「ラクス Advent Calendar 2021」
12/20(月)担当の某インフラエンジニアです。今回もインフラ寄りな記事を書いていこうと思います。
※本記事はあくまで個人的見解で、所属する組織の見解ではないのでご留意ください。
はじめに
本格的に寒くなってきましたね。もう年末です。びっくりですね。この前年が明けたと思ったらもう年が明けようとしています(?)
皆様、正月休みのご予定はいかがでしょうか?旅行に出かける、家族とゆっくり過ごす、帰省して親孝行する、素晴らしいと思います。はたまた積読や積ゲームを時間を気にすることなく消化していく楽しみもあるでしょう。
ゲームといえば今年はPS5が品薄で抽選だの転売だの話題でした。皆様は手に入りましたでしょうか?
発売(2020年11月12日)してすぐに品薄状態になりましたが、いつまでたっても品薄、いまだに品薄です。1年以上も品薄状態が続いています。何故でしょうか?もちろんメーカーも1年以上も欲しい人に行き渡らない状況が続くことを予想していたわけではないでしょう。
要因は転売や買い占めなどたくさんあると思いますが、実は半導体の不足が非常に大きく影響しているといわれています。そして実は半導体不足はゲームだけではなく色々な業界に波及しており、IT業界、インフラ界隈も大きなダメージを受けています。今回はこの半導体の不足について色々書いていこうと思います。
そもそも半導体って何?
半導体が不足して大変だ!みんな大丈夫か!これから先も続くらしいぞ!と最近は各種メディアやIT関連記事などそこらじゅうで騒がれていますが、まず、半導体ってそもそも何よ?と。正直ここからよくわかっていない人が多いと思われる。私も記事を書き始めたはいいもののよくわかっていなかったw
Wikipediaによると
半導体(はんどうたい、英: semiconductor)とは、電気伝導性の良い金属などの導体(良導体)と電気抵抗率の大きい絶縁体(不導体)の中間的な抵抗率をもつ物質を言う。半導体は、不純物の導入や熱や光、磁場、電圧、電流、放射線などの影響で、その導電性が顕著に変わる性質を持つ。この性質を利用して、トランジスタなどの半導体素子に利用されている.
お、、おう。。そっか。
解ったような解らないような。
簡単に言うと「ある条件で電気を通したり通さなかったりする物質」らしいです。熱とか光とか複数の素材を混ぜたりとか、なんかそういう条件を変えていくことで性質が変わるようです。シリコンやゲルマニウムなんかがそういう物質だそうです。狭義的にはこういう物質のこと、広義的にはそれらの材料を使って組み上げた電子部品そのものも半導体、と呼ぶらしいです。
で、これらを応用したものにダイオードとかトランジスタとかがあり、例えば一方向にしか電気が流れなかったり電気信号を大きくしたり、みたいなことが出来るようなものが開発されていき、それがどんどん小型化/集積化されていって、集積回路(ICやらLSI)に進化していきました。
先ほど記述したように、シリコンなどの素材も半導体ですが、それらから開発されたチップなども広義的には半導体、と言うことが多く、メディアとかで取り上げられる半導体はシリコンがどうのこうのって話をしているわけではなく、恐らくこの辺の集積回路あたりから先の概念として半導体という言葉を使っているのかと思われます。
そんでもって集積回路が、例えばサーバならCPUやメモリに使われていたり、携帯電話も然り、自動車やゲーム機などにも使われているわけです。
集積回路って具体的にどんな物体?っていうと以下のような形のものが有名というか、皆さん見たことあると思います。
例えるならムカデ(虫嫌いの方、すみません)のような黒い物体で緑色の基盤にくっついているのを見たことあるかと思います。ちょっと写真では分かりにくいかと思いますが、むちゃくちゃ小さいものもあります。↓の画像の真ん中から右上よりにネジがありますが、普通のネジのサイズというか1cmくらいのものです。その右下にある集積回路も同じくらいのサイズなんで1cmとかそれくらいですかね。
実は現代の技術で言うと、シリコンウェハーというシリコンのプレートみたいな素材の表面を削ったり混ぜたり、とにかく色んな加工をしてシリコンウェハー上にトランジスタを構築して集積回路を作っていくような作成プロセスになっており、その設計回路の精密さたるや、単位で言うとナノメートルの世界で設計されています。精密さを表すのによくプロセスルールという言葉が使われていますが、語弊はあるがザックリいうと設計図を描く線の幅のようなものを表していると理解すれば良さげ。CPUなんかではプロセスルールは14ナノメートルとか7ナノメートルに至っているという話を最近はよく耳にします。
計算しやすいように仮に10ナノメートルだとすると、人間の髪の毛の直径が90ミクロンくらいなので、
90ミクロン(マイクロメートル)
=0.09ミリメートル
=0.009センチメートル
=90000ナノメートル
そのレベルの細かさです。もう目に見えるとかという次元じゃなくてウイルスかな?ってサイズです。
なんでこんな極小化/集積化をしているのかというと、例えば単純にトランジスタ同士の物理的な距離が離れているほど無駄なエネルギーが必要になるため密集している方が電気の効率が良かったり、当然距離が短い方が移動時間も早い、数が多いほどより複雑な処理もできる訳です。天才や偉人たちが戦い続けた結果、ウイルスレベルに小さいところまで行きついたということですね。人間ってすげーわ。
ムーアの法則
ちょっと話題がそれますので興味がなければ次の項まで読み飛ばしていただいて構いません。半導体の話をするにあたって大概一緒に出てくる話題、ムーアの法則について少し触れます。
「ムーアの法則」とはインテルの共同創業者の一人ゴードン・ムーア氏が半導体の一つの未来を予測したもので、内容は「1つのチップに搭載できるトランジスタの数はほぼ2年ごとに倍増する」というもの。言い換えると(語弊はあるが)性能が2年ごとに倍増する、に近い話。発表した時期は1965年、50年以上も前にさかのぼるが、こんな古い未来予測がなぜ今も半導体の話とセットで語られるのかというと、ほぼほぼ半導体の進化の歴史がこの発言通りに進んできているからです。
偶然なのか必然なのか、ムーア氏が未来預言者だったのか、神秘的に語っても面白いですが、別の側面から言うとこのムーアの法則が業界の呪縛となり、各社ともライバルに競争で勝つために達成する努力目標値のようなものとなり、各社が超絶頑張りムーアの法則を維持し続けてきた、という表現の方が正しいようです。
当然、こんな法則無理でしょ、という形で長い間「ムーアの法則はオワコン」「すまん、まだムーアの法則信じてるやつおる?」「今年でムーアの法則はサ終するわ」みたいな話も毎年のように話題にはなっていますが、最近までずっと実現され続けてきました。
ただ、最近は確かに進化具合は鈍化し始め、現代ではムーアの法則の終末論を唱える人も多いようです。ただし、技術革新はまだまだ終わらない。一部の未来科学者の間ではムーアの法則から「収穫加速の法則」に置き換わるという説もあったりしてまだまだ夢は広がりをみせています。
収穫加速の法則というのは簡単に言うと、「技術革新によって新たな技術が生まれ、それによって次世代の技術革新をもたらすまでの時間が短くなり、それを繰り返すことでどんどん技術革新は早くなっていく」ということ。これを唱えたのはシンギュラリティ(技術的特異点)で有名なレイ・カーツワイル氏で、夢があっていい話だなぁと凄く思います。早く肉を捨てて機械人間になりたい派の私としてはこういう話はわくわくしちゃいますね。
半導体不足でどんな影響があるのか?
さて、話題が逸れまくってきたので戻します。
半導体というものが超ザックリどんなものなのかはイメージできたかと思います。では、半導体の何が不足しているのか?に触れる前に半導体が不足するとどんな影響が出るのか見ていきましょう。
冒頭でも述べたように、携帯電話、自動車、サーバ、ゲーム機、その他現代のほとんどの電子機器には半導体は搭載されており、今の生活レベルを維持するには絶対的に不可欠な存在です。もちろん販売する側も半導体が不足すると非常にビジネス的な影響が出ます。
これから車を買おうなんて考えている人は途方もない納期を聞かされて驚くかもしれません。なら中古車でいいかと思っても、当然みんな同じことを思うわけで、中古車の高騰にもつながっていきます。販売元は当然わざと納期遅らせてるわけじゃないです。
ゲーム業界も然り、PS5は2022年になれば品薄状態から解放されるのか?というと、巷の予測ではまだ1年以上かかるかもしれない、という見方が多いようです。ソフトメーカー各社も頑張っても売れ行きがソフトの持っているポテンシャルほど伸びきらないとなると、据え置きゲーム業界にとっては非常に痛手かと思います。
IT業界ではどうでしょうか?当然ながら、サーバの売上や納期に超絶に影響しています。
開発の皆さんはサーバが必要ならこのクラウドの時代に物理サーバを買うという選択肢はとらないと思うのでイメージがわかないと思いますが、実は現在ほとんどのメーカーでサーバやスイッチの納期が大きく遅延しています。
詳細はもちろん、顧客とメーカーのビジネス的距離感でも違うでしょうし、メーカーによっても期間に差が出るでしょうし、国によっても違うかもしれませんし、SIとメーカーの関係性などは深くは分かりませんので、一概には言えませんが、例えば通常納期1か月みたいなモノが今は数か月無理、みたいな話はザラに聞くようになりました。当然ながらビッグプロジェクトをこれから動かそうものなら、この辺のハードの調達の部分で非常に大きなリスクを抱えることになります。
ではこの状況が改善するにはどれくらいかかるのか?それはもちろん私にも分かりませんが、色んな記事を見た感じだと2022年でも厳しく2023年まで不足が続くのではないか?という記事が多いように見受けられました。それはなぜか?
最後に何が原因で不足状態になっているのか?についてみていきます。
半導体不足って結局何が原因なの?
では、何が原因で半導体不足に陥っているのか?それはいつ足りる状態になるのか?
色んな説が飛び交っていて真実は私もわかっていませんが、ググってみるとまず面白いサジェストが目に入ります。
「半導体不足 原因 味の素」
え?あの料理に使う味の素よね?なんで半導体と関係あるの?と思いますよね。どうやら半導体の絶縁材のフィルムのようなものにABF(味の素ビルドアップフィルム)というのが使われており、パソコン市場では非常に高いシェアを誇っているということらしい。調味料の研究で当然多様な科学的ノウハウがあるでしょうから、こういったフィルムの開発なども手掛けているのはよくよく考えれば不思議ではない気はしますが、にしても半導体と調味料って響きは意外性がありますね。
まあ、色んな記事を見ましたがもちろんのこと、味の素が原因ですべての半導体不足が引き起こされているわけではないです。多分響きが面白すぎて話題が独り歩きしたものと思われます。こういう社会への影響力もあるんだと知名度アップには貢献されますが、あまり不名誉なことはうかつに言うもんじゃないですね。
では本当の理由は何なのか?というと、2つの要因が見えてきました。
1.単純に供給が需要に追い付いていない
2.米中の摩擦
こういった原因があるようです。コロナの影響は?と思うかもしれませんが、もちろんあります。ただ、2019年~2020年頭頃、5Gのニーズなどもありそもそも需要に追い付いていない状態が発生していました。そこにコロナのパンデミックが追い打ちをかけ、工場側は閉鎖を余儀なくされる一方、テレワークなどの拡大でPCや家電なども需要が増えたことで、注文は大量に積まれていくが供給できないという状況に追い込まれていきました。
米中の話については、中国の半導体関連の企業が米国の制裁をうけた結果、米国が逆に半導体の供給を受けられなかったり、中国が半導体のやり取りを制限されたため備蓄し始めたり、あとは米国が技術流出を懸念して中国の工場を使わせない?などの話もあり、単純に需要予測が間違ったという話以上に複雑なナニカが関係していそうです。
では、どうやったら解決していくのか?というと恐らく時を待つしかないです。
楽観的に言うと、この状況がいつまでも放置されるはずはないので、時間が経過すれば需要と供給はまたバランスを保ち始める。
もっと戦略的に言うと、各種大手メーカーや国のレベルで提携を行い半導体のサプライチェーンの混乱を安定化する必要がある。つまり、私たちに今できること、、は無い。と思う。
逆に言うと、そういう状況であることを念頭に置いた上でのプロジェクト、開発、運用、などが求められてると言い換えることもできる。ハードの納期が超絶遅延する前提に立ち、そのリスクをどうとらえるか?まあ今更な話ですが、こういう所は2022年も継続して念頭に置いておかなくてはいけないでしょう。
さいごに
半導体不足でハードが手に入らない、深刻な問題だ、、そう思った方もいらっしゃるでしょうが、逆にこう思った方もいるかもしれない。
「AWSを使えばいいじゃん」ってね。
(毎年AWSオチ・・)