本記事は下記の続きです。
Microsoftとのパートナーシップ延長
2023年1月、Microsoft社は2019、2021年の投資に続き、数年にわたって数十億ドル規模の投資を通じて OpenAIと長期パートナーシップを結ぶことを発表した1。OpenAIは全てのモデルの学習をAzureで行っており、引き続きクラウドプロバイダーとしてAzureを利用していくことが実質確定したこととなる2。
また、2023年2月には検索エンジンのBingへChatGPT機能を連携させることを発表するなど34、MicrosoftのサービスのAI機能強化を積極的に行っている。
ChatGPT plus, ChatGPT Enterprise, GPTs
ChatGPTのビジネス規模を拡大するため、2023年2月にChatGPTのより早い応答速度や新機能への優先アクセスが可能なサブスクリプションプラン($20/month)であるChatGPT Plusがリリースされ5、同年8月にエンタープライズグレードのセキュリティとプライバシーが担保された最もパワフルなバージョンであるChatGPT Enterpriseも発表された6。
さらに、より多岐のタスクに対応するAI開発需要に対してリーチするため、5月にはChatGPTに追加機能を提供するChatGPT Plugins7、11月に特定の目的のためのカスタムで作成したChatGPTを他の人と共有できるGPTsを発表した8。2024年春の時点で、それぞれ最も活発だったタイミングで、Pluginsは1000強、GPTsは数十万のリリースと、GPTsの方が好まれていることが明らかだったこともあり9、2024年の4月にChatGPT Pluginsは提供終了となっている10。
GPT-4
2023年3月、OpenAIは大幅に改良されたGPT-4.0を発表した。GPT-4.0は、テキストの理解力、長文の整合性、コード生成の精度、そして創造的な文章の作成能力が向上しており、特にテキスト+画像を入力とし、テキストを出力する「マルチモーダル対応」が大きな進化点となった11。内部構造等についてはOpenAIから明らかにされていないが、MoE(Mixture of Experts)と呼ばれる構造を利用しているなどの推測がされている1213(詳細を明らかにしないことについて、コミュニティ内で批判があったが方向性については後述)。
GPT-4は継続的に改善され、2023年11月にはGPT-4 Turboがリリースされている14。
DALL-E 3
2023年9月、画像生成AIであるDALL-E 2の後継であるDALL-E 3がリリースされた15。ChatGPTとの統合により、ユーザーが簡単な指示をプロンプトとして入力するだけで、ChatGPTが適切な詳細プロンプトを作成し、DALL-E 3がそれを元に高品質な画像を生成する仕組みになっている16。
技術的な詳細は公表されていないが、Stable Diffusionのように潜在空間から画像を出力できる可能性や、Deepfloyd IFのようなテキストエンコーダーの利用が考察されている17。
DeepFloyd IF is a crazy good text-to-image model - and open-source
Codexのサポート問題
2022年11月、Microsoft Copilotとそれを支えるCodexにより、著作権侵害と不当利益があるとして、Microsoft社、Github社、OpenAI社は集団訴訟を起こされている (原告側の主張は棄却されているが、2024年現在で訴訟は継続中)18。
このような動きを受けてか、OpenAIはCodexユーザーに対して「Codexのサポートを3月23日に終了する」と通知するメールを、その3日前に送信してGPT-3.5 Turboに移行することを推奨したが1920、Codexが約100件もの学術論文で使用されていたなどのことから、Codexへのアクセスを引き続きサポートするプログラムを開始した。しかし、結局は公にアクセスすることは困難で、Codexの利用は非推奨となっている。
その他、マネジメント関連の動向
OpenAIの主任科学者兼共同創設者(2023年3月時点)のIlya Sutskever氏が、AIの能力が向上したことによる公開のリスクに懸念を示し、クローズドなアプローチに切り替える表明を行った。倫理や将来のAI開発の方向性などさまざまな観点から意見が飛び交い、物議を醸す決定となる21。
Sutskever replied simply, “We were wrong. Flat out, we were wrong. If you believe, as we do, that at some point, AI — AGI — is going to be extremely, unbelievably potent, then it just does not make sense to open-source. It is a bad idea... I fully expect that in a few years it’s going to be completely obvious to everyone that open-sourcing AI is just not wise.”21
Google翻訳
OpenAI が研究の共有に対するアプローチを変えた理由を尋ねられたとき、Sutskever 氏は 「私たちは間違っていました。はっきり言って間違っていました。私たちと同じように、AI (AGI) がいつか信じられないほど強力になると信じているなら、オープンソース化しても意味がありません。それは悪い考えです...数年後には、AI をオープンソース化するのは賢明ではないことが誰の目にも明らかになると確信しています。」 と答えました。
そして11月、共同創設者の一人であるCEOのSam Altman氏が、コミュニケーションに率直さがないことなどを理由に、取締役会により突然解任されるという事件が発生した。しかし、社員の大多数がAltman氏とともにMicrosoftへ入社する署名を集めるなど復帰を支持した結果、5日後に復職し、Altman氏に反対していた取締役がほとんど解任されるなど取締役会の再編が行われた。この騒動の真の原因は現在でも謎のままであり、Altman氏の評判も二極化されたとされている2223。
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Microsoft Confirms Its $10 Billion Investment Into ChatGPT, Changing How Microsoft Competes With Google, Apple And Other Tech Giants ↩
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ChatGPT Plugins are being replaced by GPTs. Here's why - and what it means for you ↩
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[No.116]OpenAIは性能の壁に突き当たる、GPT-4の規模を拡大しても性能が伸びない、新たなアーキテクチャを開発中、GPT-4は小型モデルを組み合わせた複合型AIか ↩
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OpenAI co-founder on company’s past approach to openly sharing research: ‘We were wrong’ ↩ ↩2
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How OpenAI's five days of chaos sparked fresh debate about the future of AI ↩