Gitはバージョン管理システム(VCS)、GitHubやGitLabはその機能を基にしたリポジトリホスティングサービスです。それぞれの役割や違いを理解することで、適切なプラットフォームを選択できるようになります。この記事では、Git、GitHub、GitLabの違いを解説し、各プラットフォームの特性やユースケース、選択基準を紹介します。
1. Gitとは?
1-1. Gitの概要
Git は、分散型バージョン管理システム(DVCS)です。主にソフトウェア開発において、ソースコードの変更履歴を管理し、複数の開発者が同時に作業できるようにします。以下はGitの主要な機能です。
- バージョン管理:ファイルの変更履歴を保存し、以前のバージョンに戻せる。
- 分散型リポジトリ:リモートリポジトリとローカルリポジトリの両方で作業できる。
- チーム開発支援:複数人の作業を統合し、変更を効率的に反映できる。
1-2. Gitのメリット
- オフライン作業が可能:ローカルリポジトリを使うことで、インターネット接続がなくても作業できる。
- 効率的な分岐と統合:ブランチを自由に作成し、機能開発やバグ修正を独立して進められる。
- 軽量で高速:ファイルの差分のみを追跡するため、動作が軽くスピーディ。
ただし、Git自体には「リモートでホスティングする」機能は含まれていません。そのため、GitHubやGitLabといったホスティングサービスを併用することで、より効率的にプロジェクト管理ができるようになります。
2. GitHubとは?
2-1. GitHubの特徴
GitHubは、Gitを基盤とした世界で最も有名なリモートリポジトリホスティングサービスです。2008年に誕生し、2018年にMicrosoftが買収したことでも話題になりました。GitHubは、次のような特徴を持っています。
- ソーシャルコーディングプラットフォーム:プロジェクトに対して「スター」や「フォーク」など、ソーシャル要素を組み込んでいるため、OSS(オープンソースソフトウェア)の開発に広く使われている。
- 豊富なサードパーティ統合:CI/CD(継続的インテグレーションとデプロイメント)用のツールやテストツール、IDEとの統合が充実している。
- GitHub Actionsによる自動化:GitHub独自のCI/CDツールで、プルリクエストやマージなどのイベントに応じた自動処理を構築できる。
2-2. GitHubの主なユースケース
- オープンソースプロジェクトの管理:GitHubの豊富なコミュニティ機能(Issue管理、ディスカッション機能など)を活用して、多くの開発者と共同開発を行う。
- ポートフォリオ作成:個人の技術力をアピールする場として、自身のプロジェクトを公開し、コードを見てもらうことができる。
- 企業でのコードレビュー:プルリクエストを使って、チームメンバーと変更点を確認し合い、コードレビューのプロセスを管理。
3. GitLabとは?
3-1. GitLabの特徴
GitLabは、Gitを使ったリモートリポジトリ管理に加え、DevOps機能(開発からデプロイまでの全ての工程)を一貫して管理できるプラットフォームです。GitHubと異なる点は、「オンプレミス版」と「ホスティング版」の両方があることです。
- DevOps統合プラットフォーム:CI/CDパイプライン、課題管理、デプロイ管理までを一つのツールで完結できる。
- セルフホスティングが可能:自社サーバーにインストールし、プライベートリポジトリを社内管理できるため、セキュリティやプライバシーを重要視する企業に適している。
- 権限管理が強力:詳細な権限設定が可能で、大規模プロジェクトにおいて、チームやユーザーごとのアクセス権限を細かく管理できる。
3-2. GitLabの主なユースケース
- 企業や組織のプライベートリポジトリ:社内にGitLabを設置することで、プロジェクトを外部に公開せずに安全に管理できる。
- DevOpsの効率化:CI/CDパイプラインの設定や、自動デプロイメントのフローをGitLab上で一元管理。
- 大規模プロジェクト管理:詳細な権限設定や複雑なブランチ戦略が求められるプロジェクトに最適。
4. GitHubとGitLabの違い
項目 | GitHub | GitLab |
---|---|---|
主要な目的 | オープンソース開発、コードレビュー、個人プロジェクト | 企業向け、プライベートプロジェクト、DevOps統合管理 |
ホスティング形式 | クラウドホスティング | クラウド&オンプレミスホスティング |
CI/CDツール | GitHub Actions | GitLab CI/CD(ビルトイン) |
プライバシーとセキュリティ | プライベートリポジトリは有料プラン | 強力な権限管理、セルフホスティング対応 |
ユーザーコミュニティ | 大規模で活発 | 企業や組織ユーザー向け |
価格モデル | 基本無料、一部機能は有料 | 無料プランあり、エンタープライズ向けは有料プラン |
4-1. GitHubが適している場合
- オープンソース開発をしたい
- 個人のポートフォリオを作成したい
- コードレビューを中心としたチーム開発を行いたい
- GitHub Actionsを使ってCI/CDパイプラインを構築したい
4-2. GitLabが適している場合
- 社内サーバーでリポジトリを管理したい
- 企業向けの詳細な権限管理が必要
- CI/CDパイプラインを高度にカスタマイズしたい
- 全社的なDevOps管理を一元化したい
5. GitHubとGitLab、どちらを選ぶべきか?
どちらのプラットフォームも優れていますが、選択する際の基準は次の通りです。
オープンソース開発や個人開発が中心ならGitHub
- ソーシャル機能やプルリクエストによるオープンなレビュー文化が整っているため、OSS開発に最適。
- 自分のプロジェクトを公開し、他の開発者とコラボレーションしたい場合に向いている。
企業内のプライベートプロジェクトやCI/CDの高度な管理が必要ならGitLab
- セキュリティやプライバシーに配慮したい場合は、オンプレミス版GitLabが選ばれやすい。
- DevOpsプロセス全体を統合管理したい企業にとっては、GitLabの機能が強力。
6. まとめ
Git自体はバージョン管理のシステムですが、それをどう活用するかはプラットフォームによって異なります。GitHubはソーシャルなコーディングの場として、個人開発やオープンソースに適しており、GitLabは企業向けに開発プロセス全体を一元管理する機能を提供しています。
どちらを選ぶか迷った際は、目的やチームのニーズを考慮して検討してみてください。