プロジェクトでは、必ず大なり小なりの会議があります。いくつかのプロジェクトを経験して、様々な会議に参加してきました。その結果、自分が会議を運営するときに、こんな運営ができたらスムーズに会議が進行するのかなと勘所をイメージできるようになりました。
方針としては、「カッコイイ会議」ではなく、 「マイナスをなくした会議」 の運営を目指します。もちろん、プラスを更にプラスにする努力・配慮は必要です。しかし、会議のあるべき姿から逸脱し始めることで、プロジェクト運営が停滞し始めます。そこで、「マイナスをなくした会議」を行う上で、どんなポイントに気を付けて会議運営をできるとよいかを整理します。
そして、会議運営の観点からすると、時間効率なども踏まえて会議の準備にかける時間は減らしたいです。また、「言った言わない」のような不毛な議論を避けたり、調整事項が決定できるようなプロジェクトを推し進める会議運営をしたいです。本稿では、地味でちょっと面倒くさくても続けたい会議運営の気を付ける3つのポイントをまとめていきます。
会議の流れ
気を付ける3つのポイントをまとめる前に、運営の視点も入れて会議の流れを整理します。ここでは、開発チームのPLの立場に立って、クライアントとの会議の運営を想定して、整理します。
①会議設計
まず、プロジェクト開始時にプロジェクトの進行方針が開発チームからクライアントに示されます。その進行方針の中で、会議の運用方針を提案します。例として、会議体の運営方針をざっくり以下のように整理してみました。
種類 | 開発定例会 | マネジメント会議 | インフラ関連会議 |
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目的 | 進捗管理・仕様の調整など | QCDなど重要事項の調整・決定 | インフラ関連の調整・決定 |
出席者 | 必要なメンバー | PL以上 | 必要なメンバー |
開催頻度 | 週1 | 必要に応じて | 週1 |
形式 | オンライン | オンライン | オンライン |
※会議はオンラインを基本としますが、対面実施する場合は都度相談
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上記のように、会議の目的や出席者など整理して、これからどんな会議体を行うのかを示します。
オンラインで行う場合は、事前にどのツールを使用するか確認しておきたいですね。会社によってはあるツールが禁止されていたり、特定のツールのみでしか使用できない場合もあるので。また、オンラインツールを使う時は、使用するURLを固定にして使いまわすようにすると運営が楽になります。(オンラインツールのURLを変えると、会議時に使わない方のURLに入ってしまう人が必ず発生します)
そして、実際に会議を行う日程や開始時間など詳細はチケットやチャットツールで別途調整することになることが多いので、忘れないようにしたいです。定例会であれば、曜日と時間を固定にして何週間か先まで予定を押さえておくと、安定した会議運営をしやすくなります。
また、GW、夏季休暇、年末年始休暇など事前に日程がわかっていれば早めに共有して、日程をずらすような対応できると更によいですね。対面で行うのであれば、会議室の予約もしておきます。参加人数を確認して会議室を押さえておきます。
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会議体の整理をした後は、議事録運営についてもクライアントに共有認識を持てるように働きかけます。議事録の目的や議事録確認の期限の認識合わせができるとよいですね。
クライアントに伝えること・議事録連携の流れ
①会議実施後、議事録を弊社で作成します
②タスク管理ツールのチケットで、議事録を貴社に連携
③貴社は議事録の内容を確認し、問題なければチケットをクローズしてください。
※修正が必要であれば、修正内容を弊社にご連絡ください。弊社で該当箇所を修正し、再度確認依頼を行います
②会議の実施前
個別の会議実施前には、キックオフの際に確認した方針に沿って会議で何をするのか細かい計画を立てます。例として、「クライアントとの設計フェーズの開発の定例会」という想定で、アジェンダを作成してみました。
アジェンダ
1.前回の宿題事項の進捗確認
2.進捗報告
3.課題・問題事項の報告相談
4.弊社からの連絡事項
5.クライアント様からの連絡相談
この定例会では、「進捗の報告」と「課題問題の報告相談」を会議の目的に据えて、会議を行う計画をしました。
次に、定例会で使用する資料を作成します。口頭の説明では伝わりづらいこともあるので、必ずテキストをみながら会議進行できるように会議資料を作成します。資料作成は、事前にクライアントに連携して内容を確認できるようにする目的もあります。
会議資料ができたら、クライアントとの会議の前に、PMなどチーム内の出席メンバーと会議の流れや報告事項/相談事項をすり合わせを簡単に行えると最高です。自チーム内でのすり合わせは省略されることも多いとは思いますが。会議内容に関していうと、進捗報告であればオンスケなのか遅延なのか、そして、遅延しているのであればリカバリープランを報告するまでがワンセットです。
また、課題・問題事項の報告相談であれば、作業中に発生した仕様の調整やヒアリングなどを行います。相談内容によっては、追加で、いつもの担当とは別の人をクライアントに呼んでもらい会議に出席してもらう必要があるかもしれません。
そして、クライアントとの会議の前には、開発チーム内での会議中の役割も確認します。ファシリテーターはPM(またはPL)が行うことがほとんどだとだと思いますが、議事録を誰が作成するかを決めておきます。さらに議事録作成から内部レビュー、クライアントへの連携までの流れを認識合わせできているとよいです。
報告事項/相談事項のすり合わせを終えたら、クライアントにアジェンダと会議で作成する資料を展開します。理想をいえば、クライアントが資料を事前に読めるだけの時間を確保したいです。事前共有の目安としては、会議を開始する24時間前くらい前までででしょうか。
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オンライン会議のビデオツールを初めて使うのであれば、事前にそのビデオツールで会話ができるか動作確認をしておきたいです。インストールが事前に必要であったり、音声が聞こえなかったり、声が届かなかったりと、ツールによるドタバタ劇は事前に動作確認をしておけば、たいてい防ぐことができます。地味ですが、案外大事です。そして、背景画像の設定が正しく動作しているかどうかもチェックポイントです。
また、実際にオンライン会議に参加したら、「お世話になっております。よろしくお願いいたします。」と一言入れます。単に挨拶をするだけでなく、こちらの声が聞こえていることもすかさず確認します。会議で話すパートがあってもなくても、自分が会議に参加できる状態なのか確認しておきたいですね。
③会議中
会議当日、開始時間になったらアジェンダに沿って、会議を進行させていきます。開始のタイミングで、オンライン会議であれば録画は開始できているか、カメラがオンになっているかを確認します。チームの文化によるかもしれませんが、クライアントとの会議ではなるべくカメラオンにして、表情や仕草がわかるようにしたいです。非言語の情報量は馬鹿にできないと思うので。
さらに、ツールにもよりますが、オンラインツール上表示する名前に会社名を入れて所属がわかるようにしておきます。例えば、「ABC社田中」のような形で名前を表示します。複数の会社で会議を行う時、名前に会社名があると便利ですし、会議参加リクエストの承認をしやすくなります。
そして、作成した資料を画面共有します。このとき「資料が画面共有されて見えてますか?」と一言確認します。見せる側と見られる側で差異がないか、確認します。あとは会議資料に沿って、伝えていきます。事前にすり合わせをした通りに進めると安心です。決定事項や注意事項などは資料に直接書き込んでおくと、あとから見返したときに便利です。相手もメモをみるので、認識合わせにもなります。
④会議後
会議の後にはまず、議事録を作成し、開発チーム内で内部レビューを行います。議事録は少なくとも「決定事項」「宿題事項」を記載するようにします。議論のやり取りを議事録に記載するときは、議事録が発言録にならないように、あくまでも決定事項の補足として記載します。この議論のやり取りをどこまで議事録として残すのかはチームの文化によるところが多いかと思います。宿題事項は担当者や期限も明記します。
また、内容を覚えているうちに、クライアントに確認してほしいので、会議の当日か、翌営業日あたりを目安にして連携します。その後は、議事録の運用方針に沿って進めていきます。
さらに、議事録はフォーマットを作成しておいて、毎回フォーマットに沿って同じ形式で書きます。つまり、毎回書き方を変えないで、同じような記載をします。どこに何が書いてるのか、構造的にわかるようにするためです。
そして、会議中に展開していない資料を使用した場合は該当資料を相手に連携します。会議中に吹き出しをつけたり、アップデートした資料も同様に相手に連携します。また、会議を重ねると、あとから特定の議事録を探すのが大変になるので、フォルダ構成や議事録のタイトルはわかりやすいように整えておきたいです。チケットで連携する場合であれば、チケットの分類/カテゴリーを「議事録」にして、他のチケットと混ざらないようにするのも手です。
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きっちり宿題事項を管理するのであれば、宿題事項が発生したたびにチケットをきります。担当者や期限を記入して、タスクを忘れないように管理します。議事録にもチケットのURLを載せておくと、気が利いてよいですね。
会議運営で気を付けたい3つのこと
冒頭で示したように、「カッコイイ会議」ではなく、「マイナスをなくした会議」の運営を目指します。「マイナスをなくした会議」とは、 「必要なことを省略したり割愛せず、ミスの少ない安定した会議」 とします。
チームとして、ちぐはぐな回答をしてしまったり、決まったことに認識齟齬が発生してしまったり、運営上のミスだけでなく、会議起点のミスもなるべく少なくすることを目指します。会議というコミュニケーションの場のミスを少なくすることで、手戻りの対応をなくしたり、各々の作業に集中でき、プロジェクトを安定させます。
そのために、特に気を付けておきたいポイントを3つあげてみました。3つのポイントを紹介します。
①味方を味方にすること
1つ目の気をつけたいポイントは 「味方を味方にすること」 です。ちょっと変な言葉の使い方をしました。まず意味から解説します。
「味方を味方にすること」とは、同じチームのメンバー全員に会議中に出るだろう見解・意見を共有し、すり合わせて、共通理解をつくっておくことです。つまり、自チームで統一した見解をつくることです。この統一した見解を作らないことによるデメリットは2つあります。
デメリットの1つ目は、会議中にこちらからクライアントに伝えた見解を後から、自チームの別メンバーが調整なしに、取り下げ・変更してしまうことが発生しうることです。このような後出しじゃんけんを自チームメンバーからされると、想定したアジェンダに沿わない進行になってしまうかもしれません。見解が異なるなら、事前に調整した方がスムーズです。
デメリットの2つ目は、クライアントからみると意見が二転三転しているように聞こえるので、話が混乱してしまうことです。同じチームから複数の異なる見解を提示してしまった結果、「事前に社内で話をまとめておいてよ」とクライアントに言われてもぐうの音も出ません。さらに、事前準備が不十分とみられて、クライアントからの信用を落としてしまうことにもなりかねません。スムーズに会議を進めるなら、チームで統一した見解を持てている状態が望ましいです。
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重要な会議であったり、プロジェクトが立ち上がって間もない頃の会議であれば、自チーム内で事前にクライアント会議の内容をしっかりすり合わせをしてから望みたいです。不安があるのであれば、資料を説明するなど事前に会議の練習することも、時には必要だと思います。
特に、プロジェクト現場への出入りは少ないがクライアントとの会議には出席するような方への事前の情報共有は怠らないようにしたいです。なんにせよ、チーム内で統一した見解をつくれていることで安定した会議運営ができるのかなと思います。
②前回の宿題事項の進捗確認をすること
会議運営で気を付けたいことの2つ目は、 「前回の宿題事項の進捗確認をすること」 です。会議中のやりとりで「持ち帰って確認させてください。」のような発言が聞かれます。が、タスク解消への温度差があったり、時間感覚にずれがあって、思ったようなスピード感を出せないことが多々あります。
その対策として、宿題事項などタスクは担当者だけにまかせっきりにするのではなく、会議の中でタスクの進捗状況を確認した方がよいです。チケットでタスクを催促するより、会議中に面と向かって言った方が伝わります。チケットの催促をスルーされても、面と向かってはスルーされません。何かしらの回答を得られます。積極的に促す方が効果的です。
きっと対応してくれるだろうと思っていると、タスクが自然消滅してしまうこともあるので、チェックするのが吉です。自チームの宿題事項であれば、毎回しっかり対応して、会議中の宿題事項進捗確認で「対応済です」とアピールすることもよいことですね。
③議事録を作成し内容を確認してもらうこと
会議運営で特に大事なことが、 議事録作成 です。ただ議事録を作成するのではなく、クライアントに連携して内容に問題ないとリアクションが返ってくるまでがミッションです。
議事録作成は主に新人が担当になることが多いですが、議事録を作って内部レビュー・修正をしてクライアントに連携するまではある程度できます。ただ難しいのは、議事録をクライアントに連携後「内容に問題ない」とリアクションがなかなか返ってこないことです。
たしかに、議事録の確認はかなり地味な作業ですし、いちいち内容を確認するような余裕もなく、優先順位は低いのかもしれません。しかし、決定事項など会話をした事柄に齟齬がないということを確認する大事なプロセスです。それに、後々問題を大きくしないために必要なことです。最初は確認のスピードが速いのですが、時間が経つといつのまにか「溜まっている」ケースを見ます。
議事録作成について、会議運営の視点からすると、議事録作成をするスピード感も大事にしたいです。議事録の内容をチェックできるのは、会議から時間が経っておらず記憶が残っている間だけです。記憶が残ってるうちにチェックしてもらうべく、よいタイミングで議事録のチェックを相手に催促します。議事録チェックができていなかったら、「②会議の実施前」で示したアジェンダでいう「前回の宿題事項の進捗確認」のときに、議事録確認の優しく催促するのかよいかもしれないですね。
なお、議事録は当日中もしくは翌営業日くらいまでにクライアントに提出したいです。なので、自チームの議事録作成担当の方には優先順位を上げてもらって作業をお願いするとよいでしょう。
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議事録に関して体感ですが、いわゆる「炎上」しているプロジェクトでは議事録が作成されていないことが多いようにみえます。議事録を作成することまで手が回らないということでしょうか。
ただ、問題を起こさないように、問題が起きても影響を小さくするように議事録で共通理解をつくるプロセスは必要のように思います。決定事項と宿題事項を記載するだけでもよいので、証跡を残すようにするとよいかと思います。後から見返せる仕組みは後々偉大な力を持ちます。
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別角度のトピックですが、電話や立ち話など記録に残らない会話をしているときに、プロジェクト関わる重要な情報が発生した場合、チケットや議事録など文章に残して、相手に認識齟齬がないか確認することも必要です。このような微妙な会話こそ、言った言わない問題が発生します。
電話など個別の会話で言った言わない問題が発生しても、他の人は電話に介在していないので、助けることもできません。結果、声が大きい方が勝ってしまいます。ので、自衛する意味でも、会話した内容な文字に残して後から見直せるようにしましょう。また、記憶に頼らないという意味合い的にも大事です。
おわりに
チームはリーダーで決まります。決まるのは、成功の確度や品質を指します。そして、リーダーの手腕が発揮されるワンシーンは会議です。スムーズに会議を進行できるか、伝えたいことを伝えられているか、論理だてて必要なことを質問できているかなどリーダーの総合力が試されます。
必要なことをコツコツ続けていけることがあとからチームを救うことになると思うので、本稿では会議運営の視点で「マイナスをなくした会議」を目指すポイントを整理しました。
忙しいときほど、地味なタスクは後回しになったり、省略したり、直前に簡略化して対応したりしがちです。会議運営で必要なタスクの抜け漏れがあると後に響きます。だからこそ、効率的にコツコツ続けるのがよい会議運営かと思います。本稿は当たり前のことを書いただけなのかもしれません。でも、もし誰かの役に立てたらうれしいです。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。