こんにちは、GxPの石村です。
この記事はふりかえり Advent Calendar 2020の10日目です。
先日書いた、「1チーム1プロダクトで開発チームを組み直したことで得られた効果」で触れた、Fun/Done/Learnによるふりかえりを何度かやってみました。
その結果、狙い通りの効果がでたり、イマイチだったりしているのですが、現時点の様子をお届けします。
Fun/Done/Learnとは?
2018年頃のスクラム系のコミュニティを発端に私の周辺ではSNSでよく見かけたふりかえり手法です。
「Fun」「Done」「Learn」の3つの輪を重なるように描き、ふりかえりの対象期間にあったできごとを輪の中に貼っていきます。
私がよく見かけたのはイベントの最後に参加者に書いてもらうという使い方だったので、「最高だったぜ!」と参加者同士でたたえ合って楽しむためのツールという印象でした。
なぜやってみようと思ったか
ふりかえりの場を明るくしてチームに改善のエネルギーが生まれてほしいと思ったのが最大の理由です。
これまでKPTを使ってふりかえりをしてきたのですが、なんとなくふりかえりというと「反省の弁を述べる会」みたいになっていました。
また、Tryを出してもチームで協力してやっつけよう!というよりは、ただタスクが積まれただけのような空気で、Tryの実践度合いも低い状況が続いていました。
反省するのは大事ですが、マイナスをゼロにしようとする考え方はふりかえりや改善活動がしんどくなってしまう原因でもあるかなと思っています。
そこで、もうちょっとチームで連携し合う空気や、個人タスクになってしまったとしても応援や協力がしあえる空気を作れないだろうか?と考えました。
KPTが悪いわけではないのですが、「Problem」という言葉がちょっと強いのと、慣れたツールで考え方だけをスイッチするのは難しいので、新しいツールを使ってみることにしました。
まだ使ったことがなくてポジティブなふりかえり、と考えたときに真っ先に頭に浮かんだのが「Fun/Done/Learn」だったのです。
再掲ですが以下のようなことを期待して取り入れました。
- 「いいね!」と成果を祝福し合う空気が生まれる
- 「Probrem」に書いていたようなことを「Learn」に表現しなおすことで、問題を認識することが良いことになる
- 「Fun」「Learn」を増やしたいという気持ちが生まれる
- 困ってるわけじゃないけど、もっとこうなったらいいのにな、という想いが表現できる
実践にあたっての工夫
「Fun/Done/Learn」は実はすぐ採用したわけではなく、事例調査とアレンジをして使っています。
というのも、イベントの帰り際に「最高だったぜ!」と言って終わるイメージだったので、実際の案件のふりかえりでやるには次につなげる部分が薄く不適切な気がしたのです。
そこで参考にしたのがこのあたりの記事です。
上記を参考に、以下の流れで実践することにしました。
- やったことを思い出す
- Fun/Done/Learn
- こうしていきたい
- やってみること(Action)
やってみた結果
中身はお見せできないのですが、こんな感じでmiroで4回やってみました。
期待に対しての結果
「いいね!」と成果を祝福し合う空気が生まれる
コミュニティイベントのように大盛り上がりはしませんが、「すばらしい」「いいですね」という言葉がちらほらと聞こえてくるようになりました。
他の人が苦手なことを「Fun」に置いた人がいたときは「それFunなんだ!私はその作業できればやりたくないんだよね。すばらしい!」と盛り上がっていました。
「Probrem」に書いていたようなことを「Learn」に表現しなおすことで、問題を認識することが良いことになる
「XXXをまだ触り始めたばかりなので、まだわからないことだらけ」「XXXという不具合が出て調査をした」ということがあると、まだ未熟であることや不具合があるというネガティブな面ばかりに目がいきがちだったように思います。
それが「Learn」や「Done」に書かれるようになりました。
「Fun」「Learn」を増やしたいという気持ちが生まれる
そう思ってくれているかもしれませんが、まだここには到達できていないかと思います。
困ってるわけじゃないけど、もっとこうなったらいいのにな、という想いが表現できる
全く出ていないわけではないのですが、なかなかActionに落としてサイクルを回して、というところに到達できていないかなと思います。
「Fun/Done/Learn」を続ける上での課題
いくつかの課題が絡み合って発生しており、早くもマンネリ化したというよりは、使いこなせていない感じです。
どの課題も「Fun/Done/Learn」特有というよりは、どんなふりかえり手法でも効果的に実施しようと思うとぶつかる壁だと思っています。
Actionがなかなか実践されない
Actionが実践できず、前回のものをそのまま引き続き書くということが何回か続きました。
もともとKPTでもTryをなかなかできていなかったので習慣がないのが大きいかもしれません。
あるいは、Actionが期間に対して負担が大きいものなのかもしれません。
今回のふりかえりで出た内容から改善をしなければという意識になるので、通常の仕事+毛色の違うタスクになりがちなのだなと思いました。
たとえば「こうしていきたい」が「次も無事にリリースを終える」で、「やってみること(Action)」はそれに対して不安を取り除くものでもいいはずです。
まずはサイクルを回して決めたことをやるという習慣をつけることが先決かなと思いますので、
「次の期間をどんなふうに終えたいか」のように、特別何かを追加でやらなくていいような問い方をしてみるのもいいかもなと思っています。
チーム視点になりづらい
「こうしていきたい」を書いた人が「やってみること(Action)」を出して担当することが多いです。
個人目標を掲げて宣言する場として使うのもいいのですが、メインはチーム視点にしていきたいので、
チームで取り組めそうなものを選んでもらったり、チームがどんな風になるといいか問いかけながら実施する必要がありそうです。
時間配分が難しい
だいたい30分ぐらいで実施したいのですが、初回は全ステップを丁寧にやってみたので、時間がとてもかかりました。
たしか1時間ぐらいかかってしまったかなと思います。
2回目以降は説明をはしょったり、「こうしてみたい」「やってみること(Action)」を慌ててやってしまいました。
時間がないとふせんについての問いを投げかけて、返答があって、時間がないから次のふせんへ…というように、私とふせんを書いた人の対話に閉じがちです。
もっとふせんを書いた本人以外へも問いかけをしていきたいのですが、他の人が出したふせんに対して、自分に何ができるか、チームで何ができるかを考えることは時間がかかる行為だと思います。
毎回1時間とるのはちょっと長いので、「Fun/Done/Learn」と別のなにかコンパクトに実施できる手法を交互にやるか、「Fun/Done/Learn」のやり方を工夫するか、、まだまだ試行錯誤が必要そうです。
さいごに
今後の課題面にフォーカスして記事を書きましたが、「Fun/Done/Learn」自体は面白いし使いこなせればいいチームになるためのひとつのアイテムになるんじゃないかなと思っています。
特に「Fun/Done/Learn」を置くちょっとした位置の違いでその人の気持ちを表現できるので、普段なかなか知れないお互いの本音が見えてきて面白いです。
私が面白いなと思った例をいくつかご紹介します。
- 同じ調査系タスクでも「Learn」だけのものと「Fun」と重なっているものがあり、その人の作業の好き嫌いが垣間見えた。仕事のやりとりだけだとどちらも粛々と対応していたのでわからなかった。
- 「実装系のふせんAはFunと重なってるけど設計系のふせんBはFunから遠いのは、設計より実装が好きだからですか?」と聞くと「ふせんBは初めての作業だったから楽しむ余裕がなかった。作業内容自体の好き嫌いではないですよ。」という話が聞けた。
- 今学んでいる最中、取り掛かっている最中のものは輪の中と外の境目に置いて、輪に入っている度合いで「まだやる」という気持ちを表現していた
- 「ちょっと楽しかったかも」というふせんをちょっとだけFunにかぶせて表現していた
みなさんのチームでも是非やってみて、取り組みの様子や工夫を教えてください!