もしも、業務アプリケーションの開発に従事するエンジニアがネットワーク構築の業務を始めた場合、どうなるか書いてみます。
「もしも」のくだりで書いてますが実録です。ちなみに、もしドラもドラッカーも読んだことは有りません。
前提条件
##アプリケーションエンジニア(以下AE)の定義
業務用アプリケーションの開発を主な作業とする。
お金の話(見積りや決済、納品や検収)については立ち位置によって異なる為、除外します。
※社内SEと独立系ベンダーSEでは、お金の管理が異なる等、比較しても参考ならない為
保守の話も同様の理由で除外します。
AEが業務遂行として行う一連の作業内容
- 要件定義
- 外部設計
- 詳細設計
- 実装/単体試験
- 結合試験
- 総合試験
- リリース(本番稼動)
ネットワークエンジニア(以下NE)の定義
ネットワークケーブル(光/メタル)、ネットワーク機器(L3/L2スイッチ、ファイアフォール、DHCP、無線AP)の物理設計と論理設計、利用者がネットワークを使う状態にするためのconfig投入などを主な作業内容とする。
工事を伴うケーブルの敷設、電源の配線についてはエンジニアの範疇を外れると考えます。
※工事は工事業者に発注するスタンスです。
お金の話と保守の話は、アプリケーションエンジニアの定義の時と同様に除外します。
NEが業務遂行として一連の作業内容
- 要件定義
- 物理設計
- 論理設計
- 物理的なネットワーク構築と試験 ※ここは外部発注
- 論理的なネットワーク構築と試験
- 引き渡し
本題のAEがNEになった場合の知識の互換性について
注:ほとんど主観で書きます
- 目的の達成方法・・・互換性(小)
目的の達成方法については全く異なる手段を使います。
AEはシステム化のスコープを定義し、開発手法やサービスを選定して実現可能性を示しますが、NEはネットワークを利用する為の手段(主に物理的な手段)の提示になります。
例えば、有線LANを引いてケーブルを出す、無線のアクセスポイントを設置する、キャリア網を利用する等...共通する知識は無いに等しいと思います。
- プロジェクトマネージメント(仕事の進め方)・・・互換性(大)
作業の工程を理解すればWBSやガントチャートなど、同じ手法で管理することが出来ます。
ただし、資材の納入方法や各工程のリードタイムがアプリケーション開発と異なるため、そこを把握しておかないと案件をしくじります。
また、アプリケーション開発は残業して遅れを取り戻すことが出来ますが、ネットワークの機材購入は納期を縮められない事もあるのでリードタイムの把握は重要です。
- ソフトウェアスキル・・・互換性(極小)
AEの知識はほとんど利用できません。
L3,L2 Switchのコマンドや設定についてはCisco(又はCisco互換)のOSを高頻度で利用します。
Cisco系のOS(iOS)については開発言語やUnix系OSのコマンドとは異なる為、新たに覚える必要があります。
私の場合、使える武器(コマンド)はpingだけになりました。
- ヒューマンスキル・・・互換性(大)
要件の抽出やコミュニケーションの手段(メール、会議体など)、合意形成については共通することが多いと思います。
総評
マネージメントする時のリードタイムの読み方と、技術面のスキルが違うぐらいで、プロジェクトが進む雰囲気にはついていける感じです。
※技術的なスキルアンマッチは業務遂行上、致命的な問題ですが...
その他、気付いたこと
- フィジカルの要素が強い
良く歩きます。
ネットワークを提供する場所にもよりますが、ショッピングセンターや工場など広域にネットワークを導入する場合、配線経路やサーバーラックの置き場所、情報コンセントや無線アクセスポイントの配置場所を歩き回って確認します。
脚立を持って歩き回る事もありますし、テスト(=ネットワークの接続検証)はケーブルを敷設した場所まで行くので、良く移動します。
「怪我をする」というリスクが出てきます。
- 残業して出来ることが少ない
物理設計や論理設計等、自分で行う作業は有りますが、成果物の量がアプリケーション開発より圧倒的に少ないと思います。
残業して成果物を作るという事は少なく、残業が多い(=忙しい)という場合は案件を掛け持ちで進めているケースになると思います。
(追記)ラボテストは結構時間がかかる作業です。
- スキルとして共通することはほとんど無い、でも0からのスタートでは無い
AEもNEもパソコンを利用して作業する事が多く、全く関係性の無い技術ではないため、素人より早く慣れることが出来ます。
某RPGで例えると、僧侶から魔法使いに転職してLvが1になり魔法(スキル)を覚えなおすことになってもHPとMP(基礎能力)は半分は残るので、戦闘(仕事)で即死することは無く、キャッチアップの早いと思います。
- L2 SwitchととHUBの違いを知ることが出来る
どちらもOSI参照モデルの第2層の制御と考えていましたが、L2 Switchの方が多機能で値段も段違いです。
Ciscoが提唱する3階層モデルのアクセススイッチに位置するのがL2 Switchになります。
- 「壊れる」というリスクヘッジをしなくてはいけない
アプリケーションでもハード(サーバー)が壊れるリスクと対処(冗長化等)が必要ですが、NEは故障による通信の切断に対し、より多くの予防策や対処策を持っている必要があると思います。
雨漏りする、通行者に持ち去られる等、今まで想定したことのないリスクを考える必要があります。
- PCのスペックが作業効率に影響しなくなるが、ディスプレイの広さが作業効率に影響する。
PCが高負荷になる作業はあまり無いと思います。図面や構成図を俯瞰して見る場面が増えるため、ディスプレイの大きさが作業効率に影響してくると思います。
結局どれだけ時間があればAEはNEとしてやっていけるか。
- マネージメント(案件遂行)はしっかり修行して1年間
- スキル習得はしっかり修行して1年間
- マネージメントとスキル習得を、同時進行で覚えるのはハード
- アプリケーションが出来ないから、ネットワークに手を出すのは成功しない
以上です