは早い人遅い人がいるものですし、勉強の機会(時間)を用意するだけでも、効果があると思います。会社が必要としているスキルというメッセージにもなりますね。

勉強会という形であれば、同じ目標を目指す仲間がいること、勉強を相談する講師がいることもメリットですね。ここでいう「機会」とは、「環境」とも言い換えられます。勉強時間の確保だけでなく、相談しやすい仲間・講師が近くにいるという環境の創出ともいえます。また、教材費、受験費の金銭的補助もあるといいですね。IT系の資格は受験料が高いものも多いので。

メンターからの関わりという点では、お節介ですが、メンター側から勉強できているか関心をよせるような機会があってもよいと思います。「わからないことや質問があったら、いつでも聞いてね」では手遅れになっていることもあるからです。

②ノウハウの提供

役割の2つ目はノウハウの提供です。まず、勉強方法に関する「ノウハウ」があります。どんな教材がよいか、どれくらい勉強時間を見込めばよいか、受験上の注意など初回受験では気づけないノウハウの提供です。様々な教材がある中で、本番レベルに近い教材、解説がしっかりしている教材など自分で探す手間を省くことができます。また、勉強スケジュールなどの相場もわかります。

また、問題を解くうえで必要な知識・根拠という「ノウハウ」も提供できます。メンターは資格保持者なので、問題傾向やよく出題される問題も知っています。問題の解説の際に、根拠となる問題文の場所、解答の根拠などを勉強会の中で伝えることができます。

③モチベーションの強化

個人的には必要だと思っているのが、モチベーションの強化です。資格の勉強って、モチベーション上がらないと思います。勉強することもめんどくさいし、勉強する時間を捻出するのも、パワーが必要です。モチベーション云々は勉強会でカバーするものでないかもしれません。

でも、期待値を伝え続けることは必要だと思います。だって、資格の勉強はめんどくさいからです。簡単に逃げれます。合格や受験することから逆算して、やっぱり必要かなと思って勉強会の役割に入れてみました。

3.実際にやってみたこと

勉強会で実際にやってみたことをまとめてみます。

3.1機会の創出・費用補助

①勉強会の開催
勉強会の進め方を伝えるオリエンテーションを最初に1回実施し、その後は10回勉強会を行いました。基本的には隔週で開催し、1回1時間30分です。オンラインで開催していました。カリキュラムは、勉強会初回に、本番相当レベルの問題演習を行い目指すべきレベル感を知ってもらいます。解いてもらった後に、解説も行いました。

その後の勉強会3回は、宿題で問題を解いてもらって、解答と根拠をチームごとに確認していくディスカッションの時間と、振り返りを行ってもらいました。そして、後半回はひたすら量解くこと/わからないことを質問するようなカリキュラムを組みました。勉強会の時間はなるべく仲間やメンターと話せるようにチーム単位での取り組みを基本としていました。

②宿題
毎回、宿題を課していました。宿題は3種類あります。①問題演習、②アンケートの回答、③振り返りシートの記入です。

宿題の問題演習は1回10問程度です。解説は動画を撮影し、演習後に動画を見てもらっていました。メンター3人が3・3・4問ずつ分担し、動画1本5~6分で3本作成しました。解説動画は巻き戻したりできたり、勉強会に参加していない人にも展開が楽です。

アンケートで、勉強会ごとに理解度・難易度を聞いていました。また、日々の勉強進捗(勉強時間)も記載してもらっています。モチベーションを聞く項目は回答に個性がでました。モチベーションの高い人と低い人の差がすごかったですねぇ。

振り返りシートは、まず模擬試験受験日と、本試験受験日を記載します。そして、勉強スケジュールと実績を記載してもらいます。勉強スケジュールを立ててもらって、実績を書くまでが宿題で、勉強会の振り返りの時間で内容を確認します。

勉強スケジュールは、「何を」「いつまでに」「どれくらい」 行うのかがポイントです。ある程度具体的に書いておかないと、チェックができなくなります。最初はかなりの確率で、「高い目標」をつくってきて、勉強会を重ねると現実的な目標に変わってきます。できていないのであれば、どうやったらできるようになるか、を考えるきっかけになります。

③受験費・教材費補助
合格すると受験料を経費として申請できます。また、問題集も経費申請の対象です。申請の方法も簡単に周知していました。AWSは模擬試験が無料で受けられるようになったのは大きかったですね。模擬試験受験のハードルが下がっただけでなく、何回も模擬試験を受けれます。

④受験予約
受験するところまでいってほしかったので、受験予約は早い段階で行ってもらいました。受験日を決めるのは受講生ですが、予約は○○日までにしましょうと企画運営側で期限をつくっていました。勉強を進めてみないと、感触がわからず受験日を設定しづらいかと思いましたが、ズルズル受験日を後ろ倒しにすることは避けたいです。なので、今の時点で受験日を設定し、必要になったら変更しましょうとアナウンスしました。もちろん、受験日を変更できる期限や方法を伝えた上です。

3.2ノウハウの提供

①学習方法・計画
模擬試験や受験日を決めてもらいました。受験日を決めるにあたって、参考情報として、理想的なスケジュールを伝えていました。〇月ぐらいに模擬試験を受けて、〇月くらいに受験できるといいですねと。理想的なスケジュールは、歴代の勉強会参加の様子や自分たちの経験から、算出していました。

勉強方法は、アウトプット重視の勉強スタイルを提案していました。アウトプット7割、インプット3割くらいのイメージです。参考書は、熟読するのではなく、リファレンス的に使いましょうと伝えています。問題を解いて、解説でインプットしながら、量をこなすのが合格への近道だと考えているからです。

勉強会は、宿題などで問題をどんどん解いて、勉強会でわからないところを整理する流れでカリキュラムを組みました。

②受験上の注意
受験のちょっとした注意点やノウハウを伝えられるのも、勉強会のメリットです。例を1つあげると、「オンライン受験より、テストセンター受験をおすすめ」とは伝えていました。オンライン受験だとネットワークや身分証明書の問題でごたごたする可能性があるからです。オンライン受験自体は負担が少ないかもしれないですが、受験するまでの準備や環境づくりに苦労する可能性があるので、「選べるならテストセンター受験」を勧めていました。あと、テストセンターは枠に限りがあるので、受験日を決めるだけでなく、予約まで早めにしておくのがポイントです。

AWSは時々再受験キャンペーンなど、受験料にかかわるキャンペーンを実施するので、キャンペーン情報を見つけたら周知をしていました。

さらに、学習教材のノウハウも伝えていました。AWS系資格のための勉強教材は世の中たくさんあります。いくつか問題集の中身をみて、問題量・難易度・解説の質の点でどれもできがよかったので、TechStockを選び、受講生にお勧めしていました。2~3周して、解答率8割が目標です。

③問題解説/知識整理
資格取得を目指す勉強会なので、当然、問題演習を実施します。メンターで分担して資料を作成し、問題の解説を行いました。解説資料は「①問題文のどこを注目するか(根拠をどのように導くか)」「②問題に登場するサービスの紹介」「③不正解の選択肢の説明」あたりを盛り込みました。時には、表などを使って紛らわしいサービスをまとめて紹介したり、「この知識もついでに覚えましょう」と言って周辺知識も解説資料に盛り込んでいました。

スライド2.JPG
スライド3.JPG

この解説資料もつくるのが大変です。
業務と並行して勉強会のメンターもやってもらっているので、勉強会の数週間前には資料作成に着手できるように作成スケジュールを組みました。宿題の問題解説は、解説資料を作成して、動画を撮っていたので、受講生に展開する1~1.5か月前から準備を開始していました。動画編集は、別部署の方にお願いしていました。タスク管理をしていた身からすると、解説資料作成が何本も並行してはしるので、解説資料のチェックや進捗管理がすこし大変でした。

「勉強会の中に問題演習+解説」を行う時もありましたが、回数を少なくしました。問題演習を解いているときは黙って問題を解くだけ、解説のときは黙って聞いているだけになって、メンターやほかの仲間と交流がありません。質疑応答ではほとんど発言がなく勉強会が終わってしまい、「仲間や先輩がいる」という勉強会の強みが発揮できないからです。

宿題として問題を出して、勉強会でチームごとに解答/根拠を確認するようにしました。このスタイルの方が話しやすくて、質問が出たりします。受講生からすると、周りは同期なので、話しやすい雰囲気は最初からありました。時間があまったら、もくもく会に切り替えていました。

3.3モチベーションの強化

①メンター付きチーム制
勉強会では、チーム制を導入しました。受講生5~6人にメンターが2人ついて1チームです。チームを分けることによって、会話しやすくなり、質問も出てくるようになりました。勉強会がはじまって、ヒーローインタビューとアンケートの結果報告をした後、チームごとに分かれて、コンテンツを進めていました。チームでやってほしいことを伝えて、受講生の誰かが司会役になって進めます。サポートをメンターが行うような形でした。

最初は、やり方がつかめず、うまく進められないこともあったようですが、回数を重ねると自分たちでうまく進められるようになりました。また、チーム制にすると、メンターと仲良くなれるので、ちょっとした世代間交流にもなりました。

②振り返り会の実施
振り返りを毎回行うのは地味に大事です。1人だとチェックがあまくなるので、誰かとシェアすることで現状を再認識してもらいます。1回の勉強会で、20分~25分くらいかけていました。

まず、宿題として振り返りシート(勉強スケジュールと実績を記載するシート)を記載してきてもらいます。その内容をチームに分かれて、1人ずつ発表します。発表内容としては大きく2つで、「学習進捗」と「困っていること」です。ここで、躓いているところを聞いて、メンターが助言します。チーム内で振り返りを行うので、ほかの人の勉強状況がある程度わかります。早い人はかなり先をいくので、刺激にはなったと思います。

また、企画運営担当とメンターだけは、勉強会の前に準備ミーティングを実施します。その際に、受講生の様子を軽く報告してもらっていました。他のチームでやっている方法を展開したり、メンター自身の悩みを吸い上げるためです。ここで、順調な人のやり方の共通認識をつくって、各チームの受講生に展開します。少しでも振り返りの精度をあげるための工夫です。

③ヒアリングの実施
個別対応として、ヒアリングも2回行いました。勉強開始ごろにメンター2人と受講生の2on1を1回、模擬試験受験後に人事担当と受講生の1on1を1回です。

最初のヒアリングでは、「勉強の走り出しで何か不安を感じていないか」をヒアリングしていました。ですが、実は、受講生とメンターがしっかり会話して、信頼関係を作ることも目的の1つだったりします。受講生は新卒1年目、メンターは新卒2~3年目の方でしたが、部署が違ったりして初対面の可能性もあるので、ちゃんと会話する機会を勉強会開始の早い時期に設定しました。

新卒2~3年目のメンターは、「ヒアリングする側」の経験がほぼないので、質問項目は運営企画側で作成していました。結果、2on1でほぼ不安はでてきませんでしたが、何でも聞ける関係性をつくるという意味では、効果があったと思います。(この効果は受験期に感じました。)

2回目の1on1ヒアリングは、模擬試験受験後から、受験日までの勉強計画の再考をします。まず、模擬試験の手ごたえや日々の勉強進捗を聞きます。苦手分野や業務の忙しさもヒアリングして、ここから受験日までどう過ごすか確認しました。また、「あともう少しがんばって!」って、エールを伝えることも目的の1つです。

このようにして受講生に対して、メンターや人事、企画運営など違った立場の人が少しずつかかわって、サポートしてきた格好になりました。

④ヒーローインタビュー
勉強会の初めにヒーローインタビューを行いました。合格した受講生に「勉強のコツ」と「仲間へのエール」を少しだけ話してもらいました。勉強方法に個性があって、積み重ねがわかる話が多かったです。

合格したら、勉強会は任意参加というルールだったので、ヒーローインタビューを終えたら勉強会を卒業していきました。少しずつ受講生が減っていくのは、ちょっとプレッシャーだったかもしれません。

4.企画・運営をやってみて思ったこと

①モチベーションアップ施策が必要だと思ったきっかけ

企画運営として最初に勉強会の目標を決定します。KPIです。勉強会では毎年「合格者数」を目標にしていました。ただ、なかなか目標の「合格者数」に達成できずにいた過去があります。

「合格者数」を目標に掲げる前に、どうやったら「合格者数」を増やせるか逆算して考えてみました。そこで注目したのが「受験者数」です。そもそも「受験」しないと結果が出ないからです。当時は「受験」しないまま勉強会を終える方も多く、なんとなくフェードアウトする方もいました。ので、まず「受験する」ところまで到達してほしいと考え、「合格者数」と「受験者数」を目標に掲げました。

「受験者数」の目標を達成するために、勉強会としてどんな施策が必要か考えた時に「モチベーションアップ施策」が必要でないかと思いつきました。そもそも「受験」する前に「模擬試験」を受けることが望ましいです。企画運営の参画当時、模擬試験は有料でしたが、模擬試験受験料の補助制度があり、金銭的なハードルはありませんでした。

また、模擬試験といっても問題数が本番より少なく、30分もあれば解ける量でした。結果から見ると、合格者のほとんどは模擬試験を受けていた一方で、フェードアウトした人のほとんどが模擬試験も受けていませんでした。ここに対策が必要かなと思いました。

費用と時間に大きな負担がないのであれば、模擬試験を受けるにはある程度勉強を進めていて、戦えそうなだけの知識と自信が必要です。

そうです。自信です。

模擬試験を戦えそうな知識と自信を付けるには、継続的に勉強して量を解いて、正解率もそこそこあると自信につながります。勉強し始め時に「自信」はありません。そして、継続的に勉強するには「高いモチベーション」が不可欠です。一人だとモチベーションをあげたり、保持するのは大変です。だからこそ、勉強会という講師と仲間がいる環境を活かす策としてモチベーションアップ施策を取り入れようと思いました。

②勉強会のターゲットとメリット

資格取得に向けた研修の一環として勉強会を実施しています。新卒10数人~20数人ほど参加するのですが、様々なタイプの方がいます。合格まで自走できるかどうかという観点で、語弊を恐れずいえば以下のタイプに分けられます。

①1人で合格まで自走できるタイプ
②誰かとの並走があって、合格までたどり着けるタイプ
③並走があっても、フェードアウトしてしまうタイプ

勉強会は②のタイプの方に効果的です。②のタイプの方のために勉強会を実施するといっても過言ではありません。勉強の機会と目標設定の補助、定期的な学習状況チェックで、点数が伸びていき合格できる方も多くいます。

勉強会を実施してみると、メリットはこれだけではありませんでした。もちろん、②のタイプの方に勉強会は効果的です。が実際に勉強会を実施するとさらなるメリットに気づきました。そのさらなるメリットとは、③タイプを②タイプに移行させることです。

勉強会の初期では、以下のような割合だったように思えます。
①タイプ:②タイプ:③タイプ=1:2:2

勉強会終了時には、(どこまできっちり並走するかにもよりますが、、一般化すると)、以下のようになっていました。
①タイプ:②タイプ:③タイプ=1:3:1

②タイプと③タイプの違いは、勉強を続けられるかです。勉強会の初期では、モチベーションが上がらず、ほとんど手を付けられない方もいました。①タイプの方が合格しはじめた頃、少し点数が伸びてくると、③タイプの方は②タイプに移行していきました。勉強時間が伸び、習慣化した頃です。勉強時間が伸びてくると、勉強の進捗確認やわからない問題のフォローを主に行いました。そして、受験日になると合格していきました。勉強会という仕組みがうまくはまったということでしょうか。(だとうれしい。)

さらに、チェックもできるのも勉強会のメリットだと思います。PDCAサイクルを1人で回すうえで、難しいのはcheckです。だいたいPもDもAも1人でできます。でも、checkは1人でやると、精度がかけるような気がします。だって、生真面目に数字を使って記録をつけて、振り返るようなことはやりません。めんどくさいです。

勉強会では、振り返りするためのシートをつくって、チームごとに振り返りを意図的に行っていました。現状を正しく認識するためです。チェック内容をアウトプットするだけでも効果はあるように思えます。多少、結果を盛る人はいるでしょうが、勉強を見直すきっかけになります。仲間がいるというメリットを活かせた施策の1つになりました。

③やる気はやり始めてから上がる

やる気は勉強時間にある程度比例し、勉強時間は正解率に比例します。そして、正解率の上昇度合いは合否に直結します。 ただ、資格取得のやる気がはじめからある人は少数派です。特に会社の課題であればなおさらです。やる気がないわけではないが、高くもないというニュートラルなモチベーションの方が大半です。

最初はやる気がなくても、徐々にやる気が高まる方も多くいます。その特徴は正解率がちょっとあがってきたときに、やる気はあがるです。

勉強の初期は点数がすぐには伸びませんが、点数が上がってきたり、解ける問題が増えたことに気づき始めるとモチベーションがあがる傾向にあります。「ちょっとできるようになると、もう少しがんばってみようと思う」このサイクルの最初をつかめると、モチベーションがどんどんあがっていきます。

なので、「まずやってみる」勇気をもって取り組みはじめ、次にできたことを「実感」するところまでがんばってみるのがよいかもです。そうすると、「もうちょっとやってみる」ようになります。また、できることが増えてくると、どこができていないか把握できるようになります。苦手分野の発見です。そして、苦手分野の対策をするとまた、「ちょっとできるよう」になります。

スライド4.JPG

また、仲間から最初の合格者が出た時も、モチベーションがあがるきっかけになります。ライバル心に火が付くのか、「おっ!」と思うところがあるようです。なので、勉強会運営担当としては、最初の合格者を出すような動きをしてもよいかもしれません。実際に運営ミーティングで、講師担当に、「ファーストペンギン(最初の受験者・合格者)を出すことを目標にしましょう。」と伝えていました。具体的な動きとしては、(点数がよいのであれば、)スケジュールの前倒しの提案などです。

④アウトプット中心の勉強スタイル

基礎知識をしっかりといれて、そのあとに問題演習をするのが学生時代の勉強の流れでした。勉強会の受講生は新卒1年目なので、みなさん参考書を買って熟読されます。私もそうでした。

ただ、アンケートで、「参考書を読んだがよくわからなかった」「参考書を読むのはテンション上がらない」のような意見が散見されました。一方で、最初から順調に勉強を進められている人はほんの少しのインプットをしてすぐに問題を解きはじめ、解説を読んでわからないところは参考書をみる、苦手分野を重点的に読むという勉強をしていました。

勉強会を毎年行っていて、順調な受講生の勉強法などの知識も少し溜まってきたので、はじめからその勉強法を展開することにしました。

スライド1.JPG

インプットとアウトプットの比率は3:7くらいということを口酸っぱく伝えて、アウトプットに重心を置く勉強スタイルを提案しました。参考書を熟読するのは悪いことではありません。読んだだけで覚えるには難しく、退屈になってしまうので、早いうちから、問題慣れして、問題を解く中で知識を覚えましょう という意図です。最初からアウトプット中心の勉強スタイルを提案した世代は、比較的進捗がよかった印象です。

⑤量やりきることの重要性

社会人になって時間に限りがあって、効率的に資格勉強を進めたいと多くの人が考えていると思います。その観点でいっても、集中的に量やることが効率的なように思えます。少ない問題量で、多くの知識を得ることは理想ですが、1問に時間をかけて完璧にするより、問題を10問解いて6~7割を目指した方が早いし、覚えられると思います。

①問題の出題パターンに慣れること
②テスト範囲をなるべく網羅すること
③同じような問題に触れて、新しい知識を覚えること

①~③が問題量をこなすことのメリットです。勉強し始めだと、③の効果が最も高く、学習を進めるにあたって②→①と享受できるメリットが移行していくイメージです。

また、50%~60%くらいまでは、解いた問題量と正解率が比例する傾向にあります。ポイントとしてはあまり間をあけず、問題量を増やすことです。例えば2週間で、50問~60問解くなどです。逆に言えば、正解率が30~40%くらいの場合は、問題量不足の可能性があります。問題演習ではインプットも可能です。解説を読んで、わからない言葉を調べたりすることで、問題を解く度にインプットができ、必要な知識を埋めることができます。まずは量こなすことを目標に掲げるとよいかと思いました。

⑥チェック観点

チェックする際はどんな観点でチェックするか 事前に決めておくとよいです。資格取得の勉強なので、勉強の量と質、そして、勉強する意思を主にチェック観点として設定しました。

すなわち、①勉強時間、②正解率、③モチベーション です。

①勉強時間はさらに、「平日平均〇時間」「休日平均〇時間」と平日・休日を分けてチェックします。平日と休日で時間の使い方が一般的に異なるからです。勉強開始時期は、平日は30分~1時間くらいが理想です。直前はもう少し増やしてもよいですね。

②正解率は問題集の得点率です。AWS系資格でしたので、Tech Stockというサイトを活用したのですが、AWS認定クラウドプラクティショナーの場合は問題2周で正解率80%以上を目指したいですね。

③モチベーションは記述方式で書いてもらうのではなく、選択肢から選ぶようにしました。「高い、やや高い、やや低い、低い」の4段階で、「普通」という選択肢をいれていません。「モチベーションが普通」がどんな状態をさすのかわからないし、人によって解釈が異なるだろうと思ってやめました。「ふつう」があると選びがちなので、「普通」を選択肢に入れるときはよく検討したいです。

image.png

だいたいこの3つの観点で、勉強の進捗がつかめると思います。振り返りをすると、人によって観点や粒度が異なります。なるべくずれないようにする工夫が必要です。項目ごとに記載枠を作っておくと、粒度がぶれないのでおすすめです。

⑦勉強開始から、合格までの心理的ハードル

資格取得の目標を掲げたものの、その先にはいくつかの困難があります。5つに整理してみました。

①勉強に手を付ける
②勉強を続ける
③受験日を決める(また、理由なくリスケしないこと)
④模擬試験を受けること
⑤実際に試験を受けること

①勉強に手を付ける
最初の難関です。ここでいう「手を付ける」には教材を買うことも含まれます。ここで躓く人は以下のどれかに該当するでしょう。

 1参考書など教材を買っていない
 2参考書など教材を買ったが放置
 3少し眺めて放置

「決意」を「本格的な行動」に移すことは心理的ハードルがあるように思えます。「ノリ」で勉強をはじめてしまうと、「ノッていない」時はどうしても面倒くさいと感じてしまいます。原因は「そもそも具体的な計画が立てられていない」にあると思います。全体の量と1回分の量を決めていない(またはわからない)とこの状態になりやすいです。1回分の量を決めて小さいゴールを設定しておくとよいかもです。

また、教材を一度放置してしまうと、再開するのも労力がいります。さらに、「カフェで席を取り勉強する準備は整ったが、スマホを見ていたら時間がたっていた」というパターンもありますね(経験談)。

②勉強を続ける
「続ける」は難しいです。疲れた日もあるし、予定があって勉強時間を確保することも難しいときもあります。疲れてHPが減っているときの心理的ハードルは大きいです。資格取得の難しさは「毎日そこそこの時間で勉強する」ことにあります。1人だといくらでも言い訳ができてしまいます。「明日頑張ろう」とか。「今日はしんどい」とか。ちょっとができない日ってありますよね、、

疲れた時・できない時があってもよいと思います。しかし、さぼると再開するのが難しくなります。ので、「1問だけ解く、1ページだけ読む」のように最低限の量を決めておくとよいですね。

成果が実感できないと「続ける」のが難しいです。なので、勉強をはじめて、点数伸び始めるころが心理的に一番きつい時期だと思います。続けるとモチベーションは徐々に強くなるように思えます。できないときにどうするかを予め対策として検討しておきたいですね。だって眠いもん。

③受験日を決める
受験日を決めることも、パワーが必要だったりします。(共感できる人もいるはず。)心理的に難しいのは、受かるだけの実力がいつ頃つくかわからないからで、申し込むだけの勇気がなかったりすることが原因です。また、落ちたくないなという気持ちも足を引っ張る理由です。

受験日が決まっていない資格(年に2回などではなく、テストセンターなどで自分で日程を選べる系の資格)は特に選択肢が多い分、なかなか決められないことが多いですね。いっそのこと誰かに決めてもらいたいくらいです。

終わりを決められないのは、勉強スケジュールが上手に立てれていなかったり、勉強方法のノウハウが足りない可能性もあります。「えい!」って予約してしまうことも、時には必要かもしれません。

④模擬試験を受けること
模擬試験を受けることも億劫です。実力がついていたとしても、気持ちがついていない場合もあるのではないでしょうか。そもそも勉強をしていても、正答率が高くないと、結果すらみたくなりません。

⑤実際に試験を受けること(また、理由なくリスケしないこと)
おろそかになっていたことが多く、積み重ねを感じられないから、試験を受けづらいこともあるでしょうか。別の表現をすると、受かる見込みがないと判断したとき、受けづらくなります。受かるイメージがなかったら、試験にいきづらいです。

⑧気持ちの変化

企画運営担当になって、勉強会の運営をやりきって気持ちの変化がありました。一番大きかったのは、受講生の合格を素直に喜べるようになったことです。今ままでは喜べなかったという話ではなく、喜ぶ度合いがあがったという意味です。

「〇さん受かったのか!よかったぁ」と、隠れてガッツポーズしたこともありました。苦労していたところを垣間見ていたからでしょうか。立場的にアンケート回答、問題演習の点数、ヒアリングの結果などを知っていて、苦労していることを知っていました。「業務がかなり忙しいらしい」「勉強時間はかなり取ってるけど、点数が伸び悩んでる」「モチベーションが低空飛行してる、、」などなど順調でない方も多くいました。

勉強会前半は全然勉強できていない人が後半にかけて驚異の追い上げをしました。何人もです。がんばっている様子が聞こえてきます。それが結果になったとき、「よかったぁ~」と思えるようになりました。

⑨「いつでも相談してね」だと、相談されない

例えば、1人のメンターが15人の受講生に一斉に問題解説をします。学校の授業のようなスタイルです。この時に、「質問ありますか?」と投げかけると、質問はあまりでません。また、「困ったことがあったらいつでも相談してね」と投げても、相談してくる人は稀です。

でも、1on1のような機会をつくって話してみると、意外と相談してきます。個別対応を行えば行うほど、本音に近い発言が出てきます。時には本人すら気づいていない問題を発見することもあります。個性が出るのは、「1人」になったときのようです。

ただ、個別対応をすればするほど、メンターの負担にもなります。受講生には時間を取ってあげたいけど、メンターの負担もかからないようにする必要があります。1on1は1人に何回も実施できないので、1on1担当者を変えて2回実施しました。

⑩大事なことは何回も伝える

機会運営担当は勉強会全体のファシリテーターも行います。受講生は基本的にメンターとかかわることが多いので、機会運営が直接話すのは、勉強会の冒頭と終わりだけになります。ここで伝え方に工夫をしてみました。

同じことを毎回伝えることです。「また、同じことをいってる」って思った人も多いかと思います。でも、1回だと伝わらないのです。繰り返しいっていたのは、「アウトプット重視で、ガンガン問題解きましょう」「全員合格を目指しましょう」 の2点です。

スライド5.JPG

⑪企画運営の難しさ

企画運営を担当して、勉強会の難しさは随所に感じました。
難しさの最たる所以は何をしたら、うまくいくかがわからないことです。

受講生には、モチベーションが高い人/低い人、勉強が得意な人/苦手な人、業務が忙しい人/忙しくない人、他の資格も勉強している人/していない人など1人1人事情が異なります。また、勉強会のような集合型よりも、1人でもくもく勉強したほうが性に合っている方もいます。故に、どんなカリキュラムをつくれば、合格できるか不透明です。どんな人にも合う万能なカリキュラムは作れませんし、個別にカリキュラムを振り分ける余裕もありません。

どんな施策をどのタイミングで実施すればよいのか、わからないことに難しさを感じました。最後まで五里霧中でしたが、勉強会期間中は少しでも効果が出るように個別対応も少し行いました。

まず、最初に現状把握から行いました。一方通行の勉強会にならないように受講生からの声を集めるようにしていました。集める手段としては、①勉強会後のアンケート、②振り返り会での質疑応答、③ヒアリング時の応答 です。

アンケートや振り返り会、ヒアリングで、勉強時間・正解率・モチベーション、困っていること を中心に聞きました。順調な人と比べて、どれくらい足りないのかを基準に課題の抽出を行っていました。

問題に対する対策は、順調な人がやっている方法をアドバイスすることです。決めたカリキュラムはほぼそのままで、振り返り会でメンターが個別に助言(順調な人のやり方)をしていました。


勉強時間が足りない → 通勤時間などの隙間時間を活用してみては?
正解率が上がっていない → 問題数を絞って2~3周して、3周目は間違えた問題だけ解くのはどう?

このように対策して、運営を行っていました。
①受講生の声を多面的に吸い取る
②課題を発見する(メンター内で共有する)
③順調な人のやり方を助言

何をすればよいかわからない中で、順調な人のやり方を勝ちパターンとみなして、横展開することでこの難しさに対処していました。何世代か勉強会の運営をやってみて思ったことですが、悩みはほぼ共通しています。私はこれで勉強会の機会運営を卒業しますが、次の代にもノウハウを少し残せられたかなと思います。

受講生の声を吸い取って、興味深いのは、「勉強会後のアンケート」と「振り返り会での質疑応答」でほぼ同じ内容を聞いても結果の傾向が異なることです。振り返り会での質疑応答の方が、アンケートの結果よりも、「勉強順調」と答える傾向でした。振り返り会で報告内容を盛っているのか、アンケート回答時には悲観的に答えているのかわかりませんが、結果の傾向が異なることを発見しました。物事を多面的に捉えることは大事なようです。

ヒアリングのタイミングについて、改善できる部分なので記しておきます。ヒアリングはだいたい3~4か月で2回行いました。勉強しはじめにメンターによるヒアリングと、模擬試験受験後の人事担当によるヒアリングです。前者は勉強し始めのフォローとメンターとの信頼醸成が目的で、後者は模擬試験後の学習計画の再検討・モチベーション確認が目的でした。

今回は、早めに問題を察知できるように、先手を打つ形でタイミングを図りました。ヒアリングは問題を吸い取ることが目的になるので、改善の時間が十分にとれるタイミングです。また、ヒアリング担当者の負担にならないタイミングであることも考慮しました。このタイミングでよかったか、ほかに良い方法がないか検討の余地はあると思います。

おわりに

結果としては、合格者数の目標値に達成しました。
受講生は猛烈にがんばりました。メンターも関わってくれた方々もがんばりました。みんな自分のポジションで、できることをやりました。

今回は、準備や環境をつくることの難しさを感じました。正直、勉強会をはじめるまでの準備ミーティングの15回は悩みまくりでした。応援って、支援って、どうすればいいのか?ってずっと思っていました。自分ではなく、誰かを合格に導くのはとても難しかった。。

他人は変えられないと思っています。 変えられるのは自分の行動だけです。他人がどうふるまうのかはその人しだいです。自分ができるのは、せいぜい促すまでしかできません。機会をつくっても、活用されないかもしれないとも思っていました。

だからこそ、努力をみているだけ、結果を信じるだけの自分にできることがわずかだったように思います。でも、わずかでも、上の代にしてもらっていたことを、下の代に返せていたように思います。

普段の業務とは全く別で、普段考えていないことが目白押しでした。でもこの経験で、少しは、五里霧中で、突き進む勇気がつきました笑。また、こんなに長い文章を書くのは久しぶりでした。

このただの雑記がどれだけの人に届いたのかわかりませんが、何か少しでも響くことがあったらうれしいです。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

60
41
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
60
41

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?